実行犯
酒の力を借りて
ベッドに横たわり
数分で 深い
眠りに ついた
かなり
肉体的にも
疲労感が
あったのだろう
朝まで起きずに
熟睡していると
肩を揺り起こす
聡美の声に
焦りを感じた
「多村さん 起きて!」
目を擦り
欠伸をすると
聡美が テレビを
指差しす
「…多村さんの遺体が
発見されたって」
慌てて画面を
見ると
スクリーンに
俺の顔写真が
移し出されている
『昨夜未明 山梨県の
山中に 容疑者として
行方を捜索していた
多村雅一 35歳が
遺体で 発見されました
発見された車内に
練炭が残されており
一酸化炭素中毒の
可能性があるとして
自殺を図ったものと
思われています
詳しくは司法解剖の…』
全身の毛が
逆立ち
血の気が
引く
「……なんだと?」
背中にしがみつき
震えている聡美が
唾を飲み込み
「……これって
…根本の事…?」
……そうだ
確かに
俺は 此処で
生きている
…根本だ
これは 根本に
違いない
………何故?
どういう事だ
何故 根本が
死ななければ
ならないんだ
……
………待て
……焦るな
…冷静に…なれ
…昨夜
昨夜 根本の遺体は
発見された
……遺体の確認は
どうなっているんだ
いくら
似てる人物とは言え
遺体確認を
身内が すれば
すぐに わかる
……遺体確認?
誰が 遺体確認を?
遺体確認を
するとなれば
……呼び出されるのは
…………妻だ
…妻が
俺と他人の男を
…見間違えるか?
気が
動転してるとしても
見間違えるものなのか?
………おかしい
何かが
おかしい
画面の中で
事件の真相を
解き明かしている
『……殺害された
喫茶店女性経営者
栗原智子 38歳は
先日 2月22日 午後9時頃
被害者の経営する
喫茶店〔智〕の店内で
何者かに 首を絞められ
絞殺されたとして
《容疑者》多村雅一35歳
を 緊急指名手配……』
……殺害日
…2月22日?
ベッドから
飛び降り
テーブルに置いた
手帳を 開く
…22日………
2月22日 真由美自宅
……そうだ
この日は
真由美に頼まれ
会社を休み
一緒に
娘のランドセルを
買いに行った日だ
……犯行時間
午後9時
………駄目だ
この時間帯は
真由美の自宅から
帰宅している道中
……俺に
アリバイが
ない事になる
犯行現場は
……何処だ?
見落としている
チャンネルを
変えていると
不安そうな聡美が
横に座る
「犯行現場 何処だ?」
「殺害された喫茶店?」
「そうだ」
「確か 千葉県船橋市」
「………船橋…」
「心辺りあるの?」
「………いや」
妻の実家は
神奈川県
東京にある
社員寮と
千葉県船橋市辺りを
直線で結べば
神奈川から
同じ距離になる
俺が殺害する
可能性は なくても
俺のアリバイを
消滅させる事は
可能だ
証明してくれる
同乗者が
いないのだから
……
………
どういう事だ
…ただの
偶然なのか?
……
………
逃亡者
身代わり犯人
……
犯人が 自殺で
幕を降ろした事件に
逃亡する
意味が
………果たして
……あるのか?
壁に掛かった
上着のポケットから
携帯電話を
取り出し
聡美の顔を
見る
「……此処を出るぞ」
「…わかった」
洗面所で
髪をとかし
後ろに結わき
テキパキと
行動する
聡美の姿に
唖然とする
メークを
落とした素顔が
大人びて
見え
昨夜とは
イメージが
違い
落ち着いた
雰囲気が
あった
「これから
どうするの?」
不意に言葉を
掛けられ
慌てて
ワイシャツの
ボタンを
留める
「この先に
高速道路の下線が
ある
そこで
携帯電話の
電源を入れてみる」
聡美は
何も言わず
コクンと
頷いた




