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14.そっくりな洋館

 鉄男(てつお)達の船は荘内半島(そうないはんとう)へと近づいた。

 海面から十メートル程の高さに、別荘らしき建物があるのが見える。


「てっちゃん、あれ」

「あぁ」


 まだ間近で確かめないと分からないが、パッと見ではよく似ている。しかし、海上から目視できるとは、少し驚く。この近辺を通り過ぎる漁船などの人たちなら誰しも知っていそうだ。それこそ、伯父も知っているかもしれない。そんな場所に怪しい館を建てるのも考えにくいが、灯台下暗しとも言える。

 近くにあった船着場に、


「ここでいいか」


 鉄男が船をもやい綱で停める。


「もし、誰か来たらどうすんの?」


 (まもる)の問いに、


「何も悪いことしてないから、普通に言い訳はできる」

「え、鉄男さん。悪いことするつもりだったの?」

「いや、そんなワケないって」


 あの夢の中では洋館へ勝手に侵入して色々やらかしたなと、鉄男は苦笑する。だが、あれは不可抗力だ。それに、今回はそんな無茶はしないつもりだ。何も起こらなければ、だが。

 船着場から別荘へと続くコンクリートの階段があった。そこを登り終えると、百平方メートル程の芝生になった広場が目の前に広がり、その端に洋風の別荘が建っていた。

 やはり、よく似ている。三人が海に遭難して流れ着いた島で見た洋館と、外観が全くと言っていいほど、同じだった。


「鉄男さん?」


 めぐみの声に鉄男はハッとする。


「あっ、ゴメン。何?」

「ううん、何だか思い詰めた顔であの別荘見てるから」

「うん……めぐみちゃん、あの建物、どっかで見たことない?」

「うーん」


 と、唇に人差し指を当て、「ないと思うけど」


「守は?」

「オレもないな。てっちゃん、夢で見た間取りが同じだとか言ってたけど、外観も同じなワケ?」

「あぁ、同じだ」

「でも、夢ってそんなにハッキリ思出せれるものなのかな?」

「そこなんだ。夢ではないようにハッキリと鮮明に思い出せれるんだ。あいまいだったり、忘れてるところもあるけど」

「うーん」


 守とめぐみは腕を組んだまま頬杖をついた。


「ちょっと行ってみる」


 鉄男は洋館へと向かい出し、慌てて二人も追いかける。

 正面玄関の前まで来て、


「てっちゃん、ノックする気?」

「んー……ちょっと待って」


 と、裏へと回る。


「てっちゃん?」

「やっぱりな」

「やっぱりって?」

「この勝手口。ここが、俺たちがバールで割って入った所なんだ」

「えっ、鉄男さん、そんな悪いことしたのっ?」

「夢の中でだよ、バカ」


 と、守に頭をポンと押されためぐみは、「バカはないでしょ! 夢の中でも悪いことは悪いことなのっ」ムキになる。


「めぐみちゃん、ゴメン」

「あっ、ちがうの鉄男さん。悪いのはこいつなの」

「なんで、オレだよー?」


 犬も食わぬ夫婦喧嘩というものはこれかと、鉄男は微笑んだのち、再び正面玄関へと戻る。そして、


「ごめんください」


 呼び掛けてみた。が、シーンとしたまま何の気配もない。車も船もないので、誰もいないのかもしれない。鉄男が諦めて扉に背を向けようとした時、


『やぁ、こんにちは』


 突然、玄関の中から誰かの声がした。


「うわぁ」という鉄男の声に、守とめぐみも玄関へと戻って来る。「てっちゃん、どしたの?」「鉄男さんっ?」


 思わず尻もちをつきかけていた鉄男は、すくっと立ち上がり平静を装う。


「中に誰かいるようだ」


 すると再び、


『そこの君たち。待ちなよ。今、ドアのロックを外すから、入っておいで』


 間違いなく、玄関の中に誰かいる。


「ヤダ、誰? どこからしゃべってるの? 怖い」


 めぐみは守の腕にしがみつく。その声は何かスピーカーを通したような音声で、不気味に感じられた。だが、


「誰って、別荘の人なんじゃない?」


 野崎(のざき)家の別荘だ。家族や親戚、友人などがいても何らおかしくないのではと、守は考える。


「どうすんの、てっちゃん」

「俺は、入って確かめたい。守はめぐみちゃんと一緒に船へ……」

「あたしも入る!」


 つい今しがた怖がっていたのは嘘のように、行く気満々だ。やはりなと、鉄男と守が目線を合わせて苦笑っする。


「そう、危険はないはずだ」


 鉄男がそう言うと同時、ガシャンとドアの鍵が外れる音がした。


『さぁ、どうぞ』


 鉄男がドアノブを回し、三人は洋館の中へと足を踏み入れた。



   ◇



 洋館から少し離れた茂みの中で、猫が獲物を待つように、ジッと身を隠していたのは佐山(さやま)本郷(ほんごう)だ。


「おい、入ってったぜ。いいのかよ?」


 殺していた息を吐き、声を出した本郷。別に息ぐらい普通にしても、この距離ではバレないだろう。


「俺たちは、三咲(みさき)鉄男の動向を見張るだけだからな、あいつが何しようと構わない」


 佐山はそう言って、立ち上がると腰を伸ばした。自由に身動きが取れず、食事やトイレへも行けない。探偵の仕事も年齢的にきつくなってきたと、近頃思っている佐山だ。


「でも何ですんなり中入れたんだ? 鍵でも開いてたのか?」

「中に誰かいるんだろ」

「誰かって誰だよ」

「だから、誰かなんだよ。ここ別荘だろ、いてもおかしくないだろ、バカ」

「あ、そっか」

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