報道陣
擦れ違う車内
意外と
運転手の顔は
見えない事を
知った
運転していると
見る余裕がないのは
走り慣れた
車道では
ないからかも
知れない
後部座席に
座っていたら
また 話は
違ってくるだろう
信号待ちで
並ぶ車には
極力 顔を背け
赤い
テールランプを
眺めながら
流れに任せ
目的地方面に
向かう
ぼんやりと
運転していると
逃亡者で
ある事すら
忘れてしまいそうだ
《容疑者》
身に覚えのない
罪を 着せられ
汚名を 被る
汚名に 仕立て上げる
報道陣のレポーターが
意気揚々と
張り切る場面を
他人事として
見ていた自分を
恥じていた
妻の実家は
…大丈夫だろうか
インターフォンを
何度も 鳴らし
マイクを
当てる
報道する任務を
全面に押し出し
知る権利を
主張する
犯罪者の身内として
被害者を 讃え
偽善者の代表を
演じ切るだろう
そして
誤報について
数分の謝罪会見すら
得意げに
報道するのだろう
事件が起こり
喜ぶ報道陣
我先にと
他社を押し退け
情報網を
張り巡らす
違法の情報提供者に
褒美を与え
幼い子供達にも
カメラを向ける
臨場感溢れる
犯人の足取りを
想像力だけで
当然の様に
伝え
被害者の
亡くなった場所を
踏み荒らし
亡くなられた方の
遺族にまで
インタビューを
要求する
やり切れない
職業だとは
考えないのだろうか
正義感の
仮面を被った
因果な商売だ
……そう
感じるのは
やはり
《容疑者》
だから
なのだろうか
………
家族の為と
理由を つけて
目の前に
ぶら下げられた
報酬【1億円】の
金欲に
飛び付いた俺が
一番
悪党なのだろう
こんな
馬鹿げた
ゲームに
参加すべきでは
なかった
『信じてる』
そう
迷いもなく
告げた妻
俺は 選択肢を
間違えた
……家族の為
このゲームに
降りる勇気を
出すべき
だったのだろう
自分の力で
家族を守り通す
それが
妻に告げた
『俺を信じろ』
でなければ
いけなかった
………
この先
後 二日間
逃げ続けるべき
なのだろうか
乗り掛かった
船を 降りるべき
なのだろうか
始めたゲームを
中断して
降伏宣言すべき
なのだろうか
………
俺の手元には
何が 残る
汚名と
家族が 味わった
世間からの非難と
妻の信頼を
失う虚しさ
それしか
残らないだろう
道路沿いの
コンビニに
ハンドルを切り
車を停めた
コンビニから
漏れる光に
照らされても
このまま
無意味に
走り続けるより
マシな気さえする
ビクビクと
怯え
隠れながら
身を潜める事に
腹立たしさが
沸き上がった
『…ふざけんな』
呟いた言葉を
耳で感じ取る
そうだ
俺は
何もしていない
《容疑者》
では ない
何を びくつく事が
あるんだ
こんな
くだらない
ゲーム
ぶち壊してやる




