セシルside
"まあ婚約してるのだから想いは伝えなくていいわよね?"
タイミングを逃してしまいレントに想いを告げられなかったあの日の後、私はそう結論づけて逃げた。怖かったから。冷静になればなるほど。
「あの女のことどう思ってるの?」
神様はそんなずるくて浅ましい私に怒ったのかもしれない。
「……」
逃げるな。正々堂々と想いを伝えろ。と言わんばかりに運命は唐突に動き出した。
………
……
…
時は遡り30分前、
「はい!もっとテンポ良く!」
1日の授業全てが終わり家路へとつく生徒たちが半数を超える中、学院中央にあるダンスホールでは
「いちに!いちにっさん!」
オーケストラの演奏をバックに述べ二百人の生徒がピエール先生指導のもと、きたるパーティーに備え練習していた。
「ピエール先生。質問があります」
「ノンノン。ピエールじゃないわ。ピ・エール……大事なところだから五回言うわよ。ピ・エール!ピ・エール!!ピ・エール!!!ピ・エール!!!!ピ・エール!!!!!よ」
「……はい」
とクセのある先生で練習も厳しく苛烈を極めた。しかしその甲斐もあって平民から貴族になったばかりの家の子たちははじめ辿々しかった動きも徐々になめらかになり、今では滑らかに踊れるようになった。
「ええ!」
だから私もリズムに乗って
「ひぃぃ!」
優雅に
「なんでそうなるのよぉぉ!!」
周りの人たちが見惚れるほどに完璧な前方宙返りを
「はい!」
決めてしまった。
「「「お、おおおお!!」」」
沸き起こる歓声と拍手の雨の中、
「だから」
音感のない私はダンスが苦手だ。そんな私の
「踊りって嫌いなのよぉぉ!!」
叫びが少しだけこだました。




