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052:選定の儀

 石の床がひんやりと冷たい。

 格子状の窓からは陽の光が差し込んでいて、今が朝であると教えてくれていた。

 目覚めの良い朝ではない。硬いベッドに寝かされていたからか体中が痛かった。

 いや、そもそも怪我は完治していないから痛みを感じるのは当然だ。

 昨夜の出来事を衛兵のおじさんから聞かされて、渡された服を着させて貰ったが。

 衛兵のおじさんから貰った服からはほのかに草の香りがした。

 

 牧草だろうか? いや、薬草かもしれない。


 独特な匂いではあるが臭いと言うほどではない。

 衛兵のおじさんは親切であり、自らも“やらかした事”はあると言っていた。

 目覚めるまで“全裸”で寝かされていた“俺たち”。

 今も相方のいびきがこの狭い空間で反響しているように感じる。


 右を見れば、石造りの壁が続いていた。

 恐らくは両隣も牢屋だろう。


 左を見れば、壁に沿うように椅子が一脚置かれていた。

 そこには先ほどまで衛兵の一人が座っていたが。

 今の状況を見て職務を放棄してそそくさと去っていった。


 俺はゆっくりと前を見る。

 そこには氷よりも冷たい眼差しで俺を見る二人の女性がいた。

 その傍にはすごくいたたまれない表情を浮かべる衛兵のおじさんもいる。


 恐怖、不安……今の俺の心はそんな感じだ。


 何故に、俺は今こんな危機的状況にあるのか。

 分からなかったが、衛兵のおじさんから聞かされた話で全てを知った。

 そして、彼女たちも他の衛兵に呼ばれて渋々来てくれた。


 

 顔を見た瞬間に理解した――あぁ死ぬんだ、と。

 

 

「……」

「……へ、へへ」


 “鉄格子の向こう側”で、アーリンが冷たい目を俺たちに向ける。

 ガイは今もいびきを掻きながら寝ていた。

 必死に起きろと心で念じるが、彼は体を激しく揺すっても寝ているのだ……くそ。

 

 俺も今すぐに寝たいところだったが、彼女の氷のような目のせいで眠気は吹き飛んだ。


 牢屋の窓から差し込む光で朝である事は分かったが。

 何故か、起きたら牢屋の中に放り込まれていた。

 状況を聞かされて、アーリンとアードルングがやってきて。

 彼女たちは淡々と俺たちがどうして此処にいるのかを“もう一度”教えてくれた。


 楽しい酒盛りが終わり。

 アードルングとアーリンは先に帰っていってしまった。

 何でもアーリンが眠ってしまったから彼女が宿屋に運ぶ事になったようで。

 大事な話については後日という事になって、俺とガイは夜の街に消えていった。


 そこから浴びるほど酒を飲み続けて。

 俺たちは何故か全裸で眠っていたらしい……公衆の面前でな。


 通報を受けて駆け付けた衛兵に捕らえられて。

 こうして、一時的に拘留されていたようだった。

 何とも恥ずかしい出来事であり、彼女たちの冷めた目にも納得してしまう。


 俺は必死に笑みを浮かべながら。

 早く出してくれないかとアーリンを見つめる。

 すると、彼女は舌を鳴らしながら傍に控えていた衛兵さんを顎で動かす。

 おじさんは肩をびくりと跳ねさせて、いそいそと鍵束を持って牢屋の鍵穴に差し込んでいた。

 パワーバランスがおかしい気がするが、そんな事をツッコめばどうなるのかは目に見えている。

 俺は何も言わずに開かれた扉を潜って外に出る。

 そして、ガイを呼ぼうとしてアーリンの杖で口を塞がれた。


「……アイツはもう一日此処に入れておくわ」

「え、いや、あの、さっさと彼も……あ、はい。お預かりします」

 

 衛兵さんが何かを言おうとしたが。

 アーリンがぎろりと睨むと身を縮こまらせて了承した。

 アーリンは踵を返して歩いていく。

 俺はアードルングを見て……!


 彼女はふいっと視線を外す。

 俺はそれだけで心に深いダメージを負う。

 その場に膝を屈してしまいそうになりながらも、俺は必死に足を動かして二人を追いかけていった。



 

 トリエストスの大通り。

 早朝であるにも関わらず、人々の談笑する声が聞こえていた。

 多くの店も開店しており、列を成す店や客引きをする店もある。

 俺は客引きから何とか逃れてすたすたと歩いていく二人を慌てて追う。


 何とか追いついてから、俺は両手を顔の前で合わせてアードルングに謝罪する。


「本当にごめん! もうしないから! 絶対に!!」


 必死に何度も頭を下げた。

 すると、彼女たちはゆっくりと足を止める。

 そうして、俺に視線を向けてくれた。

 

「……本当だな? 今此処で誓え」

「ち、誓います! 約束を破ったら……アードルングに飯を奢ります!」

「……軽いな。命を懸けろ」

「へあ!? そ、そこまでなの!? いやいやいや!」


 アードルングは俺の言葉を無視して再び歩き出した。

 俺は彼女を追って横に並びながら、必死に声を掛けた。

 彼女は少しだけ機嫌を直してくれたように見えたが。

 誓いを立てろとまで言ってきた……いや、まぁ俺の酒癖が悪いのがいけねぇけどさ。


 命を懸けろとまで言われれば、約束を果たせる自信がない。

 そんな事を考えていれば、彼女はそっぽを向いて「もう知らん」と言う。


「あ、あぁ! 誓う!! 誓うからぁ!! 許してくれぇ!」

 

 俺は慌てて誓うと何度も言った。

 すると、彼女はもう一度足を止める。

 彼女は俺を見てにやりと笑ってから「言ったな?」と言う……うぅ!


「……お二人さんもういいかしら?」

「あぁもう気は済んだ」

「お、俺は別に……ご、ごめん」

「はぁ、いちゃつくのはいいけど。少しは周りを見なさいよね」

「「……!?」」


 いちゃついているように見えていたのか。

 俺はハッとしてアードルングを見た。

 すると、彼女も俺を見てきてすぐに視線を逸らす。

 彼女の表情は見えないが、少しだけ肩が震えていた……悪いことしたかな?


 彼女は真面目に話をしていただけで。

 そういう風には見られたくなかったかもしれない。

 アーリンは茶化したように言っただけだが……よし。


「アーリン、妙な事言うなよな。俺たちは仲間なんだ。そんな関係じゃねぇよ。なぁ?」

「…………そうだな。ただの仲間だな」

「そうそう! 背中を預け合う相棒みたいなもんだ! そんな浮ついた関係じゃねぇし。俺はアードルングに釣り合わねぇよ。ははは!」

「……」


 俺はアードルングの名誉を守る。

 これで良いだろうと言わんばかりに彼女に視線を向ければ……あ、あれ?


 凄く嫌そうな目を俺に向けている。

 目を細めながら殺気まで放っていた。

 まるで、俺が言ってはならない事を言ったようで……相棒じゃないのか?


 俺はプルプルと震えながら彼女を見る。

 俺が声を掛けようとすれば、彼女はそれを遮ってアードルングに質問をした。


「それで、何故、“我々は呼ばれた”? もう報告は済ませた筈だが」

「……そんなの私が知る訳ないでしょ……兎に角、分かってるわね? 特にハガード」

「え、何が……いやいや! 分かってる分かってるから! 睨むなよぉ」


 俺が少しふざけようとすれば彼女は殺気を放つ。

 俺は慌ててジョンの事などを話すなという事だろうと伝える。

 彼女は舌を鳴らして……着いたな。


 トリエストにある冒険者組合支部。

 酒飲みが集まる街であるからか、この中からも酒の匂いがする。

 外まで漂ってくるなんて相当だけど、この街で長くいればこの匂いにも慣れるというものだ。


 三階建ての赤煉瓦の建物であり、窓ガラスもしっかりと張られていた。

 どこの冒険者組合でも同じだが、建物自体はすごく高級な作りだ。

 金を掛けて作った外観と内装で、働いている人間たちもマナーがしっかりしていた。


「……やっぱり、組合ってすげぇんだな」

「……何よ今更。そりゃ国際的な組織なんだから当然でしょ? 有事の際には多くの国の領域内で大規模な作戦行動も許されるんだから、その信用度と組織としての格は飛びぬけているわ……まぁ中には自分の地位や権力を悪用する奴もいるけど」

「……?」


 彼女がぼそりと呟く。

 が、彼女は「何でもない」と言って組合の扉に手をおく。


「さ、行くわよ。くれぐれも……頼むわよ」

「あぁ」

「おぅ!」


 アーリンはゆっくりと扉を開けた。

 そうして、中へと入れば中の酒気も濃厚になる。


 ガヤガヤと騒がしく、多くのテーブルの前には人がいた。

 そのどれもがジョッキを片手に酒を飲んでいる。

 朝っぱらから飲んだくれが多い多い……それにしても、何度見てもすげぇな。


 上に目を向ければ吹き抜けのようになっていた。

 中心に大きな螺旋階段などがあり、二階と三階へと続いていた。

 二階と三階の通路には職員や冒険者風のヒューマンやファーリーなどが徘徊している。

 一階とは違って二階三階いる人間たちは忙しそうで。

 何回かは見ていたが、それでも俺は周りを見つめて……おっと!


 アーリンたちが俺を置いてフロントに行く。

 俺は慌てて二人を追い掛けた。

 アーリンは螺旋階段前のフロントにてにこやかに笑うお姉さんに用件を伝えていた。

 お姉さんはすぐに手元のスケジュール表のようなものを確認していた。


 お姉さんは台座の上に置かれた魔石に手を置く。

 それは正方形の形に研磨されており、お姉さんは呪文を詠唱した。

 すると、魔力が注がれた魔石が少し光る。

 お姉さんは魔石を握って口元に当てて、片手の人差し指を耳の穴に当てた……?


「なぁ、これって」

「……魔石と魔術を組み合わせた連絡方法よ。私がアンタに渡した魔石があるでしょ? あれを使って“超常魔術の術式”を組み込む事で使えるの……これはものを振動させる術式で、魔石はその振動を感知して震える事で相手に声を送る事が出来るのよ」


 アーリンは俺が分かるように説明してくれる。

 この特別な魔石は元々は塊としてあり。

 それを砕いたりする事によって多くの人間へと渡す。

 

 複雑な術式を組み込めば同じ魔石であっても特定の人間とのやり取りも可能らしいが。

 俺が貰ったものは魔力を流すだけで、距離のある相手にも気づいてもらえるようにしたものだったようだ。

 危険を知らせるだけであれば、複雑な術式は要らない。それがアーリンの考えだ。

 

 この魔石はあらかじめ魔力を込めていれば、それを内部で貯蓄するもので。

 その魔石に魔力を流せば、他に存在する魔石もそれを感知し同じ量の魔力を消費するらしい。

 これは魔石そのものの力らしく、魔力などに反応しそれを模倣する力を秘めているようだった。

 つまり、魔力だけでなく魔術も真似をしようとするらしく。

 膨大な魔力を消費しない限りは、こうやって振動を相手へと伝える事が出来るらしい。


 これはその応用であり、声を振動として相手の魔石へと送るもののようだ。

 彼女の説明を聞きながら、俺はお姉さんのそれを興味深そうに見つめた。

 

「へぇ……でも、超常の魔術って貴重なんじゃんないのか?」

「まぁ貴重ではあるわね……ただ、この術式に関しては初歩的なもので。既に研究で術式に関しても解明されてるの。誰でも使えるような改良も施されているから、こうやって事務作業の人間でも……」

「……お待たせいたしました。確認が取れましたので、皆様から見て右手側、三階の通路を進んで奥の部屋へお進みください」


 アーリンはお礼を伝えて歩き出す。

 俺も会釈をしてからアーリンを追っていった。

 螺旋階段を上がりながら、アードルングに心当たりはあるか聞く。

 すると、彼女は「あり過ぎるほどにな」と言う……あぁ。


「……返答次第絵で冒険者の資格をはく奪とか……ねぇよな?」

「――場合によるわね」

「――状況次第だな」

「……そこは、大丈夫って言ってくれよ……はぁ、不安だな。俺もガイみたいに待ってれば良かったかも」

「出来たらそうしてたわよ。ただ、四人の内、二人もいないとなれば流石に言い訳出来ないでしょ?」

「アーリンと話して、まだハガードの方がマシだと判断した。悪いな」

「ま、マシってさぁ……言い方、考えてくれよぉ」


 俺はがっくりと肩を落として人差し指同士でつつく。

 アーリンはくすりと笑って、アードルングが少し申し訳なさそうな顔をしていた。

 そうして、三階へと上がれば酒の匂いは緩和された。

 

 真面目そうな人間たちが行きかっている。

 その手には紙の束であったり、何かの道具を持っていたりだ。

 職員だけじゃなく、鎧などを着込んだ冒険者たちもいる。

 緊張した面持ちで俺たちとは逆の通路に進んでいた。

 チラリと見れば、同じように緊張した冒険者風の奴らが椅子に座って待っていた……アレは?


「……アレは恐らく、昇格に関する話か、降格に関する話だろう……場合によれば除名の話でもあるがな」

「え、今からか? こんな朝早くからするのかよ」

「まぁ毎日やっている所もあるくらいだし。用件は早めに終わらせたいんでしょ。知らないけど」


 三人で足を止めて待っている人たちを眺める。

 そして、アーリンは待たせているからと先に行く。

 俺たちも彼女を追って待っているという人間に会いに行った。

 

 奥へと行き、高級そうな扉があった。

 アーリンは扉に軽くノックをした。

 すると、すぐに中から入室を許可される。

 断りを入れてからアーリンがノブを握って中に入る。

 俺たちも続いて中へと入れば……あの人たちは……。


 高級そうな革張りの長椅子にこれまた高そうな長い机。

 後ろにはガラスの窓があり、部屋の中には赤い花が入れられた高そうな花瓶と風景画が飾ってある。

 少し狭く感じるのは椅子や机が大きいからだろうか。

 そんな事を考えていれば、対面の椅子に座っていた“二人”が立ち上がりにこやかな顔を向けて来た。


「態々、組合まで足を運ばせてしまい申し訳ありません。どうぞ、お掛けになってください」

「……失礼します……それで、今回はどのような事で?」


 アーリンが先に椅子に座る。

 俺たちもその横に座れば、不思議とふかふかの椅子だと分かる。

 綿でも詰まっているかのようにふかふかで座り心地がとても良い。

 俺が椅子の良さに感動していれば、アーリンは酒場であった領長に質問をしていた。


 領長は片手を上げて隣の人物に視線を向ける。


「今回、お呼びさせて頂いたのは此方のお方……フリード・ヴァーミリオン様からの“選定”を受けていただいて貰う為です」

「フリード・ヴァーミリオン……っ! まさか、人聖教(ニンセンキョウ)の大司教様であらせられる……」

「……ふふ、そんな大層なものではありませんが。えぇ、そうです。まだまだ若輩ではありますが。大司教を任されています」

「……選定って何ですか?」

「ちょっと、あまり無礼な態度は!」

「え? いや、選定って俺知らないし……」


 俺が気になった事を質問すれば、アーリンがキッと俺を睨む。

 俺は何かまずかったかと思ったが。

 質問をされたヴァーミリオン大司教様はにこやかな顔をしていた。


 純白といえるような真っ白な服を身に纏い。

 頭には少し大きい白い帽子を被っていた。

 服には金の刺繍が入っていて、彼の首からは金で出来たタリスマンが見えていた。

 人相はとても柔らかく穏やかそうで。

 青い瞳からは一切のよこしまな感情が見えない。

 帽子から見える黒髪には少し白髪が混じっていたが。

 大司教という地位にいるにしては、まだまだ年齢的には若そうに見えた……三十代後半かな?

 

 タリスマンからは神秘的な気配を感じて、少しだけ場の空気が浄化されているように感じる。

 一言で言うのなら、匂う筈の酒気がしないのだ。

 これがこのタリスマンの力なのかと思っていれば、彼はゆっくりと説明してくれた。


「選定とは、我々が探し求める人材を探す為の儀式のようなものですね……と言いましても、そう難しく時間を取るものではないのでご安心を」

「……何故、我々のような者に選定の儀を? 人伝に聞いた話では、それは教会内で由緒ある血筋の者にのみ行われると聞きましたが……」


 アードルングが説明する。

 すると、大司教様は「その認識で間違いはありません」と言う。


「……ただ、今回の場合はある意味で特例にあたりますので……領長様からお話を聞かせて頂きまして、是非、皆様に選定を受けて頂きたいと私からお願いをさせて頂いたのですよ」

「……そう言えば、大司教様はどうやって此処に来たんですか? 話を聞いたって言いましたけど、もしかして近くにいたとか?」

「――っ!!」


 アーリンが俺を睨む。

 殺気に満ちており口を閉じろと言いたげだ。

 別に失礼な事なんて言っていないと思うけど……。


「ふふ、良いんですよ……普段は“ラムティニア神聖国”内で聖職者の管理育成を行っていますが。領長様から急ぎの連絡を頂きまして、“転移結晶”を使い此処まで来ました」

「……!」

「へぇ、ラムティニアで……転移結晶って――いででで!!?」


 俺がまた質問しようとすれば、隣のアーリンが俺の脇腹を服事つねる。

 俺が痛みでもだえていれば、大司教様は「転移結晶は一瞬で遠い距離を移動できるものですよ」と言う。


 俺は涙目で脇腹を摩りながら、そんな便利なものがあれば使ってみたいと言う。

 すると、アードルングが何故かため息を吐いた。


「……転移結晶は貴重なものだぞ? それに、一度の使用で結晶は効力を失う」

「……高いってどれくらい? 家が建つくらいとかか? はは」

「……それ以上だ」

「…………マジ?」


 俺は目が点になった。

 家を建てる以上の価値がある転移結晶。

 それを使ってでも、この大司教様は此処へと来た……え、何で?


 意味が分からないといった目で大司教様を見つめる。

 すると、彼は笑みを浮かべながら真面目な口調で説明を始める。


「……選定の儀を行う意味。それは今は亡き勇者様の力を受け継ぎし存在を見つける事にあります」

「……それが私たちに関係があるのでしょうか。失礼ですが、我々の先祖にそのような高貴な方は」

「……可能性はゼロではありません。領長様から聞いた“調査記録”でその可能性が出たのですから」


 大司教様は笑っているが、その目は真剣そのものだ。

 話を聞いていた二人の表情も少し強張っていた。

 唯一俺だけがよく分からないからこそ、皆の顔を見ていた。

 

「……? 可能性が出たって……ま、まぁ兎に角調べるのに協力すればいいんですよね? だったら全然やりますよ! なぁ!」


 俺は二人の顔を見る。

 すると、二人は静かに頷いていた。


 大司教様はゆっくりと頷き感謝の意を示す。

 俺はそんな彼を見つめながら、ちょっとだけ心を“ワクワク”させる。


 物語で聞かされた伝説の存在。

 誰であろうとも知っている勇者様だ。

 その力を受け継いだ人間が此処にいる可能性があるだなんて……くぅ!


 やる気が出て来る。

 いや、やる気なんて関係ないだろうが。

 それでも、物語の主人公のような展開だと感じた。


 俺は鼻息を荒くさせながら、大司教様を見つめる。

 彼は笑みを浮かべながら、目を細めて俺を見つめる。

 何故か、両隣の二人からはワクワクをあまり感じないが……まぁいいさ!


 俺は今から始まる儀式を待つ。

 彼はそんな俺たちを見渡してから、ゆっくりと説明を始めてくれた。

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