喪失感
薄暗く
照らされる
コンビニの
駐車場
俯いて
握り絞める拳
……何を
すべきだろうか
他人名義の
カードを取り出し
ATM機に向かう
残高を確認し
もう一度
10万円を
引き下ろした
軍資金として
必要な額すら
見当が
つかなかったからだ
ビール2本と
柿の種
そして
弁当と
煙草
独身時代に
定番だった
品々を
手に持ち
レジに置く
仕事帰り
当然のように
通った
コンビニ
妻と出会うまで
何も疑問を
持たずに
買っていた
品々
何故
こんなにも
屈辱感が
込み上げるのだろう
あの頃
コンビニ袋を
ぶら下げ
自宅に帰り
暗い部屋に
電気を点す
暖房すらない
冷たい空気の中
敷きっぱなしの
布団の上に
上着を着たまま
寝転ぶのが
最高の幸せだった
誰も居ない
部屋で
映り込む
深夜番組を
背中を丸め
弁当のおかずを
ツマミに
ビールを
飲みながら
眺めていた日々
孤独を
感じる事もなく
日常生活の
一部を
過ごしていた
………
《犯人》
根本 久雄が
暮らす部屋と
似た部屋で
………
…………
根本 久雄
俺に 似た
もう ひとりの
被害者
………根本は
…今
何を思い
何を感じて
いるのだろうか
流れる
車の波に
飲み込まれるように
行き先も
不明確のまま
北へ…北へと
アクセルを
踏んだ
………
根本の故郷へ
向かう様に
ただ
北へと
走り続けていた
どれほど
走り続けただろう
セルフの
ガソリンスタンドで
ガソリンを
補給する
いつの間にか
国道に
紛れ込んだらしく
道路沿いに
ファミレスや
ラーメン屋が
並んでいた
……午後9時過ぎ
流れに任せ
無意識に
走っていた為
隠れ場所に
予定していた
ショッピング街も
今となれば
もう
何処にあるのかさえ
わからなくなっていた
給油明細の
レシートに
記載された
支店名
地図の目次欄を
探すが
見つからず
仕方なく
地図を
閉じ
しばらく
国道を走る事に
した
……検問を
するほど
大きな事件では
ないと
願うしかない
《容疑者》
として
逃亡する気力を
すでに
失くしている
ましてや
夜景スポットを
楽しむ
気分でもなく
空白の時間を
ただ
埋め尽くす為の
走行距離
何も考えず
何も求めず
無心で
運転していた
道路脇に
【24時間】
インターネット
ビリヤード
ダーツ カラオケ
看板の下に
2つ目信号左折と
矢印が 見えた
左折をし
整地された
街路樹を
辿る
奥まった場所に
巨大な建物が
見えた
森林を
伐採して
建設したのだろうか
森の中に
突如 現れた
アミューズメント
建物を囲む
駐車場に
沢山の車が
停まり
建物の前で
若者達が
ふざけあい
笑い声を
発していた
………
出来たばかりの
娯楽施設
……かも
知れない
賑わう
駐車場を
横目に
通過
並木の街路樹は
そこで
途切れているが
奥へと道が
続いていたからだ
偵察も兼て
外灯が 減る奥地へ
木々の隙間から
彩る電球が
微かに
見え出し
青いネオン
【空室】の文字が
浮かんでいる
……ラブホテル街
一定の間隔をあけ
【空室】のネオンが
何箇か 見えた
細い道が
そのまま
高速道路を
くぐり抜け
広めの道路に
突き当たる
右折をして
道なりに走り
国道にぶつかると
角に 大きな
【24時間】の
看板がある
ひとつ目信号右折
先程の場所に
戻って来れた
駐車場に
設置された
外灯が
駐車場の奥から
手前まで
照らしている
何処に停めても
暖色系の光が
差し込むだろう
混み合った
駐車場内
なるべく
奥側を選び
車を停め
何時間も
前に 購入した
弁当を取り出し
エンジンを
切った




