密室
清潔感溢れる
洋風のコテージ
狭い廊下の
脇に
立派な洗面所と
広い浴室があり
20畳程の
部屋が
広がる
都心では
ありえない広さに
面食らった
壁に取付られた
スクリーン
カラオケ機材
最新型ゲーム機
部屋の隅には
スロット台まで
設置してある
高級感ある
ホテル並の
内装に
開いた口が
塞がらなかった
応接セットのような
立派な家具
ソファーに
座り
背伸びをした
聡美が
冷蔵庫を
開け
「何か飲む?」
ソファーに
寄り掛かり
顔だけを
聡美に向けると
棚の上に
卓上の電気ポットが
見えた
「熱い珈琲 ある?」
聡美は 冷蔵庫に
小銭を入れ
ビールを引き出し
「モーニング用の
珈琲ならあるよ」
嫌味を込めて
答えた
セカンドバックから
年賀状を 取り出し
テーブルに
並べ
胸ポケットから
手帳を取り出し
年賀状の差出人住所を
書き移し始めた
湯気の上がる
珈琲カップを
テーブルに
置いた聡美が
対面のソファーに
座り
不思議そうに
年賀状を一枚
拾い上げる
「何してるの?」
「ん?」
軽い返事を返し
書き写す作業を
続けた
「根本…久雄さん」
ビールを片手に
足を組んで
年賀状の宛名を
読み上げる
歳は 二十代前半
そんなところだろう
肌艶に張りがある
手帳に
書き込みながら
聡美を見ずに
「親御さんに
連絡しなくて
大丈夫か?」
少し不満げに
唇を尖らせた聡美が
「子供扱いしないで」
不服を述べた
書き出した
住所を頼りに
地図を開き
番地までは
明確に
記載されていない
地図の中に
印しを書き込む
期待に外れ
地図に印された
マークは
あちこちの場所に
散らばった
差出人の住所から
地域を限定して
割り出すのは
無理か……
溜息をついて
珈琲に口を付けると
目の前で
つまらなそうに
「何してるの?」
聡美が 同じ質問を
繰り返した
煙草に火を点け
煙りを吐き出し
「ベッド使っていいよ」
寝かせしまおうと
声を掛けたが
まだ 寝る気は
ないらしく
ふて腐れて横を向き
ビールを飲み干す
「根本さん
兵庫県の人なんだ」
……兵庫県?
年賀状を裏返し
宛名を見ると
根本の宛先住所が
兵庫県に なっていた
どの年賀状を見ても
宛先は兵庫県
俺と同年代としたら
年賀状の枚数が
少ない
社会人なら
会社関係の挨拶状が
もっと 含まれても
いいはずだ
年賀状の文面を
読むと
数枚の年賀状に
『元気ですか?』
と書かれている
一年に一度
連絡を取り合う
友人達の
年賀状だとしたら
捨てられず
保管していても
おかしくは
ない
やはり
栃木県が
根本の故郷で
間違いないと
確信が もてた
……しかし
栃木県と限定は
したものの
結果は 同じ
印の散らばる
地図から
特定するのは
無理が ある
……あきらめるか
「根本さんて何歳?」
突拍子もない
聡美の質問に
力が抜ける
これも
何かの縁だろう
明日の朝
近くの駅にでも
送り届ければ
切れてしまう程
脆い縁だとしても
出会ってしまった事に
代わりは ない
「多村だ」
「…何?」
「俺の名字は多村だよ」
聡美は
腑に落ちない
表情をして
年賀状を
テーブルに置いた
「根本って誰?」
愚問だ
「…俺も知らない」
印の付いた
地図を持ち上げ
「根本を捜してるの?」
「そうなるな」
聡美は 地図をめくり
呆れた顔をして
鼻で笑った
「面倒臭い事してるのね
図書館で電話帳見た方が
早いんじゃない?」
「図書館?」
「図書館にあるのよ
全国の電話帳が
栃木県の電話帳から
〔根本〕割り出した方が
早くない?」
そんな事が
出来るのか?
「根本を探し出して
何するの?多村さん」
興味津々に
覗き込む聡美の顔が
小悪魔的に
笑った




