北区 1
北区、外れ、午後一時半。
少女は一面真白な雪原を眺めていた。
灰色の空は重く、冷たい。
彼女の肌は雪よりも白く、透明なレンズの眼鏡の奥に見える髪と同じ色合いのオリーブ色の瞳は、白と灰を混ぜた不思議な色を映していた。
俺には到底耐えられないであろう何もない景色を見続けることは、彼女にとって苦痛ではなかった。少なくとも、俺の知る限りでは。
「ネム」
呼びかけに、柔らかで肩より少し長い、瞳と同じ色の髪を揺らせた。俺を見上げる彼女からは生き物にあるはずの体温を感じない。創りもののような美貌。
「りょうちゃん」
どうしたの? 声には出さない問いかけが首を傾げるという形で伝わってくる。
「お前、やっぱりここにいるのな」
切り出し方がわからなく、ありきたりな言葉が口をついた。
ネムはもともと上がり気味の口角を小さく上げた。
「違うよ、りょうちゃんが私を見つけるのが、いつもここなんだよ」
偶然とは必然である。そんな言葉を思い出す。
遮るもののない、広い空間の隅っこに、公園にあるような木と鉄で出来たベンチが一つ。
背もたれの木板の一番上にネムの字で「ネムとりょうちゃん専用」と書かれた宣言も形として覚えてしまった。
けれど、この景色を見飽きることはこれから先もないだろう。
「そうかな」
戸惑いを混ぜたまま何へともなしに頷いて、手にしていたパステルピンクのショールを白いタートルネックのカットソーとツイード素材のパステルブルーのワンピースとグレーのタイツしか身につけていない薄着のネムに巻いてやる。
「あれ?」
左隣の空いたスペースに腰かけた俺をびっくりした様子で見た彼女の仕草はそれでもゆっくりだった。
「風邪引くだろ」
「うん。大丈夫。でもありがとう」
「どこかの誰かさんは感じないって言うけどな、俺が気になるから持ってきたんだ」




