レントside
別れ際の
"うん"
寂しそうなセシルの笑顔が忘れられなかった。
"また"
それに俺は自分がやられて一番辛かったことを自分だけは他人にやるまいと心に誓ったのにやってしまった。
"なんで?なんでみんな無視するの?"
話しかけているのに完全に「いない」ものとして扱われる苦しみーーそれを俺は嫌ってほど知ってるはずなのに。
「もしよろしければ一緒にお茶でも行きませんか?」
俺にそう話しかけるキャサリンには
「おいおい。お茶って時間でもねえだろ。良い子は早く……」
普通に話せているくせにセシルには。
「まだ夕方になる前ですから少しくらいなら」
咄嗟だった。キャサリンが俺に何か話していたけど
「すまん!用事ができた!」
それを遮るようにして謝ると
「え、ちょっと!」
振り返って走り出した。
(最低だ俺は)
夕方が近づき依頼を終えた冒険者や行商人なんかでごった返す大通りを縫うようにして走った。
「すみません!通ります!」
歩行者天国と化すこの時間帯、慌てて探したってセシルを見つけるなんて無理に近かった。
(まだ近くにいるはず)
でも、それでも別れ際のセシルの寂しそうな笑顔が浮かぶたびに
(居てくれ!)
探さずにはいられなかった。どんな顔をして会えばいいのかもわからなかったけどそれでも
"探せ"
という本能に従って走った。このままにしたら後悔する気がした。




