楽しいものになるでしょう。
シャーロン様と『誓約結婚』が正式決定してから、私の生活は慌ただしいものになりました。
結婚準備などで相談することは、シャーロン様が仕事終わりに伯爵家まで来てくださいます。
「リサ!僕は貴女が横にいない夜会などに出たくないので、すぐにでも結婚しましょう!」
「……え?」
シャーロン様が伯爵家においでになり、サロンで2人きりになった途端のお言葉です。
…えっと、ツッコミどころ満載なんですが……まずは何故、私の名前がもう呼び捨てなんでしょう?
目の前で微笑んでいるシャーロン様に問いかけてみましょう!
「…えっと、シャーロン様?何故、私の名前をもう呼び捨てに?すぐにでも結婚ですか?」
「え?結婚するのですから、僕が貴女を『リサ』と呼ぶのは普通でしょう?もちろん、僕のことは『シャーロン』と呼んでください……出来れば『今すぐ』と言いたいところですが、色々と準備がありますので準備ができ次第、結婚したいです」
…うっそーん。
シャーロン様だけならまだしも、私までも呼び捨てを要求されるとは!
し・か・も!
準備でき次第、結婚したいと、目の前で微笑んでいるシャーロン様は仰っています!
「シャーロン様……シャーロン、では準備を進めましょう」
「はい!リサならそう言ってくれると思ってました!」
目の前のお方は私が『様』をつけた途端、いじけたような表情になりました!
もちろん、私はその表情にすぐに負けて、シャーロンと呼ぶとすぐさま、よりいい笑顔を浮かべました。
…シャーロンのあの表情に勝てる方がいたら教えてください!
その表情が可愛すぎて、結婚してから私の身が持ちません!!
早く『呼び捨てと表情の変化』に慣れなければ!と思いながら、何回かシャーロンとの話を進めました。
そして、普通なら一定の婚約期間を置くものですが、シャーロン(もう慣れました)の希望で1か月というとても速い結婚式になりました。
私とシャーロンの結婚式はユーイリア国で一番大きな教会で行われ、私はシャーロンからプレゼントされた上質なシルクのウエディングドレス(私の希望で出来るだけシンプルなデザイン)を着てお父様に手を引かれシャーロンのもとに向かっています。
「………リサ、ちゃんと幸せになれ」
「…はい、お父様」
一歩一歩シャーロンのもとへ向かっているとき、お父様は涙声で、視線の先に見えたお母様は涙を浮かべ、弟のセイルは笑顔を浮かべていました。
そして、私が嫁ぐ人であるシャーロンは純白の衣装で微笑みながら私を待ってくれています。
……ちなみに、先ほどから女性たちから痛い視線を浴びています。
おそらく、ここにいる殆どの女性から妬まれているのでしょうが気にしません。
…なにせ、これから私はこの女性たちからシャーロンを守らなければいけませんから!
やっとシャーロンのもとへ辿りついた私は、お父様の手から離れてシャーロンに手を引かれ神父様の前に立つといよいよ式の本番です。
神父様の言葉に2人で誓い、お互いの指に指輪をはめて、シャーロンが私の顔を覆っているベールを手に取りながら囁かれ、私も囁きかえしました。
「…リサ。これからずっと貴女だけを愛します」
「…シャーロン。ずっと貴方だけを愛しますわ」
私の言葉にシャーロンは微笑み、誓いの口づけをかわして正式に夫婦になりました。
結婚式のあとは披露宴があり、様々な方からお祝いの言葉をもらったりして対応に追われる式でした。
…婚約期間の1ヶ月の間に私の気持ちは大きく変わり、この方を…シャーロンを好きになっている自分に気付かされ、シャーロンもまた私のことを好きになってくれました。
というのも、この結婚式の2日目にシャーロン本人からカミングアウトされたのです。
――2日前 シルビア伯爵家 サロンにて――
「いよいよ、あと2日で結婚式ですね」
「はい。慌ただしく準備してきましたが、無事に迎えられそうでよかったです」
ちなみに、私の隣にはシャーロンがしっかりと座っていて、手も握られています。
会う回数を増やす度に、シャーロンのスキンシップは大胆になります。
最初は内心ドキドキしていましたが、約1ヶ月で(なんとか)慣れてきました。
「……リサ」
「…はい?」
「…急にこんなことを言われてもびっくりすると思いますが……」
「なんでしょう?」
…先ほどからシャーロンの様子がおかしく、難しい表情を浮かべながらこう仰いました。
「最初は『興味がわいた』だけでしたが、今はリサのことが好きになりました!」
「え?!」
…いや、ちょっと待って?!
まさかのまさかのシャーロンからの『好き』発言!!
どうしましょう?!
嬉しすぎて顔が熱くなってきましたよ!!
「急に言われてびっくりしましたよね?でも、結婚式前に伝えたかったんです!……リサ?」
…実を言うと、この婚約期間でシャーロンと過ごしているとだんだん惹かれ、つい先日、彼のことが好きだと自覚したばっかりだったんです!
でも、シャーロンに伝えていいのか分からずにいたときの『告白』ですから嬉しくないわけがありません!
ただ目の前で赤面している私にシャーロンは不思議がり、私は精一杯の笑みを浮かべてこう言いました。
「…実を言うと、私もシャーロンのことが好きになっていました。ですから、シャーロンの言葉に嬉しくて……」
「リサ!!」
―― 回想 終了 ――
ということがありまして(あのあとのシャーロンの行動は皆様のご想像にお任せいたします)結婚式と披露宴を迎えたわけです。
最初は『政略結婚』、次は『誓約結婚』、最後は『恋愛結婚』として私とシャーロンは落ち着きました。
盛大な結婚式と披露宴を無事に終えた私とシャーロンは、これからの住まいになるフォルテ公爵家に向かう馬車に乗りました。
…きっと、この先の生活は楽しいものになるでしょう。
これからは新婚生活の始まりです(笑)
読んでくださって有難うございます!