セシルside
あれからどれくらい経ったのか、空が紅く染まっていた。
「帰るよ」
「はーい」
公園で友人と話し込む主婦たちが子供を連れて家路へとつき
「ウィィ……イエス!ワンカ〇〇!」
「はぁぁ……やめられないの?そう止まらないの、ならしょうがない!ワンカ〇〇ぅぅ!」
お酒を片手に奇声を上げるおじさんたちと
「はぁぁ……」
ため息をついてボーッと。
(お店を出たのがお昼過ぎだったから……3時間くらい?)
ベンチに腰掛けてただボーッと夕陽を眺める私だけだった。春になったとはいえまだまだ夕方はどこか冬の寒さが残っていて日が沈むたびに昼間の暖かさが嘘のように消えていった。
「はぁ……何してるんだろ私」
良い子は風邪をひかないように早く帰らなきゃいけないというのに私の身体はちっとも動こうとしなかった。なぜなら今の私は
(ああもう!なんで切り替えられないかな!)
意識をコントロールしようとするのだけど大嵐の中を進む船の舵が人の力では操作できないように
(レント。楽しそうに話してたな)
逆に意識に囚われてしまっていた。
(私の時と違って……)
昨日のことだって……わ、私レントにき、キスしちゃってたし。
「はぁぁ……」
ため息しか出ない。レントに対するこの想いって
"任せろ"
その顔が、声がよぎるたびに
"ハモったな"
嬉しくて、恥ずかしくて、苦しい。この思いって……クリスの時はこんなことなかった。
"キャサリン"
他の人じゃなくて私にだけあの笑顔を見せてほしい。そんな想いまで出てきてしまって
「これじゃまるで私、レントのこと……」
途中で止めた。なぜか言葉が出てこなくて頬がすごく熱い。
(そ、そんなわけないよ!だって相手はあの)
そして顔を思い浮かべると高熱で頭がボーッとするみたいに
"セシル"
私の名前を呼ぶレントの妄想に夢中になった。
「な、何かの間違い」
それでもやっぱり素直になれなくて認められなかった。
「いた!」
しかし夕日が完全に沈むと同時に
「セシル!」
汗だくで息もたえだえのレントが私の方へ走ってきた。
「れ、レント!」
なんでレントがここのいるのかわからず私は困惑した。しかしレントは私の前にやってくると
「見つかった!」
笑顔を浮かべて私を抱きしめた。
「えっ……ええええ!!」
優しく。
「よかったぁ!」
私の耳元で囁いた。瞬間、
(ちょ、い、今はタイミング的によくないってェェェ!)
突然の出来事の連続に戸惑い状況整理をしようとしたが思考が追いつかずショートしてしまい叫ぶのと同時に考えるのを止めた。そんな私は
(……まあ、レントだし仕方ないか)
流れに身を任せることにした。それになんだろう。
(ああ)
レントの腕の中にいるとだんだんモヤモヤしていたことが馬鹿馬鹿しくなって、
(安心する)
少し前まで感じていたイライラがサッと消えてしまった。そうしてただただレントの腕の中を満喫し、
(好きだなぁ)
ここは誰にも譲りたくない。私の場所にしたいとレントには勝手ながら思ってしまった。




