ルイーズside
な……。
「王妃に言いつけてやるぅぅ!!」
信じられない。置いていった。婚約者である私を。
"君のことは何があっても僕が守る"
とかカッコつけて言ってたくせに。
「ちょ」
な、なに私をおいていってるのよぉぉ!!
「……」
清々しいまでに約束を破られてなにも言葉が出てこなかった。そんな私の肩を
「おい」
レントが掴んだ。気安く。この私の体に触れやがった。
「っ!」
その事に舌打ちしたかった。だけど今は味方が一人もいない現状を考えると
「な、なんでしょう」
とにかくいい子を演じて。どっちかというとクリスに付き合わされたというテイで乗り切ろうと切り替えた。
「確かクソの婚約者の……ロベルト?いやそれは男の名前か……カサリン?……っ!おお!キャサリンだ!」
何か得心がいったのかはわからなかったけど満足気な顔をすると私の両肩を掴み
「キャサリン!お前もあんな奴の婚約者とか大変だな!」
この私に話しかけてきた。つーか、キャサリンって誰だよ!そこだけはなんとしても訂正しなくては。
「お初にお目にかかりますわ。わたくしクリス王太子殿下の婚約者ーールイーズ・レッドスカーレットと申します」
自己紹介をしてやった。わざわざお前のような男にもわかるように名乗ったのだからちゃんと覚えろ!
「あっ、おれはレント・ロープウェイ。よろしくキャサリン」
人の話全然聞いてねぇぇ!
「……」
「どした?キャサリン」
唖然だった。話には聞いていたけどここまで人の話を聞かない人間だったとは。
(私自身も相当な自己中だと思うけどそれを凌駕する人間がいるなんて)
衝撃が走った。と同時にここまで自分の思い通りにならない人間なんて初めてだった。大抵の人間は私の容姿に惹かれて自分のものにしようと近寄ってくるのにこの男は違った。
「それじゃクソもどっかいっちまった事だし。お前も帰れ」
レントに体をくるりと回され背中を押された。王城の出口へと向かう方角へ。
「気をつけて帰れよ」
どうやら何事もなく抜け出せそうだったので私はそのまま歩き出した。
「じゃあなキャサリン」
レントの声を背に受けて。
"あの子かわいくね"
"絶対俺のものにする"
そんな男ばかりが私が望んで手に入れたわけではない私の容姿に惹かれてやってきた。
(あんな男もいるのね)
不思議と悪くない気分だった。
「ふふ」
それからしばらく歩いたあと振り返って手を振うレントへ
「私の名前はルイーズよ」
聞こえるはずもないのに訂正して手を振りかえした。
「ふふっキャサリン」
あんなに自分のペースを乱されるのが嫌いな私がこんなにもペースを乱されて心地いい気持ちになるのが不思議でつい笑ってしまった。
「悪くないわね」
この時にはクリスへの怒りなんて忘れてしまっていた。




