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入れ替わるように三人の男達がはいってくる。
ニタニタと下卑た笑いを浮かべる男達を見て、心に警鐘が鳴る。
口を開いて相手を刺激してはいけないと思い、様子を窺う。
その間も、縄が解けないかと必死に格闘していた。
ロープがこすれて皮膚が痛い。
寝転がる私を舐め回すような、男達の不躾な視線を感じる。
来ないで!
「これは、また、随分な上玉じゃないか」
「あぁ、楽しめそうだな」
「商品として売るなら、手は出さない方がいいか。いや……、一人くらいは、楽しませてもらうか、なぁ?」
「あぁ、ただ働きは、わりにあわねえ」
「ちょっと! アンはどこ?
この女は、好きにし ていいけど、さっさと代金を払いなさい! 私は急いでるのよ!」
アンジェエリカは、男達に詰め寄る。
「まぁ、まぁ、何もそんなに急ぐことはないだろ、お嬢さんよー」
「あぁ、まだ夜は長い」
「俺たちの相手をしてからでも遅くはないだろう、なぁ?」
二人の男が、アンジェリカにジリジリと近づいていく。
「下品な手で触らないで!私を誰だと思ってるの!売れそうな女を連れて来たら、代金を払うって、約束したじゃない!」
売る……? 私をこんな人達に売ろうとしたの……? あんまりだわ……。
「はぁ、そんな約束知らねえな。お前知ってるか?」
「いいや、知らないな。それよりよ、お嬢さんよ、こいつをこの部屋まで連れてきたのは俺たちなんだぜ? その労力の代金を支払ってもらわねぇと困るよ、なぁそうだろ」
「はぁ!平民の分際で!」
「なるほど、落ちぶれた貴族か、ぐはは、貴族落ちは、遊んだ後でも高く売れる。押さえろ!」
「ちょ!ぎゃー離しなさい!アン!助けなさい!アン!」
アンジェリカは、必死にアンの名前を口にする。
けれど、アンの姿は現れなかった。
男達は、アンジェリカを二人がかりで取り囲み床へと押し倒す。
「いゃあー、離しなさい! やめなさいと言っているのよ!」
「喚くな!うるせぇ!」
バン!と鈍い音が室内に響く。
男が、アンジェリカの頬を叩いたのだ。
暴れ狂っていたアンジェリカの動きが、ぴたりと止まる。
今まで暴力をふるうことはあっても、ふるわれたことはないから、ショックにより放心状態となっていた。
アンジェリカ!だめ!
抵抗して!
助けたくても、動けない私は、どうすることもできないでいた。
「腕を押さえてろよ」
「あぁ、終わったら俺にもやらせてくれよ」
大人しくなったアンジェリカの上に、男が覆い被さるのが見える。
アンジェリカ!
「おっと、お嬢さんの相手は俺だよ。余所見してもらったら、困るなぁ」
残りの一人の男が、目の前に迫ってきていた。
「やめてください!こんなことして、何とも思わないのですか!」
「ははは!いいね~、その表情。俺が、楽しいことを教えてやるよ。ゆっくりとな」
「いや!」
横向きに転がっていた身体を、仰向けにされる。
後ろ手で縛られているので、体勢もきつい。
ビリビリと布の破ける音が耳にはいってくる。
男達がアンジェリカの衣服を脱がすのがもどかしくなり、破っているようだ。
助けて……。
「あぁ、ほんとにかわいいなぁ」
来ないで……いや!いや!
縄がほどけないかと、腕がちぎれそうになるくらい必死に手を引き抜こうとする。
男は、楽しむように、ゆっくりと近づいてくる。
「あぁ、ほんとにかわいいなぁ」
いや!やめて!こないで!グレッグ様たすけて!
あまりの恐怖から、声も出せず、心の中で叫ぶ。
男が、身体の上にまたがってくる。
現実を受け入れることができず、固く目を閉ざし、顔を逸らす。
心臓が飛び出しそうなくらいに、早鐘を打っていた。
やめて!
無駄な抵抗とは分かっていても、体を必死に動かす。
その動きが、かえって男を興奮させる。
スカートの裾をたくし上げようと、男の手が伸びてきた時、ふっと跨る男の重みが消えた。
「ぐわぁ!」
「なんだ!」
男達の呻き声が聞こえたかと思うと、ドスンと人の倒れるような音がした。
「ソフィア!」
固く閉ざした瞼を持ちあげると、そこには信じられないことに、グレッグ様がいた。
殴り飛ばしたのか、蹴り飛ばしたのか、壁際には、積み重なるように男達が放置されている。
「……グレッグ様…?どうして、ここに……?」
グレッグはソフィアのロープを解き、ゆっくりと上体を起こして、抱きすくめた。
「あぁ、ソフィア!遅くなってすまない!危ない目にあわせてすまない、ソフィア……」
「グレッグ様、こわ…かった…」
「もう、大丈夫だ、ソフィア」
強く抱きしめられて、安心したのと同時に涙が溢れてくる。
グレッグ様にしがみついて、声を押し殺すように泣いていた。
しばらくすると、複数の足音が聞こえた。
「ちょっと、グレッグ先輩! 早すぎっす。置いていかないでくださいよ」
「あぁ、キースか、後は頼む。さっさとそのゴミ共を処理してくれ。」
グレッグ様は、顎で指し示す。
「ゴミって、今の発言、誰かに聞かれたらまずいですからね? 問題発言ですからね?世間の目は厳しいんですからね」
「死体になっていないだけ、ましだろ」
「ちょっ、こわっ、先輩まじ笑えないっす。了解です。こいつらは俺たちで連行しときます。
そちらの被害者のお嬢さんも、丁重に連れていきます」
「あぁ、頼む。その女性は、手配中のアンジェリカ嬢だ。こちらの女性のことは……視界に入れるな!
ちょっとでも何か言ったら、命はないと思え!」
「は?ちょっ、先輩、意味分からないですよ。というか、抱き合って──」
「おい、やめとけキース!さっさと行くぞ」
ざわざわと複数人の声がしたのは数分のことだった。
その間ずっとグレッグ様の胸に顔を埋めていたので、何があったのかは分からなかった。
グレッグ様の会話のやり取りから、騎士のかた達が助けに来てくれたのだと思った。
いつのまにか、グレッグ様と二人きりになっていた。




