セシルside
暖かい
「すぅぅ」
心地よくてずっとこうしていたいと願ってしまう。
「ふぅぅぅ」
でも、赤ちゃんがずっとお母さんのお腹の中にいられないように
「……」
意識がゆっくりと覚醒していった。
「……」
目が開き1番最初に見えたのは
「……紅い」
紅に染まった天井だった。それから夕焼けの光だけでも十分に明るいため全く照明の役目を果たせていないシャンデリアだった。
「おい。おい!」
次第に鮮明となっていく意識……不意に男性の声がして手を強く握られた。
「鍛えすぎて乳首が陥没してます」
乳首?
「そんで下を向いてます。職を失った50代ギルド職員が明日に希望を見出せない時のようにめっちゃ下を向いてます」
下を向く?ギルド職員?色々と疑問に思いつつも声の方へ視線を動かした。その先には、
「コンプレックス……とでもいうと思ったか?〇〇ロットぉぉ!!」
私の手を握りベッドに頭と体を預けて眠るレントが
「〇〇ロットって誰だ?」
むにゃむにゃと寝言を呟いていた。
「……」
私の手を握りながら
「……」
眠っていた。
(……ふぁぁぁ!!)
レントに手を握られている。それだけのことなのに
(な、なんで?!どうして!!)
恥ずかしくて。でも、なんか嬉しくもあって
(ってそんなことより……私の手、アセ大丈夫かしら)
そこじゃないだろう!もっとなんでベッドで寝てるのとか色々と疑問に思うことは他にもあったと思うけど、色々と取り乱してしまって疑問にすら思わなかった。
「俺は俺、なのだァァ!」
どんな夢を見てるの?と聞きたくなるほどの寝言を連発するレントは寝返りを打って私の方を向いた。
「……っ!!」
凝視できなかった。そして
"助け、て"
レントの顔を見ていたらパーティーでのことが頭をよぎって
"任せろ"
恥ずかしさが込み上げてきた。
「ぅぅ」
それにあの時の苦しくて辛くてどうしたらいいのかわからなくて出口の見えない暗闇の中にいた私を救い出してくれたレント……優しくて大きい手で包み込んでくれた。心地よい体温に、レントの匂い。
「うっ」
あの時の感触とかが鮮明に蘇った。そうしたら急に胸が苦しくなって身体も熱くなってレントに握られている手が汗で濡れはじめた。
(や、ちょ)
気持ち悪がられると不安に思いつつそれでも離したくなくて握ってしまう。
(ど、どうしよ)
自分で自分をコントロールできない。焦りが募りはじめた時だった。
「おお、俺はやるぞ。今度こそセシル!」
寝言で名前を呼ばれてビクッとした。
「お前に勝つぞ!」
って無邪気に笑って言った。そんなレントを見ていたら
「……ふふ」
自然と笑ってた。さっきまで慌てふためいていたのに。それに少し前まであんなに顔を見るのも嫌だったのに。不思議だった。愛おしくてたまらなくて気がつくと
「負けないわ」
レントの額にキスをしていた。
………
……
…
一方で
「この馬鹿者が!」
「ひいい!すみません父上!」
「お前……あの行為でもし辺境伯が兵を挙げたらわが国は真っ二つに割れてたのだぞ!セシル嬢に対する一方的な婚約破棄の件もなんとか納めたというのに!」
「ひいい!すいません!」
「謝って済む問題か!」
「ひぃぃ!」
王城にてクリスはケントス国王から叱られて悲鳴をあげていた。
(くそ!なんで僕がこんな目に合わなければいけないのだ!)




