レントside
「くおおお!」
俺は今日も今日とて己を鍛えるために
「ねえねえ。見てお母さん」
最強へ至るために修行をしていた。それはもう道行く人達が震え上がるほどの厳しい、それはもうタンスの端に足の小指をぶつけ続けるほどに
「あのお兄ちゃん服着たまま噴水の中で水にうたれてるよ」
イタくて。周りの視線が気になって気になって仕方がない
「見ちゃダメよ。あれは変質者っていうのよ」
いちいち辛辣な反応に心が病みそうになる過酷な修行をしていた。
「いい。ああなっては終わりよ。だから絶対にならないでね!」
「うん!絶対にああならないように頑張るね!」
ぐふっ!という教育熱心な母親と純真な子供の会話と
「ねえねえ。お兄さんって変質者なの?」
純真無垢に尋ねてくる子供と
「うわっキモ」
がっはぁぁ!同年代カースト上位に位置する女子の辛辣な視線とセリフ以外は特にさして気にすることはない!
(これも心を強くするため!だけど、今日はなんか限界だわ!)
が、そんな俺でも涙を流してしまう時もあるのさ。周囲の俺を警戒する視線を肌で感じながら下を向いて
「ダッシュ!」
そのまま頑張った俺自身へご褒美を与えるために行きつけのスイーツ店「ラ・ブエルテ」へと向かった。が、
「あ、すみません。お先に」
そもそもなぜ俺が公園の噴水で滝行を行っていたのかその元凶が
「レ、レント!」
目の前にいた。セシルが。俺の打ち勝つべき障害で、婚約者で。
(き、昨日、あの手をに、握って)
今は名前を聞くと昨日の手を握っていた感触を思い出してしまって
(……うぉぉぉ!なんかよくわからんけど、うぉぉぉ!)
なんかこそばゆくて、恥ずかしくて、叫ばずにはいられなかった。
「おう?何黙ってんだ?どのケーキにすんだコラァ!」
と客が来たことが嬉しくてテンションが上がりすぎて。だけど、それを素直に表現するのだけは恥ずかしいから口調を荒げて誤魔化す店長。だけど言動とは裏腹にもじもじしてらっしゃるぅぅぅ。
「おおう!無視すんじゃねえ!ど、どんなケーキにするのだわ!」
あ、乙女の部分が出た。




