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不自然な成績3

よろしければ、お読み下さい。

「小テストだけ先生の監視が厳しくなかったとか?」

 私が思いついた事を言った。

「いや、それは考えにくいですね」

 周平さんが、即座に否定する。

「以前春奈達が話しているのを聞いたんですが、小テストでもしっかりと教師が目を光らせているそうです」

「そうですか……では、カンニングしようと思ったのが、つい最近とか?」

「うーん、何となくですが、初めて悪事を働いた時の緊張感があるようには見えなかったんですがね……」


 私と周平さんの会話を黙って聞いていた涼太君が、不意に質問した。

「春奈さんのご両親は、春奈さんの成績が悪いと酷く責めたりするんでしょうか?」

「最初はしかっていたようですが、最近は諦めたのか、たまに小言を言うだけのようです。……中学に上がる前までは、春奈の成績は良かったんですがね」

「そうなんですか?」

「ええ。春奈には陽太という二歳下の弟がいるんですが、以前は春奈の成績が良くて陽太の成績が悪かったんです。……それで、陽太は春奈と比べてしかられたりしていたようで……」

 周平さんの言葉を聞いて、涼太君はしばらく無言だったが、不意に言葉を発した。

「……そういう事か……」

「何かわかったの?涼太君」

 涼太君は、私の方を振り向いて答えた。

「うん、春奈さんは……カンニングなんて、していない」


「どういう事ですか、小峰さん」

 周平さんが、身を乗り出して聞く。

「春奈さんが小テストで満点を取ったのは、カンニングしたからじゃない。元々、春奈さんには満点を取る実力があったんです」

「え、でも、つい先日行われた期末テストの結果も良くなかったと聞いていますが……」

「わざと間違った解答をしたんでしょう」

「通知表に反映されるのに、どうしてそんな事……あ」

 周平さんが目を見開いた。ここまで言われたら、私にもわかる。

「……弟さんがしかられないようにする為……だったんだね」

 私は、目を伏せて呟いた。

「うん、普通は自分の成績を犠牲にしようとは思わないだろうけど、自分と比べて弟さんがしかられるのを見ていられなかったんだろうね……」

「じゃあ、春奈が友達と勉強会をしていたのは……」

「春奈さん自身も勉強していたんでしょうけれど、春奈さんは教わるより教える事の方が多かったのかもしれませんね」

 涼太君が、コーヒーを一口飲んで答えた。周平さんは、溜め息を吐いて呟いた。

「あの子やあの子の両親と、きちんと話し合う必要がありそうですね……」


「改めて、本日はお時間を頂き、ありがとうございました」

 店のドアの側で、私は周平さんに頭を下げた。

「いえいえ、とんでもない。小峰さんには春奈の抱える問題に気付かせて頂きましたし」

「あ、でも、僕の推測には根拠がほとんどないので、決めつけないで頂けると……」

涼太君が慌てて答えた。


 一人の客が店を後にする。その中年男性は、手に新聞を持っていた。それを目にして、周平さんは言葉を発する。

「……そう言えば、乃利子さんは当時、新聞配達の少年と仲良くしてたみたいですね。恋愛関係ではなかったようですけど」

「新聞配達?その少年の名前はわかりますか?」

 涼太君が真剣な顔で質問した。

「確か……久住昭彦といったかな」


 私と涼太君は目を見合わせた。実は、この店を出た後、久住昭彦に会いに行く事になっている。久住昭彦は、六十六年前の事件の第二発見者だった。


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