セシルside
「……」
ケーキが、私のショートケーキが……灯火が失われた。
「おわた」
絶望感が私の身を包んだ。そして言葉となって外へもれた。身体から力が抜け、その場にへたり込んだ。
(私は一体どうやって希望を見出したらいいの……)
いちごのショートケーキという光を失った私はただ茫然とほんの数十秒前までそこーーショーウィンドウの中に存在していたところを眺めた。
(誰か教えて)
手を伸ばしていれば……クイズ対決なんてくだらないものに興じようとしなければーーその後悔の念が胸中を覆い、私はギュッとワンピースの胸元を握った。
(誰か)
助けてを求めた。が、絶望という闇に飲み込まれる私に光がさすことは……、
「っ」
あった。急に眩い光が差し込んだ。私は思わず光のした方へ視線を向けた。
(……モンブラン)
その先にあったのはモンブランケーキだった。栗色に輝いていた。その光は神々しくて手を伸ばさずにはいられなかった。
「すみません私ったら。もしよろしかったら他にどのケーキにしますか?」
とモンブランに手を伸ばした私に店員さんが申し訳なさそうに謝ったので、
「モンブラン!」
「モンブラン!」
私は神々しく輝くモンブランを所望した。が、
(ん?気のせいか横から声がしたような……)
私の他にモンブランという単語が聞こえたような気がしたので横を向いた。頼む幻聴であってくれ!と願いながら。が、そこには
(お……)
私と同じように救いを求めるようにモンブランへと手を伸ばす
「お前もかぁぁ!」
レントがいた。そして思わず令嬢らしからぬ言葉遣いで叫んでしまった。
「私の真似ばっかすんじゃねぇぇ!」
「それはこっちのセリフじゃあ!」
再び睨み合う私とレントは、
「って!近い!」
「うおおい!ちかっ!」
ぐぬぬぬ、とムキになるほどに互いの距離が縮まって鼻先が触れそうになったところで我に帰り慌てて顔を逸らした。
(あ、危なかった)
はやる鼓動に体温が上がり頬が熱くなった。顔を逸らすときに鼻先が少し触れた感覚が残っていて、それがさらに鼓動を早めた。
(お、落ち着くのよ私)
一旦、深呼吸して……すぅぅ、はぁぁ。と数回繰り返し、わずかながら冷静さを取り戻せた。そして冷静になってきた頭で
(って冷静に考えたら)
今までのことを状況整理を兼ねて振り返ったら
(同じように動揺して天井を向いたり、図ったわけでもないのに同じタイミングで同じケーキを注文したり、そのあともまた同じケーキを注文して争って……)
なんだか可笑しくなってきて
「ふふ」
「はは」
これも図ったわけではなかったのに
「ふふふ」
「ははは」
また同じタイミングで今度は笑って
「はー……ねぇ。提案があるんだけど」
「お、奇遇だな。俺もだ」
同じタイミングで
「ケーキ半分こにしない?」
「ケーキ半分こにしようぜ」
そう口にしていた。
「ハモったわね」
「ハモったな」
………
……
…
「これ甘いわね」
その後、カフェスペースにて私とレントはモンブランを半分こにして食べた。
「そうか?俺は好きだけどな」
味の好みまでは被らなかったけど、それでもなんか心地よかった。お店の中の雰囲気もあったのだろうけどレントの知らない一面を目にして新鮮だった。
「そこは被らないのね」




