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1-5 手続きはもちっと楽に

SIDEアルモストタウン・冒険者ギルド


…バルス王国の辺境にありつつ、人の行きかいがそこそこある都市アルモストタウン。

 辺境の地にあるということで魔物や凶暴な獣、他国からの間者なども潜り込みやすかったりするため、防衛のために冒険者は衛兵など腕っぷしが強い者たちが集いやすい場所でもある。


 そんな都市に配属されている冒険者ギルドの中では今、ある光景が冒険者たちをざわつかせていた。


「おい、あれが…辺境のほうで盗賊団捕縛の際に出てきたやつだと」

「うっそだろまじかぁ、絵本とかでしか見たことないんだが」

「というか、それがさらに…妖精が冒険者になるって本当かよ」


 彼らの視線の先にあるのは、ギルドの受付で手続きを行っている小さな少年…それが普通の人間の子供であれば、小遣い稼ぎを今からでも行いたいという少年心が見えるほっこりした光景に見えただろうが、ただの少年ではない。

 明らかにサイズが人間よりもはるかに小さく、うっすらと輝き、薄い羽根を動かして大きな羽ペンをどうにか扱って書いているのは…妖精という、おとぎ話にいるような存在。


 かなり大昔には普通に目にすることもできていたといわれているが、それからかなり長い年月を経た今では、もはやおとぎ話にしかいないような空想上の存在と言えるようなものが今、冒険者としての登録手続きを行っていたのだ。



「えっと…文字サイズは何とか、人間と同じぐらいにしたけど、これでいいのかな?」

「え、ええ。読みやすい文字で助かるけど…本当に、あなたが冒険者としてやっていく気なのかしら?」


 このギルドのベテラン受付嬢、万年婚活お局クイーンという裏異名をもつ受付嬢が、妖精の存在に驚かされつつも長年の経験でどうにか対応して、確認作業を行う。


「はい。妖精の身が人にとって珍しいというけど…妖精だって、冒険者になってもよさそうですからね。なので、登録をお願いいたします」

「なるほど…とりあえず、手続きはこれで完了。書いてくれた書類のほうも、不備がなくて、むしろ読みやすい字で助かるわね」

「道中、我々が文字を教えたが…あっという間に理解されたようで、支障もないようだな」


 と、そこで妖精を連れてきた冒険者ゴリレイオンおよびその他の冒険者たちがそう口にする。


「でも、字の綺麗さは皆さんより上ですね。普段、ニョロナマズののたうち回ったような字が多い分、こういうきれいな字は歓迎ですよ」

「「「うぐっ」」」


 受付嬢の言葉に、話し声が聞こえていた冒険者たちがうめき声をあげる。

 字の汚い冒険者も当然いるが、こうやって具体的な例を出されて指摘されると、自覚しているものほどなんとなく後ろめたくなるのである。

 何しろ、ニョロナマズは凶悪なうねうね動く蛇のような虫のような、何とも言えないピンクの巨大な魔物であり、気持ち悪い魔物リストにも連続トップスリー入りをしているようなものだ。それと同じような字と言われると心に来るのは無理もないのかもしれない。

 ならば、悪筆を直せばいい話だとは思うが、そうたやすく直せないものもおおいので、自覚しながらもどうしようもないというのが悲しい現状だ。



「さてと、それじゃ登録まであと少し手続きが必要だけど…ギルドカードの発行のために、血を一滴流せるでしょうか」

「血?」

「はい。ギルドでは冒険者の身分証明を表す『ギルドカード』を発行するのですが、本人と確実に証明するために、血を少しだけ入れて作成することになっております。偽造ができないように特殊な魔道具で生成されるので、証明書としてはかなり強く使えるのです」

「でも、妖精が流す血で足りるのかな…?」


 普通、カードを作るために必要な血は一滴だけで、作成するものは針を刺して血を垂らす。

 だが、妖精となるとそのサイズは人間よりも小さいので、流す量は足りるのか確かに疑問に思えるだろう。


「問題ないですよ。あくまでも規定が一滴なだけで、ものすごく少ないとしても本人の成分が入っているのであれば、作成が可能です。なので、こちらの血を吸わせる『吸血紙』にどうぞ」


 人間用に作られている針だと大きすぎるようにも見えるが、頑張って針の頂点で指を刺し、血が出たところで紙に吸わせる。

 量は明らかに人間よりも少ないだろうが、紙はピンク色に一瞬にして染まり、ちゃんと血が入ったことが確認された。


 その紙を職員が手に持って奥の方へ向かい、数分ほど待ったところで出てきて、受付嬢へ出来上がったカードを手渡した。


「では、こちらのギルドカードを発行いたします。冒険者としての道へようこそ、光妖精の『ラロン』さん。これから、冒険者として頑張ってくださいね」

「はい!!」


 そう言いながら、受付嬢が冒険者としての証明書になるギルドカードを妖精へ手渡し、この日、初めての妖精の冒険者が誕生したのであった…




無事に妖精が冒険者として登録された

これからどういう活躍をするのか、そもそも冒険者はどのような職としてあるのか

より詳しいことはまた後程…

次回に続く!!


・・・名前に関しては、次回説明予定

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