ダマスカスブレード
1つのことだけ打ち込んで過ごしたい
1つのことだけ繰り返すと煮詰まる
1つだけでいきたい
1つだけでは生きられない
1つだけでゆきたい
1つだけでは進めない
ビルの谷間から見える
狭い空を眺めながら
あの頃はそんなことを思っていた
頑なで自信もなく
何をするわけでもなく
何が出来るわけでもなく
けれども夢は抱え
それに縋っていた
今よりもずっと若かった頃は、
透明な、輝く、純粋な姿でありたいと思っていた。
強く強く、硬く澄んだ結晶のようになって、
望むままに生きて進みたいと夢みていた。
今だから思い感じられる。
儚い脆さを誤魔化して、
頑なな強さを望んでいたのだと。
あの頃よりも弱く純粋ではなくなって、
代わりに脆さを手放した今は、
硬く脆く頑なな気持ちの代わりに、
幾らかのしなやかさを得たようにも思う。
澄みきった透明な水晶の、
宝石のようなその美しい姿と同じくらいに、
いつかとても美しいと感じた、
ダマスカスブレードに浮かぶ模様を想う。
美しく流れる木目のような、
複雑に織り成す金属が魅せる、
そのただひとつだけの景色。
純粋さではない代わりに、
脆さを手放したその金属は、
けれども美しい姿をもって、
今も自分を魅力し続けている。
-蛇足です-
昔、展示されていたダマスカスブレードナイフを、ある店のショーウィンドゥで眺めていたことがありました。
値段には、百万だったか二百万だったか、とても手が届かない値が付けられていました。
当時、ファンタジーTRPGの世界に出す武器などのデザインを考えるために、ナイフ雑誌などを買ったり眺めたりしていたんですね。
その中でも気に入ったデザインのものを参考にして、幾つかの剣を創作し描いたりしていました。
その頃に出入りしていた、海外商品などを取り扱う新宿の雑貨店でダマスカスブレードのナイフを見かけたのですね。
よく出かけていた、小説を買ったり海外書籍のデザイン集やファンタジー関連のイラスト集を手にしたり、悩んだ末に買ったりしていた書店ビルの一角へと、その店舗を構えていた幾つかの店のひとつでした。
タロット専門店や、化石の専門店などが幾つも並ぶその店のある場所には、ゲーム好きな友人と連れだったり、時には一人で散策を繰り返すよく出かけるところでしたね。
もう人にあげてしまった珪化木の置物や、パワーストーンであろう鉱石を卵型や球形に磨き上げてあったものを手に入れたり、無造作に置かれた水入り瑪瑙の原石などを買ったりしたのも、その雑貨店でした。
御守りの類いであろう首飾りや装飾品。
そうしたものを自作する勾玉や銀製品などを、デザインの参考とするために、興味深く見て回っていたのもそこでした。
ダマスカスブレードをそこで見かけたのはたまたまです。
正直ものすごく惹かれるタイプのデザインではないものでしたが、ブレードに浮かび上がる縞の模様は印象的でとても美しく、
ナイフの刃や柄のデザインは、四半世紀以上経った今でも、簡単に描けるくらいには思い出すことができます。
多分ナイフの姿を一生懸命に、それも目を輝かせて見ていたんでしょうね(笑)
近くに来ていた、店主らしき年配の人が声を掛けるまで、そのことには気づいていませんでしたから。
「手に取って見てみるかい?」
びっくりして、店主らしき人を見返してしまったのですね。
思わずとっさに「けっこうです!」とそう答えてしまいました。
拒絶したかったわけでもないのに、そう答えていたのです。
「けっこうです、か……」
ちょっと寂しげに残念そうに離れてゆく店主を見て、自分は答え方を間違えたと。
その時に感じた気持ちは、今もほろ苦い感覚で思い出せます。
好意で言って誘ってくれたこと。それをを強く断ったこと。
びっくりしたからとか、人と話すのが今よりも苦手だったからとか、
本当に好きなわけでないものを手にすることに気後れしたとか、
後から理由付けはいくらでも考えられますが、
あの時、正しく話せなかったという結果は変わりませんね(笑)
幾つも覚えている、些細な失敗のひとつ。
そんなダマスカスブレードのお話です(*^^*)
下の絵は上の文章の出来事の時期に描いていたものです。←大半は失くしていまいましたが、たまたま残っていた数点の絵のひとつですね。
こうしたデザインは、ラフも含め、数十点くらいは当たり前に描いて残しておりました。←当時、自分のゲームシナリオに出した魔法の剣などは、出した分だけ大抵を描いていたものです♪
上のものはあの頃の、そうした夢の名残ですね(*^^*)