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087:姿見えぬ影(side:イルザ)

「さて……それじゃまずは名前を教えてくれるかな? 氷のように美しいエルフのお嬢さん」

「……私はイルザ・アードルング。この少年はギルバート、彼女はレーラだ……単刀直入に聞く。天空庭園に関する事が書かれた本を買った記憶はあるだろうか?」


 彼は腕を組みながら私を見つめる。

 私が質問の内容を明かせば、彼はくすりと笑う。

 私は思わず眉を顰める。


「あぁすまないね。ちょっと意外だったからさ……そうだね。その本についての答えなら……イエスだ」

「「……!」」

「……なら、話は早い。その本を売っていただく事は出来ないだろうか? 無理であれば、少しの間、貸していただきたい。勿論、正当な金額をお支払いする事をこの場で約束する。どうだろうか?」


 私は本を譲ってはくれないかと尋ねる。

 この場合、相手は我々がその本がどれほどに欲しいかを考えるだろう。

 商人であるのなら、態と揺さぶりをかけるなりして本の価値を引き上げようとする。

 そうして、自らが儲けられる最大ギリギリで金額を提示してくる……が、恐らくこの男はそれをしない。


 今は服を着ているが。

 その服はかなり上等な生地で作られたものだと素人でも分かる。

 純白のローブもそうだが、全くと言いていいほどほつれや乱れが無い。

 その下に着込んだ衣服に関しても、とても人間が作ったとは思えないほどに精確な縫い目だった。

 シンプルでありながら、綺麗で丁寧であり、相当な額のものだと分かる。

 だからこそ、こいつに関しては金による取引は起こらないだろうと考えていた。


 ……まぁあくまで予想だが……金以外の何かはあるだろうな。


 男は静かに頷く。


「勿論、貴方のような美しい方からの頼みとあらばすぐにでもお譲りしましょう……ただ、叶うのであれば私も貴方に願いたい事があります。聞いていただけないでしょうか?」

「……断る理由は無い。聞かせて頂こう」


 やはり、何かを要求するようだった。

 私は冷静に彼の話を聞く事を承諾する。

 すると、彼はこの場にいる女性や黒服に席を外すように指示する。

 彼らは素直にそれに応じて部屋の外へと出て行ってしまう。


 人払いが済んだのを確認し、カミロ・エスピノは口を開く。


「……ここ最近、サボイアの魔物の様子が妙なのは知っていますか?」

「……? すまないが、その話は聞いていない。我々は遂最近、来たばかりでな……それが何か?」

「……いえ、サボイアに生息する魔物たちは国宝の力により凶暴性が抑えられていますが。最近では、人を好んで襲う魔物が出ているとの情報が私の耳に入っているんですよ。街から出ない人間は安全ですが、他国との交易であったり、街同士の移動で馬車が襲われる事態もちらほらとあるようで……つきましては、魔物が凶暴化している原因の究明を手伝っていただけないでしょうか」

「それが頼みか? そうであるのなら構わないが……何故、会って間もない我々に?」


 少々、違和感を抱いてしまう。

 私はまだ冒険者である事を教えてはいない。

 相手も我々の事をアンカーさんの知り合いだとは考えたようだが。

 冒険者と決めつけているような素振りは無かった。

 今は武器も宿屋に置いてきているので、私を冒険者と断定するには……。


「はは、そう警戒しないでください……そうですね。これ以上は、貴方の心労を増やすだけだ……実は貴方の事は一方的に知っていました」

「……というと、私の仕事もご存じだと?」

「えぇ勿論……私、こう見えても美しい女性の顔と名前と体は絶対に忘れないので……冒険者の中でも話題に上がる“冷人”。氷のように冷たい視線で敵を屠っていくエルフの魔弓師……態々、人を使って描かせた人相書きも素敵でしたが。やはり、実物はそれ以上に美しい……おっと、これ以上は貴方が私をうっかりと殺してしまうかもしれませんね。失敬失敬」


 エスピノはころころと笑う……相当な女好きということか。


 私は奴に対する警戒心を跳ね上げる。

 見れば、レーラも薄っすらと殺気を放っていた。

 その目は女の敵を見つめる目で……分かる。


「……冒険者として依頼は引き受けよう……だが、幾つか質問がある。良いだろうか?」

「えぇどうぞどうぞ」

「……先ず一つ。何故、この件に関して、組合ではなく私個人に依頼をしようと思った?」

「それは簡単です……“使えないから”ですよ」

「……? それはどういう意味だろうか」

「言葉通りの意味ですよ……彼らは冒険者という称号を金で買っただけのクズ。素人に毛が生えた程度の実力しかない飲んだくればかりです。碌な実戦経験も積まず、ただただ魔物を使った他力本願の戦闘ばかりして……楽を覚えた狩人ほど頼りにならないものはありませんよ」


 彼は両手を上げてやれやれと首を振る。

 私が聞いていた話ではサボイアの冒険者はそこまで評判が悪かったようには思わなかったが。

 もしかしたら、他国に舐められない為に情報操作をしていた可能性がある。

 こればかりは実際にその国を見なければ分からない事だが……なるほどな。


「ならば、二つ目だ……何故に、その件の解決を貴殿が望む?」

「……おや? 変でしょうか? 国の事を思い、弱き人々の不安の種を取り除きたい……善良な市民として当然の事ですよ」

「……ふむ、質問が悪かったようだ……この件を解決して、貴殿に何のメリットがある?」

「そ、それはあまりにも……うぅ、い、いいんでしょうか?」

「……いや、聞いておいた方が良い。貴族が国の問題の解決に乗り出る。よくある話ではあるが、些か、問題の規模が大き過ぎる気がする。自分の領地以外の問題であれば尚の事だ……何かしらの事が絡んでいると考えて当然だ」


 レーラは戸惑ったようにギルバートを見る。

 しかし、ギルバートは私の考えに肯定的だった。

 我々は隠す事も無く、目の前の男の真意が見えない事に不信感を抱いていると告げる。

 すると、エスピノは小さく息を吐く。


「敵いませんね……良いでしょう。理由を話します……が、話を聞いたらもう後戻りはできません。もしも、途中で降りようとすれば……分かりますね?」

「……よほど大きな問題か……良いだろう。承諾する」

「俺も問題ない。どの道、乗らなければその本は手に入らないからな」

「え、え、え……じゃ、じゃ私もぉ……不安ですけど……」

「ははは、怖がらないでお嬢さん……痛みはありませんから」

「ひぃぃ!!」


 奴は不敵に笑う。

 レーラは悲鳴を上げてギルバートの後ろに隠れる……はぁ。


 私があまり揶揄うなと奴を睨めば、奴はくすり笑い謝る。

 そうして、ゆっくりと姿勢を正して説明を始めた。


 

「終焉の導きを……ご存じでしょうか?」

「「「……!」」」



 私はエスピノの言葉に驚く。

 二人も同様に驚いていた……まさか、この件に奴らが?


「その様子ですとご存じのようですね……魔物たちの凶暴化に伴い、国は速やかに国宝の調査を騎士団に命じました……が、結果から言えばそれは失敗に終わりました」

「……奴らの妨害にあったと?」

「いえ、それは違います……その地に辿り着けなかったのです。物理的にね……どうやら、国宝が放つ熱量が日に日に上昇しているようで、一月余りの間に周辺に展開していた貯水場の水が干上がるほどです……現在では中心地はおろか、半径十キラ圏内への立ち入りは危険であると国は判断しています」

「……貯水場ということはかなりの水をため込んでいたんだろうが。それが一気に干上がる程なら……ここにも影響が出ていてもおかしくないと思うが?」


 先ほどの説明では明らかな矛盾があった。

 それは半径十キラ圏内が侵入不可能である程ならば。

 遠く離れていたとしても、少なからずマルケッテにも影響が出ている筈だ。

 確かに、日に日に暑さが増しているような気はしていたが。

 気のせいかもと思えるほどの微妙な違いであった。

 だからこそ、急激な温度の上昇が信じられないと伝える。

 すると、奴はあぁと声を漏らしてある取り組みについて説明し始めた。


「実を言うと、我々の国では“環境対策組織”なるものが存在していまして……簡単に説明すると、国宝が放つ熱を外部からの力で抑え環境の回復を図る為に組織されたものでしてね……侵入が不可能になるまでにも、結界術を行使している魔術師から報告は上がっていたようですが。彼らを指揮する立場の人間が報告を怠っていたようで……はぁ……兎に角、彼ら魔術師たちが今この瞬間にも、結界術によって外部へと危険な影響を及ぼす熱量を遮断しているんですよ」

「……人力なのか? だが、そうなるとかなりの人員が……」

「えぇ分かっています。人員は相当なものですが、その組織の人間のほとんどは……“奴隷”です」

「……! なるほど、そういう事か……」


 私は理解した。

 環境対策組織何て大層な名前をつけてはいるが。

 その実態は危険な業務を熟す為だけに集められた奴隷たちの働き口だ。

 大量の水を干上がらせてしまうほどの熱量だ。

 その近くで結界術を行使し続けるのであれば、相当な体力と魔力……そして、精神力を削られるだろう。


 一瞬でも気を抜けば、死ぬ恐れもある。

 そんな仕事に就きたいと思う者はほとんどいない筈だ。

 だからこそ、国は敢えて組織として立ち上げて奴隷を動員する事にした。

 一般市民ではなく奴隷であれば、死んだとしても不都合は生じないからだ。


 知っていた。

 奴隷が存在するのであれば、そういう扱いを受ける国もあると。

 だが、これでは命を代価にして金を払っているようなものだ。

 死のリスクは冒険者よりも確実に高く。

 どれだけの金を貰っていたとしても、割りに合わない筈だ。


「……彼らのお陰で、我々はまだ平穏な生活を送れています……が、過酷な環境だ。死人は出ていますし、今いる奴隷たちも限界が近い……もしも、彼らが全員倒れてしまえば……この国は“破滅します”」

「……なるほど、利益も何も関係ない。国家存亡の危機であるからこそ、お前はこの件で動くと決めたのか……理由としては十分だな……だが、それなら何故、終焉の導きの名を?」

「……これは私が私兵を動かして調査を行った結果、得た情報ですが……国宝へと立ち寄った人間がいたとの報告を受けています」

「……それが奴らであると?」

「確証はありませんが……恐らくは」


 エスピノは説明する。

 魔物の凶暴化が発生する前。

 王国内では様々な事件が多発していたらしい。

 所謂、殺人事件ではあるが、サボイアの騎士団はあまり深く考えていなかった。

 この国では殺人沙汰の事件は珍しくは無い。

 だからこそ、碌な調査もしないままに盗みの延長だと断定したらしい。


「……ですが、その殺人事件で死亡した三名の人間に関して……僕は不信に思いました……彼らには共通点がありました。それが何か分かりますか?」

「……国宝に関係していた人間。又は、国宝に関する何らかの情報を持っていたか?」

「――正解……第一の被害者の名は建築家のオデロ。既に年齢により引退はしていましたが、現役時代は国宝を補完する場所の点検業務を国から任されていました。彼は殺害当時家にいましたが。何者かの襲撃にあい殺害されて、犯人たちは家を荒らして金目のものを奪って逃走しています……が、後に我々が調査をした結果。国宝が保管されていた施設の見取り図も一緒に盗まれていた事が分かりました」

「……なるほど、金目のものを奪ったのは偽装で、それが本命だったと」

「えぇ恐らくは……現場には火が放たれていて、残されていた設計図などは燃えてなくなりましたが。国宝が保管されている施設の情報は国家機密。オデロもその重要性を認識していて、金庫に入れて保管されていた筈ですが。犯行後には金庫は開け放たれていて、見取り図も燃えたものだと思われていました。騎士団は金目の物を盗む目的で金庫を開けたと推測していましたが、残された紙片を回収し復元すれば――その見取り図の紙片だけは一欠けらもありませんでした」


 彼の説明を聞いて納得する……ほぼ決まりだ。


 建築家のオデロを殺害した犯人の目的は見取り図だった。

 丁寧に自らを物盗りと偽装し、騎士団の目を掻い潜ったのだ。

 計画的犯行であり、恐らくはかなり前から練っていたのかもしれない。


「そして、第二の被害者と第三の被害者は共に騎士団に属する人間でした……彼らの場合は、殺人事件ではありますが。騎士団の報告によれば、酒が入り何らかの理由で二人は互いに口論となり、それが剣を引き抜く事態となり相打ちになったとなっています」

「……口論から殺傷沙汰か……不自然だな」

「まぁ知らない人間ならばそう思って当然でしょう……ですが、彼らは実を言うと非常に仲が悪かったらしいです。死ぬ二月前から、互いに顔も見たくないと言っていたらしいですからね。それ以前までは、お互いに酒を飲み交わすほどの友であったそうですが……噂では女性がらみでトラブルがあったとか……その結果、騎士団も不信に思う事無く喧嘩の末の相打ちであると片付けていました……が、この二人も国宝の事で関係しています……ふふ、分かりますか?」


 奴は何が面白いのか笑っていた。

 私は小さくため息を零しながらも考える。


 騎士団の人間で、国宝に関わる場合はどんな時だ。

 誰かの護衛で立ち入る場合が普通だろうが。

 そういう場合は、もっと立場のある人間のような気がする。

 酒を飲んで互いに殺し合ったと思われるような人間たちであればそれほど評判は良くないだろう……ふむ。


「……その人間たちは、他に友人はいなかったか?」

「いえ、確認したところ交流があったのは殺した相手だけですよ」

「……口は堅い方か? 無口でもいい」

「えぇ、彼らはあまり喋らない人のようでした。人望はあまりありませんでしたが、勤務態度も真面目だったそうですよ?」

「……なら、決まりだ。交友関係が少なく、口数の少ない人間であれば……その施設に関する重要な情報を持たされていたんだろう」


 私がそうだろうと聞けば、奴は指を鳴らし正解だと言う……ふっ。


「国宝が保管されている施設には、とある警備システムが組み込まれていました……それは“ゴーレム”です」

「大方、侵入者を排除する為のものか……まさか、それを制御する“暗号呪文”か?」

「えぇその通りです。王は騎士団の中でも、その二人の事をえらく信用していたそうです。酒を飲んでもあまり喋る事も無く、ただ忠実に仕事を熟す姿が気に入ったんでしょうね……施設へと立ち入る際は、決まってオデロと彼の弟子が数名とその騎士二名が向かっていたそうです。他の人間たちは単なる護衛程度に思っていたそうですがねぇ」

「……だが、その説明の仕方であれば、誰が殺したと言える? それだけでは犯人は決まってしまうだろう」

「えぇえぇ、分かっていますよ……ですが、当時、彼らの他に一緒に酒を飲んでいたという女性がいたと我々は突き止めました」

「……その女が、彼らを殺したと……魔術的なものか」


 精神操作による洗脳か。

 或いは互いの殺意を高める事によって些細なきっかけで殺し合いに発展させたか。

 そうであるのなら、確かにこれは第三者による殺害事件になるが……妙だな。


「……如何に杜撰な調査といえども、殺害された人間たちが魔術によるアプローチを受けていたかどうかの調査はすると思うが……まさか、魔術は使われていなかったのか?」

「……えぇ、そうです……僕も最初は魔術の線を疑いました。が、結果から言えば彼らの体には術式を埋め込まれた痕跡はありませんでした。それどころか、魔力すらも使われた形跡はない……その謎の女性が何かしら関わっているとは思いますが……すみません。この二人に関しては、私は憶測でしかものをいえませんが……恐らく、魔術ではない何か。奇跡の具現化である――“魔法”かもしれません」

「……! いや、それは早計ではないのか? 説明がつかないから魔法などと」

「……ですが、彼らは精神操作を受けていなかった。そして、不自然に体を操られた形跡もありませんでした。自らの意志で剣を抜き、自らの意志で……“唯一の友”を斬ったんです」

「……ならば、彼らを見ていた人間はいなかったのか? 女と共にいたという情報があったのなら、外で飲んでいたんだろう?」

「あります…………ですが、これはほとんどどうでもいい話なんですよねぇ……酒を飲み、つまみを食べながら……彼らは“カードで賭け事”をしていただけのようです」


 彼は疲れ切った様子で息を吐く。

 カードで賭け事か……確かに、関係はなさそうだ。


「他に不審な点は無かったのか?」

「ありません……女性はカードで賭け事をし……勝ったか負けたかは分かりませんが……笑顔で彼らと別れています。そして、その数分後に騎士二人は口論を始めて殺し合いに発展した……正直、これを聞いて疑っている僕の方がおかしいとは思いますけどね。何度聞いても、その女性は何もしていませんから……ただ、ねぇ」


 奴は目を細めて笑う。

 何か掴んでいると言わんばかりの顔だった。

 私はもったいぶらずに話せと言う。

 すると、奴はゆっくりと話し始めた。


「……その女性は、とても綺麗な顔立ちだったそうです。そう、美人だったんです! ……私はマルケッテの他にも、サボイアの領内をくまなく散策しています。新しい出会い……んん! 白馬の王子を求める麗しの乙女を探してね」

「……つまり、美人な女の顔なら覚えていると……それが何だというんだ」


 私は苛立ちを隠す事も無く奴を睨む。

 すると、奴は腕を組みながら鼻を鳴らしてにやりと笑う。


「分かりませんか? 美女の顔を記憶しているという事は……私はその女性を知っていたと言う事ですよ」

「……本当か? 勘違いだったら取り返しがつかないぞ」

「はは、私の目を疑っていますね? でしたら、披露しましょう……イルザさん。貴方はマルケッテの薬師のオーゲルンの店に立ち寄りましたね? 二日前の昼頃、その時は一人で……そこのお嬢さんは出店で山盛りの“ムルバ”を買っていましたね。アレは私も好きですよ。蜂蜜と牛乳を混ぜて、生地と混ぜ合わせてこんがりと焼いたお菓子、店のご婦人からおまけとして多めに貰ってとても喜んでいた……違いますか?」

「「…………うぅ」」


 私とレーラは体を震わせながら得意げな奴を冷ややかな目で見つめる。

 当たっている事は当たっている。

 レーラも同じ反応をしているから正解だったのだろう。

 凄い能力ではあるが……ストーカーのように感じて寒気がした。

 

 私たちは奴の能力に怯えながらも、一応は信じる事にした。

 それを伝えると奴は安心した様に胸を撫でおろす。


「安心しましたよ。もしも、これでも信用を得られなかったらどうしようかと。そうなってしまえば、お二人のスリーサイズを「殺すぞ?」……あぁとても良い目だ。ぞくぞくします」

「……へ、変態です。怖いです、ギルバート様」

「……案ずるな。もしもの時は……俺が許す。片付けるぞ」

「ははは、聞こえてますよぉ。物騒な会話は止めましょうかぁ……まぁ取り敢えずは信用して頂いたと言う事で……その女性の特徴を聞いて、すぐに一人だけ思い出したんです。そして、記憶を頼りにその女性が通い詰めていた小さな喫茶店の女店主に話を聞きました……すると、驚くべき言葉が返ってきましてねぇ。いやぁアレは流石の僕もぞっとしましたよ」

「……何と言われた」


 私は問いかける。

 すると、奴はたらりと汗を流しながら言う。



 

「――“そんな人は知らない”、と」




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