セシルside
そこには知る人ぞ知る王都の名店がある。時刻は十五時ーーおやつの時間。
「くっ!」
雲ひとつなく晴れ渡る空に桜の一輪が舞い上がる。
「ふん!」
街では春休みを友人達と満喫する学生の笑顔とそんな学生を相手に儲けてホクホク笑みの大人達の笑顔が咲き誇っていた。
「いい?3本先手で勝った方がこのーースイーツを親父に作らされて35年!才能もあって仕方なく店を継いだ天才店長の俺!スペシャルいちごのショートケーキよ!をあげるわぁ」
イートインスペースで店長が目を光らせた。
「絶対負けないわ」
そしてそれは
「店長は俺のものだぁ!」
「やだぁ♡でも、ごめんなさいね。私には愛しのケイトがいるから♡」
私とレントによるケーキをかけた仁義なき
「それでは第一問!」
クイズ対決の始まりだった。
………
……
…
時は遡ること十分前。
「はぁ……」
私は大通りを外れ路地裏を歩いていた。
"負けないわ"
いつもならウキウキで駆け抜けていく路地裏も今の私には
「うぁぁ!!」
走り抜ける余力なんてなくて
「わ、私……」
寝ても覚めても頭の中で浮かび続ける昨日の光景ーー私の手を握って眠るレントを見ていたらなんかキスしてた。
「ううう」
あの時のことが頭から離れない。春休みの課題に取り組まなくちゃいけないのに全然集中できなくて、気分転換も兼ねて行きつけのお店へ行くことにした。
「やっぱり……してるわよね」
大好きなお店の前に着いたにも関わらず、それでも昨日のことが頭から消えることはなかった。
「らっしゃぁぁせぇぇぇい!らっしゃっせぇぇい!いらっしゃいませ」
私の行きつけである王都の隠れたスイーツの名店「ラ・ブエルテ」そして名物店長「王都の顔面刃物」と恐れられ大通りで店を出したはいいけどあまりの怖さに女性ではなくて店長の怖さに惚れ込んだ裏社会の方々が足繁く通うようになった。が、
"闇ギルドとか冒険者とか商人とか……顔に傷があって怖いぃ!"
店長は乙女であった。可愛いものをその筋骨隆々の丸太ような腕で抱きしめ愛でることが何よりも大好きである。
よって数少ない女性客と一部の男性客にのみ所在を伝え、1日に一人通るかという路地裏の奥に店を移した。
「「店長!」」
そんな個性的な店長がトングを構えるカウンターへまっすぐと進み、月に七日しか売りに出されないこの店五番人気
"うふっ♡店長の生搾り百パーセントっ。PSいつでも連絡待ってるわ"
が、ちょうど一つだけ残っていたので頼もうとしたのだけど、私と同じタイミングで横から店長を呼ぶ声がした。
「あ、すみません。お先に……えっ」
と時間的に余裕があるから譲ろうとしたら
「あっ、俺はあとで……えっ」
その相手がまさかの
「れ、レント!」
レントだった。
「セシル?!」




