1-13 対人・対妖精
SIDE百手のアリシア
…うまいこと、模擬戦の話を持ち掛け、妖精の実力を自分自身で確かめる機会が訪れた。
数多くの書物で記録されている妖精に関しての話といえば、基本的に穏やかでほほえましいものが多いのだが、全てがそうではない。
中には妖精の怒りに触れたことで悲惨な目に遭う話も存在しており、その戦闘能力は未知数なところも多いのだ。
特に注意すべき点としては、妖精全般が有しているとされる『妖精魔法』と呼ばれるもの。
人が扱う魔法とは異なった存在のようで、一説では自然そのものと等しい力を有しているとまで言われている。
自然と言われて、それがどのようなものなのか、すぐに想像はつかない。
だが、自然の範囲に入っているものの中に自然災害…地震、雷、津波、大嵐などがあるため、下手をすれば災害そのものと同じようなものだと考えると危険度は非常に高いだろう。
幸いなことに、このアルモストタウンから流れてきている噂や現地での話を聞けば、そんな災害のようなまねごとは行っていないようで、あくまでも推測の範疇にとどめることができているということか。
いや、中には光線で魔物の頭やその他急所を貫くことをしていたという話もあるので、完全に危険性が取り除かれたわけではないが…なんにせよ、ここで戦えばある程度の情報を確認できるというもの。
「それでは、光妖精ラロンと百手のアリシア、両者の模擬戦をここで行うことにする!!どちらも準備は良いだろうか!!」
「ああ、良いよ!!」
「問題はない。いつでも、どうぞ」
考えている中、ふと現実のほうの声に戻されて、今の状態を改めて確認させられる。
ギルドの地下に作られている模擬戦場で、これから目の前の妖精と戦うことになるのだという事実を。
「ルールとしては、どちらかが降参の意思を示すまで、基本的に命を奪うことがないように注意して、戦うように!!それでは、両者とも、構え!!」
ギルドで審判を請け負う職員が声を出し、私と目の前の妖精はそれぞれすぐに動けるように身構える。
こちらはいつでも…王家でも数人しか習得できていないアイテムストレージと呼ばれる収納魔法を発動できるようにして、どの武器を使うのかイメージをしてすぐに対応できるようにしておく。
ああ、殺傷能力を抑えたいが、かなうならばより思いっきりやってみたいところがある。
人や魔物、そういったものとはまた違う戦い方が見れるだろうが…この待っている間のワクワク感がたまらないだろう。
「それでは、模擬戦…開始ぃいいいいいいいい!!」
「『フラッシュボム』!!」
「『暗煙弾』!!」
開始の合図とともに、私と妖精は動いた。
事前情報から光の魔法をよく扱っていることを確認しており、こういう対人戦の場では、最初に相手の視覚を一瞬だけでも奪ってくる可能性を考え、最善の一手を繰り出す。
暗煙弾、ほんらいは逃走用の目くらましとして使用される、光を使ってのものではなく光を奪っていく道具。
先手必勝とばかりにやってきた魔法だったようだが、瞬間的な光の力が強かったようで、ギラギラ太陽が照り付ける中でも効果を発揮する暗闇を提供してくるこの道具が、瞬時に打ち消された。
妖精側の表情を見るに驚いたようだが、それでもひるむことなく次の手に動くのが目に見える。
相手の力が未知数とはいえ、それでもまだ人里に降りてきた時期を考えると、戦闘経験ではこちらのほうが上回っている可能性があり、その利点を活かすのが勝利につながるので、その差を埋められる前に勝負を付けたいところ。
ならばここでやる手段としては、相手の動きを封じること。
人間よりも小さな体の相手ゆえに、大降りになりやすいパイルバンカーなどの道具は相性が悪いので、動きを制限できれば多少はやりやすくなる。
「掴め『ウッドスプリングショット』!!」
収納から取り出したるは、そこそこ大きな木製のガントレット。
速さのために軽量化を施すために金属製の頑丈さは失われてしまったが、高速で繰り出す手段としては最適解のはずである。
狙いをつけて側面のボタンを押せば、内部に仕込んでいる強力なバネが働き、撃ちだされていく。
その手には事前にべとべとに、本来ならば空を飛翔していく鳥の魔物相手を捕縛することができるトリモチがたっぷりついており、ちょっとでも触れればすぐにべっとりついて捕縛できるはず。
しいていうのなら、戻すために付けている糸の耐久力の不安ぐらいだが、狙いは寸分たがわず、妖精へ向かってトリモチたっぷりの木手が近づくが…そうたやすく事は運んでくれなかった。
「おっと!!」
「!!」
予想よりも素早く飛翔し、妖精のいた場所を空を切ってしまった。
ある程度の素早さを予想していたとはいえ、流石に軌道が読みやすいこれでは避けられるだろうが、待っていたのはその回避。
上下左右斜めと飛翔していくので、人と比較して機動力が段違いに高いだろう。
だが、だからこそ予想できる回避コースがあるので、そこに合わせて動けば良い話。
ダァァン!!
ブーツの底に仕込んだ弱めの爆薬に着火し、かなりの圧力を感じつつも姿勢を整え、吹っ飛ぶ。
予想していた回避ルートのうち、どうやら上のほうに逃げ込んだようで、一気に距離を詰めて手を伸ばす。
もちろん、先ほどの動きを見た後で、人の速度で捕らえられるとは思っていない。
ならばどうすればいいのかといえば、数で対抗してより回避の選択肢を絞ってしまえばいい。
「『トリモチガトリング』連射!!」
数が多い魔物対策として、その動きを拘束する先ほどのトリモチを弾に変えたガトリング砲を取り出し、狙いをつけて撃ちだしまくる。
回転は手漕ぎの人力だが、金属や磁石を利用したらでる火花を使い、小さな爆薬を着火して撃ちだしまくる構造になっているので、素早く回せば回すほどどんどん勢いよく放出される。
回避コースを限定させ、腕を伸ばして捕らえたいが、相手もこれはすぐに理解したようだ。
「『レーザースプラッシュ』!!」
撃ちだされるトリモチ弾に対抗して、細かな光の粒子が放たれたと思ったら、その粒の一粒一粒に触れたトリモチが爆発し、無効化される。
相手を打ち抜く光線を更に細かくした範囲攻撃のようで、こちらの技を読み切ってきたのだろう。
攻撃には回避を、追撃には迎撃を、相手の攻撃に対応した最善策を導き出す判断力はかなり優れているようで、見事な対応だと思う。
…でも、まだまだ経験は足りなかったようだ。
相手が光の粒子で防いでくるが、その細かな攻撃ゆえに、一撃が軽い。
しかも、絶え間なく撃ち込まれまくるトリモチに対応するための妖精魔法を使うがゆえに、動きが少しだけ制限されて、ほんのわずかな隙ができ…そこを狙う。
トリモチと粒子に紛れ、撃ちだしながら背中に仕込んでおいた後方強襲撃退用の補助義手を利用し、死角から武器を取り出す。
相手が二本の腕しか使えない人間だと思わないでね、妖精さん。魔物を相手に実験台にしまくるからこそ、思いもがけない攻撃が来ることもある。
だからこそ、こういう仕込み武器は用意しており、むしろ相手の攻撃を利用もさせてもらう。
「『鏡面散弾』」
「!?」
私の背後から急に飛び出した義手を見て、驚愕した顔になったようだ。
そこよりも、その手に持っている細かな鏡の破片に気が付いてほしい。
そう、『鏡』だ。今、君が出しているのはきらきらと輝く粒子だが、それらは全て『光』なので…
バシバシバシバシバシ!!
「----!!」
すべての細かい粒が鏡によって反射され、一斉に襲い掛かる。
トリモチの荒らしに加えて、自身の生み出した光にも攻撃をされて面を喰らったようだが、それでも見事な速さで回避を敷いたようだ。
しかし…その全てを読んでいたからこそ、ここでチェックメイトだ。
がしぃっ!!
「ぐえっ!!」
「…ゲームセットだ。どうする?」
「むー…残念、抑えられた以上、降参するよ」
「勝負、そこまでぇ!!勝者、百手のアリシアぁぁぁぁぁ!!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」」」
審判に勝利を告げられ、観客の冒険者たちが盛り上がりを見せる。
正直なところを言うと、相手の妖精が戦闘経験が豊富だったら、危ないところもあっただろう。
鏡の反射もより高出力の光であれば耐えきれる時に破損しただろうし、何なら防御を捨ててその速さで懐にもぐりこんできたり、殺傷しないほどの加減ができれば最初から強い光線で狙われれば勝ち目がなかった。
そう考えると、今回の勝利は運がいい方だが…ふむ、勝ったのは良いけれども、ますます興味がわいてきた。
今でさえ、その強さを誇るのならば、本格的に鍛えなおせばどれだけの可能性を秘めているのだろうか。
まず、その妖精魔法自体未知数なところも多いので、より詳しく見せてほしい、診せてほしい、魅せてほしい。
沸き上がる私の中の好奇心を、爆発させないように細心の注意を払いつつ、まずはお互いに良い勝負ができたことに関しての言葉を述べるのであった…
異世界転生異種族系主人公、勝利はそうたやすくつかめなかった模様
模擬戦の制約があるとはいえ、まだまだ経験に差があり過ぎた
このあたりのことも考えつつ…
次回に続く!!
…こういう勝負って、相手目線のほうが書きやすい様な




