変更事項
……午前9時
夜中見た
風景と違い
高速道路下線脇に
舗装されていない
土がむき出しの
窪みが ある
自家用車が
土を引きずった
渇いた薄茶色
タイヤ跡が
微かに
残されていた
車を寄せ
窪みに停車し
辺りを見回す
抜け道として
使用されそうな
道路だが
とりあえず
車が 通る気配は
なかった
携帯電話の
電源を入れ
メール受信を
押し
サーバーに
保管されている
メールを
取り寄せると
二通のメールが
届く
……宛先
【逃亡者】
携帯を 覗く聡美と
目を見合わせ
唾を 飲み込み
メールを
開いた
《変更事項》
犯人死亡により
〔身代わりチケット〕
無効と なりました
三日間逃亡
中断して頂きます
報酬 1億円の賞金
下記口座にて
振込まれております
○×銀行△□支店
口座番号 普通預金
***-********
暗証番号****
根本 久雄
二通目
《賞品》
〒160-00**
東京都新宿区………
……マンション12**号
契約者 根本 久雄
[履歴書]
1972年10月18日
栃木県矢板市……
父 根本 孝雄
母 根本 久子
1984年
同県市立緑川小学校卒業
1987年
同県市立桜丘中学校卒業
1990年
同県県立彌榮工業高校…
1995年
……
職歴
1998年
…
………以上
※自宅にて
運転免許証
健康保険証
国民年金証
銀行カード 等
各種
書類同封済
※尚
マンション管理室にて
ルームキー保管中
以上
「……何これ」
口火を切った
聡美に
放心状態のまま
首を振り
「…わからん」
そう
答えるしか
なかった
溜息をついて
助手席に
深く
座り直した聡美が
「……根本として
生きろ…って事?」
……冗談だろ
そんな事実が
有り得るはずが
……ない
……いったい
…何が 起きているんだ
メール送信者は
受信メール
確認通知設定を
しているのか
数分後に
三通目の
メールが届く
添付画面表示が
ある
メールを
開くと
根本の顔画像が
添付してあった
………
送信者は
俺が 犯人である
根本の顔を
認識している事を
知らないらしい
………
歳相応に
年月を重ねた
根本の顔は
虚しい程
俺に似ていた
……
敗北感しか
ない
助手席に座る
聡美もまた
押し黙ったまま
俯いている
「……駅まで 送る」
エンジンを
掛けると
聡美が
腕に しがみつき
俯いたまま
首を 振った
「……帰る場所が
……ないの…」
エンジンを切り
溜息を ついた
……
何が 何だか
頭の中が
混乱し
啜り泣く
聡美の泣き声を
ただ
聞いていた
………
…………
無言のまま
携帯電話の
短縮番号を
押す
表示された
《真由美》
文字と電話番号が
点滅する
耳にあて
鳴り続ける
コールを
聞きながら
煙草に火を
つけた
数分コールを
繰り返し
電話が切れる
もう一度
掛け直したが
結果は同じ
………
俺の電話に
出られない理由が
あるのだろうか
………
死者からの
着信
妻でなくとも
出る事は
しないかもしれない
……
………
とりあえず
此処に
留まっていても
仕方がない
エンジンを
掛けると
不安そうな聡美が
顔を 上げた
「飯…食いに行くぞ」
車を発進させ
突き当たりを
左折し
目的地も
決めずに
走り続ける
しばらく
窓の外を
眺めていた聡美が
そのままの姿勢で
呟く
「何も 聞かないのね」
正直
聡美が 誰であれ
どんな事情が
あるかなど
どうでもよかった
市街に
近くなると
道路脇に
何軒が
店が 並び始める
その中に
小さな洋風の
レストランを
見つけ
車を停めた
手書きの
メニュー看板が
街道に向け
立て掛けてあり
戸口に
営業中の札が
下がっていた
「とりあえず
…腹ごしらえだ」
俯く聡美の
頭を軽く叩き
撫で回すと
不服そうな
顔を上げる聡美に
「手伝ってくれ」
それだけを
告げた




