表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/36

動向


………

……




空っぽの頭で

車の天井を

眺めていた




……何も

する事が

ない




駐車場内

車の変動もなく

人影すら

動く気配が

ない




レジ袋に

食べ掛けた

弁当箱と



潰した

髭剃りの箱



ライターで

焼き切った

毛布のタグを


詰め込んだ




温くなった

ビール缶を

フロントに

置く




酔い潰れた男が

車の中で

寝むり込んでいる




……そう

車内を 偶然

覗いた人の目に

映ればいい




24時間の

カラオケも

備わっている




一次会で騒ぎ過ぎ

酔い潰れた男を

車に残し

カラオケを

楽しむ集団が

店内に 居る




……そう

伝わればいい





毛布を

後部席に

投げ




充電し終えた

髭剃りで

髭を剃った




……他に

する事も

見つからず




気分転換に

髭剃りの音が

聞きたく

なったからだ




エンジンは

掛けて

おくべき

なのだろうが




停車する車の中

吐き出される

排気ガスが

冷気に触れ

揺らぐ煙りが

立ち登っていたら




注意を引くだろう






2月中旬




流石に

エンジンを

切った車内の熱が

外気に冷やされ

身震いする




一旦

車を降りて

コートを羽織り

トランクを開け

レジ袋に詰めた

ゴミを入れた




何時間も

人と触れずに

過ごし




気の緩みが

あった事は

確かだろう





辺りに

気を配る事なく




車の真横に

立ち




いつものように

煙草をくわえ




満天の星空を

見上げながら




煙草の

火を燈すと

同時に




店内のドアが

開き



女性が

飛び出してきた




突然の出来事に

煙草をくわえたまま

立ちつくし




ゆっくりと

ドアノブを

引く




追い掛けてきて

引き止める

男の手を

振り払い




『待てよ 聡美…』



言葉とは

裏腹に

カラオケの部屋に

車のキーでも

置いて来たのだろう



何度も

店内のロビーを

気にしながら

振り返る男に

背を向けた女が




真っ直ぐ

向かって

走ってきた




……しまった

煙草の火だ




いくら

外灯の多い

駐車場とは言え

夜中の

ライティングだ




煙草を吸う時に

発光する

火種の蛍が

浮き上がって

いたのだろう




『彼が 迎えに来てるの』




そう

当然のように

向かって来た

見ず知らずの女が




寄り掛かり

俺の腰に

………手を回し




『……乗せて』



小声で

呟いた





大柄な女が

覗き込むように

見上げる




真近で

顔を 見られた




そして



彼女もまた

一人の男性から

逃れて来た




……どうする




このまま

置き去りに

する訳もいかず




この場所に

留まっていると

断る訳にも

いかない




……どちらにしろ

移動しなければ

ならない事は

確かだ



………仕方ないだろう



ドアを開け

エンジンを回し

助手席側のロックを

解除した





乗り込んで来た

女性が

ドアを閉め



『出して』



慌てて

ロビーから

飛び出して来た

男性を 横目に



『またね』



窓硝子も

開けずに

笑顔で 手を

振っていた




車のボディを

叩いた男が

悔しそうに

自分の車へ向かって

走って行く




女は 後ろも

振り返らずに



『左曲がって』



淡々と

指示を出した





ウィンカーを

表示せずに

左折し



奥へと続く

細い道路を

加速する




ラブホテル街の

ネオンが

【満室】

赤に変わっている

ホテルが

何箇所か 見えた




【空室】

青いネオンを

何軒か 通り過ぎ




当然のように


『そこ曲がって』


指示を出す



言われるまま

厚めのビニールが

垂れ下がる

ホテルのゲートを

くぐり抜けた




コテージ風の

小さな部屋が

並び




ひとつ

ひとつ

離れ家に

なっている




【満室】と

表示されていない

部屋が

空室らしい




車を バックで

駐車し



聡美が 車から

降りて

目隠し用の

ビニールカーテンを

閉め




得意そうに


『灯台もと暗し』


逃げ込んだ

ホテルの

ドアノブを

握り



無邪気に

笑った





車から降りず

席に座って

いると




聡美が

笑うのを

辞め



車に近づき

窓硝子を

叩いた



窓硝子を

下げるてやると



申し訳なさそうに



『…怒ってます?』



深刻な表情を

見せる




溜息を付き

聡美の顔を

見ずに




『ナンバーを

控えられるのは

……困る』




呆気に取られた

聡美が 軽く笑い



『奥様いらっしゃるのね』


少しだけ

安堵の顔を見せた





『大丈夫ですよ』




簡単に

言い放つ言葉に

正直

ムッとした




何を 根拠に

大丈夫だと

断言 出来るんだ




………多分

表情に出て

いただろう




そんな事も

お構いなく

ホテルのドアを

開けた 聡美が




『自動支払機システム』



部屋の入口を

覗き込み

確認をして




『コンドームを

運ぶくらいなら

やってくれるかも』



そして



『控えても すぐ

捨てるわよ

部屋の物品さえ

紛失しなければね』



悪戯に笑った



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ