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復讐の熱冷めました。  作者: いきり立った拳銃
第一章 はじまりの村とはじまりの街
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12話 横取り

ユージは何度も何度も、ブルーワイヤーベアの毛を根元から切り裂いていく。そうして毛を回収してはゴロツキに預けてを繰り返していた。


時々、爆破やられの炎が木々に引火しそうになるところをツクヨミが水の魔法で鎮火していく。


既に勝者は決まっていた。身ぐるみを剥がされていくブルーワイヤーベア、対する一行は全員かすり傷負うことなく、完璧な陣形をとっている。─するとそこへ


『キキィ、』


「!」


コウモリの魔物が鳴き声をあげ、薄暗い森の中から奇襲をしかけてきた。しかしユージにとってはハエにたかられるようなもの、剣を素早く振る。

コウモリの魔物は霧散し翼をドロップした。同じようにコウモリの魔物がミハイルの眼前に迫る。


「うわぁ!」


ミハイルは驚き悲鳴を上げるが、剣で対応。コウモリの魔物は霧散し、目をドロップした。


「うげぇ、目とか落ちることもあるのかよ」


コウモリの魔物が落とした戦利品を見て、舌を出し明らかな拒絶反応と嫌悪感を示した。


(本来こんなとこにいるはずないんだがな、一体なぜ……)


コウモリの魔物がいることに対して疑念を持つユージ。曰く、本来であればここはじまりの村付近には生息していないということ


これが表されることは、本来生息している地域にて何らかの異常が発生。それによりここまで逃げてきた可能性が1つ


───もう1つは人為的によるもの、コウモリの魔物を捕まえ、こちらに向け放ったということ


それをしてくる犯人で思い当たるパーティーがいた。例の4人組。ここまで何もして来なかった4人がとうとう動き出したのだ。


「ッ!、」


ユージは暗がりの森から光る何かを捉えた、それはツクヨミに向けられている。当の本人は炎が引火せぬように集中していた。齢18、くぐってきた修羅場などそうそうない。寧ろ今回が初めての可能性もある。


そんな中与えられた任務は引火させないこと、そもそも今回の件は彼女の爆発魔法がブルーワイヤーベアを焦がしたことが始まりだ。


ミハイルを助ける為とは言えここまで大事になっている故に責任はこの中で1番感じている。それでもユージは鎮火の仕事をツクヨミに任せたというのだ。人一倍真剣に取り組み、やり遂げなければならない。


そのせいか、極限まで引き上げられた集中は一瞬の殺気に気がつけない。─直後、ユージはありえない程の瞬発力で加速しツクヨミの方へ飛ぶ、


「ツクヨミ!」


「キャッ、」


そのままツクヨミを押し倒す形で飛びつく。─刹那、影から放たれたのはナイフ、異様な程に速度を上げ、木々を貫いた。とてつもない破壊力にユージは目を見開く。

検討をつけていた4人組の実力と出した破壊力にあまりにも相違があり、思考がブレる。


「クソ、!」


ユージは上半身をすぐに叩き起し、ミハイルの方向に剣を投げた。

ミハイルは何が起きているか分からず、把握できた情報はユージがこちらに剣を投げてきたということ、これは確実に受け取れというサインでは無い。

寧ろミハイルを刺す気のようで投げられた剣は速度を上げる。


「うわぁ!」


ミハイルは頭を抱え、しゃがみ込んだ、─直後、再び闇から投げられた。

ナイフがユージが投げた剣に衝突する。

明らかにミハイルが狙われていたがユージの投擲により防がれた。いくら木々を貫くナイフといえどミスリル相手では傷を付けることすら出来ない。


だが、無理やり防いだ、次のミハイルが狙われれば確実に終わる。だがユージは繋ぐように自前の結界を投げた。


ミハイルと初めて出会った夜の間、常に展開していた人の出入りすら許さない、小さな結界。それを展開させミハイルを守ろうという魂胆だ。


ユージは急いで身体を起こし、体勢を整えようとする。──その時、ユージの瞳に写ったは結界が展開前に宙で撃ち抜かれる光景だ。闇から飛ぶナイフが結界の軌道をズラし、ミハイルに到達しなかった。


「ミハイルさん!」


ユージが必死に叫ぶ、が遅かった。既に彼女の背後には草の衣を纏う小さな男の姿があった。そう4人組の1人チャンガス。


ダブルナイフをミハイルに突きつける。


「動くなよ、金の冒険者」


チャンガスは動けばミハイルの命はないとユージを脅す。ユージはこの間に動く気配を感じれなかったゴロツキに視線を送る。が、既に彼も手遅れであった。


小柄なチャンガスとは対極で大男である。彼も同様草の衣を纏い、ゴロツキの方へ詰め掛けていた。


「隠遁の衣、テメェら!なんでそれを持っていやがる、それは隠居した騎士が───」


「すまない、」


ゴロツキが彼らが所持する草の衣について怒り狂うように吠える、大男は一言謝罪する、それが何を意味するかは未だ不透明だが、真っ当な手段で手に入れてないことは確かである。


「ユージ、アタシのことはいいから、さっさとこいつらを」


「───残念ながらそうはいかない、ミハイルさんを蔑ろには出来ない。それに、」


頼る相手がユージしかいない、ミハイルは弱々しくそう告げるが拒絶の意思が返される。それもそうだ。ユージは既に魔法の杖が向けられていた。

そう赤髪の魔法使いエルザが同じように衣を纏い、ユージの背後をとっていた。


(クソ、最悪ゴロツキが探知してくれるから後手に回ってもこうなる事は無いって思ってたのに、恐らくこの衣に仕掛けがあるな、気配遮断してんのか、)


ユージは隠遁の衣と呼ばれるそれについて、思考を巡らせ至った結論が気配の遮断効果を持つものであるということだ。

確実にこうはならないと高を括っていたのだ。その結果がこのザマじゃ笑えない。


すると毛を剥ぎ取られ続け、弱ったブルーワイヤーベアが咆哮する。最早決死と言わんばかりの咆哮。だがそれをかき消すように、再び闇夜からナイフが投げられた。


──それはブルーワイヤーベアの脳を正確に捉え、貫通させる。糸が切れたようにブルーワイヤーは崩れ落ち、その一生を終えた。


そうしてとうとう4人組ひリーダー格である、ガイルが姿を現した。


「はっ、金の冒険者と言っても大したことないな、」


この場を制圧し、嘲るようにユージを見下ろした。見事策がハマり、金の冒険者相手に先手を打ち戦局を掌握したのだ。彼は今気分が最高潮であろう。


「何が目的だ、手柄か?」


単刀直入にユージはガイルに対してそう告げた。正直ミハイルを人質に取られている今は気が気じゃない、急かすように本題へと入る。


「そう焦るなよ、もちろん手柄も欲しいが、」


するとガイルはユージに一発蹴りを入れた。顔面に直撃し、ユージの口から血が垂れる。


「ユージ!」


「ヒャハハ、いいぞガイル 」


その光景を見てミハイルはユージの身を案じ、チャンガスは歓喜する。


「ガイル、あんまり刺激しないでよ、」


「わーってるよ、」


ガイルはいやらしい目付きでユージを見下す。既に盤面は制され、ユージは為す術がない。否、ユージ自身、ここからいくらでも挽回のしようがある。勿論ミハイル度外視だが


結局は何をされようが現状反撃の手立てはない。怒りを隠し、ながらガイルの発する言葉を待つ。


「簡単だ、この魔物から奪い去った、毛、全部寄越せ」


「!!、」


ブルーワイヤーベアからとった毛、それはユージが売り捌こうと今日に切断していき保管していた戦利品だ。これを奪われるのは大分痛手だ。


「それと、手柄は全部貰うぜ、俺が殺したんだから当然だよな」


ガイルは髪をかき揚げながら舌を出しそう伝えた。要求はつまり、本来ユージ一行が手にする手柄の全てだ。


「ああ、それでいい、」


「はっはぁ、話が早くて助かるぜ、そら寄越せよ」


「あの男が持ってる、」


ユージはゴロツキの方へ指さす、「いいのかよ兄弟」と怒りを抑えきれないゴロツキがそう叫ぶが無言の圧力に負け、大人しく大男に渡した。


「しかしマジックアイテムとやらは便利だな」


そうガイルがほざくと彼は懐からナイフを取り出した。それは貫通に特化した投擲のナイフ、これにより戦局を一気に持っていかれてしまった。


「───ウィンドウ!」


すると今まで地面に伏せていたツクヨミが叫ぶように英称する。その場にいたユージ、ツクヨミ、ガイル、エルザが風魔法の餌食となり宙を舞った


ユージはその勢いを利用し一気にチャンガスの方へと飛ぶ、


「うわぁぁ、」


小心者のチャンガスはミハイルを捨て、ガイルの方向へと走り去る。


「!!」


突然の動き出す戦況に大男は視線をゴロツキから離す。───ゴロツキとて決して弱くは無い。この隙を見逃すはずもない


「おらぁ!」


彼は斧を勢いよく抜き、渾身の一撃を大男に喰らわせた。が、轟音を立て防がれる。彼を包み込む金の鎧によって


「っち、」


力いっぱい斧を振るったが大男は地面を擦りながら数メートル吹き飛ぶだけであった。そしてツクヨミが放った風の魔法から逃れ、ガイルとエルザが地面へ着地


チャンガスは人質を離し、大男は吹き飛ばされ、皆1点に集まる。─この状況はまずい。立て直されればガイル達に正気は無い。


「エルザ!」


「分かってるよ!──ルーラ!」


エルザが杖を両手で握りしめ、地面へ突く。魔法陣が展開され4人組とブルーワイヤーベアの死骸は1つの光となり遥空へと飛んで行ってしまった。結局何もかも奪われた。


「悪い、、アタシが弱いから」


ミハイルは起き上がり悔しそうにそう告げた。拳を深く握り締め、俯く


「ミハイルさんは悪くないよ、寧ろ俺だ、もっとしっかりと警戒しておくべきだった。」


慢心していたのかユージは少し自問自答を繰り返す。そしてとある結論に至ったのだ。


「ひとまずあの魔法は予め気軸している拠点へ飛ばす魔法です。街中は例外を除けば魔法使用不可なので恐らくはじまりの街から少し離れた場所に現在彼らはいると思います。」


魔法使いであるツクヨミは冷静に魔法を解析し、予想をユージに伝えた。


緊急司令を受けたのはユージだ。あのまま死骸を運び、集会所に見せることで自身が代わりにやったと証明するのだろう。


「しかし、兄弟、あの毛はいいのかよ」


「ああ、あれは嘘だ。いや、正確には嘘じゃないんだが、王都にいるとある毛皮コレクターにしか高く売れない。」


「なんだそうなのか、じゃあ後ははじまりの街へ先回りしてアイツらを迎え撃つだけだな」


ゴロツキがそう言うとユージは「いや、」と深く拳を握りしめると再びオーラを纏う。その勢いは凄まじくユージの髪は逆立つほど、─ゴロツキは戦慄した。


左目を切るようにそわれた傷跡がよりユージの怒りを怖さを引き立たせている。そして彼は狂気的な笑みを浮かべながら呟いた。


「コケにしやがって、そんな程度で許すわけが無い。確かに俺のミスでもあるがこの分はしっかりやり返しす。」


拳を深く握りしめ、彼は怒りを吐き出した。

その場にいた3人は冷や汗をかきながら怖気付く、


こうしてあの4人に対する復讐が始まる。


読んで頂きありがとうございます。

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