プロローグ:転生先の選択は計画的に!!(もう遅い)
人間、魔物が多いけど、妖精ってあったかなと思って書いてみました
―――何か不慮の事故などによって異世界転生をするのは、ありふれたお話なのかもしれない。
だが、新しい生へ希望を持ちたいと考えるのであれば、異世界転生を夢見てもいいのだろう。
「だからこそ、その知識も少々あったとはいえ…まさか、自分が実際にその転生する立場になるとは思いもしなかったんだけど」
『こちらの不手際のせいで、本当に申し訳ございません…』
自分の体がない、真っ白魂の状態という姿の中で、目の前で手足の生えた青い球体が土下座をしていた。
『うちのほうの主神と、ある悪魔とのガチ喧嘩の余波で、下界に影響が出たせいで、あなた様は死んでしまわれたようなのです』
話を聞けば、自分がもともといた世界をつかさどる神様がいた。目の前の青い球体はその神に仕えている天使の一種らしい。
それでなんでこの状況になっているのかといえば、その神様と何かの悪魔の間で争いがあり、その余波で世界の中で様々な影響が出たことが原因だという。
影響としては大きなものだと地震、雷雨、大津波。小さなものだと連続タンス角小指激突、書類を受け取ろうとして紙で指を切りまくる、からし味噌を薬と間違えて背中に塗るなどのものがあった。
その中の一つに、どこかの国が秘密で打ち上げた人工衛星が爆発して、その破片が降り注ぎ…その破片が不幸にも直撃して、死んでしまったようだ。
トラック事故での異世界転生とかがありえそうだが、まさか衛星の破片で死んでしまうとは、人生分からないものである。
「というか、説明されても死んだという自覚もないというか、生前の自分に関しての記憶がないのですが」
『それも、うちのほうの馬鹿主神がやらかしまして…』
本来であれば、こんな事件を起こした時点で、その神のほうがまずは自分の前に来て謝るはずだったらしい。
だがしかし、慌てて自分でやらかしたことに関しての証拠を隠滅しようと動いちゃったようで、そのせいで自分に関する記憶が世界から消えてしまったらしく、そのせいで思い出せない状態になっているのだとか。
「うわぁ、最悪な奴じゃん」
『そうなんですよ。でもそれが上のほうのお偉いさんにばれてしまって、世界をつかさどる神から落とされることが決まりまして、それで仕えていた自分が臨時の神として出ることになって…どうにか処理を行い、こうして目の前に来たんですよね』
隠ぺいに走りまくった結果、余計に怒りを上のほうに買ってしまい、その結果しばらく姿を見ることはないようだ。しばらくといっても、神の時間間隔では100年…いや、上還るの激怒具合から察するに億年単位で確実に出会うこてはないらしい。
ちなみに、原因には悪魔もいるようだが、そちらは隠ぺいに走らずに素早く状況をまとめて報告したそうだ。
ある程度の罰もうける気はあったようだが、騒動の大本としてはどうもその主神のほうから喧嘩を吹っかけるようなことをしていたようで、非があまりないらしい。それでも、やらかした一因にはなっているから気が済まないということで、今回の騒動で消された自分がどうにかなるように、色々と手を回してくれたようだ。
『存在が消去された以上、元の世界への復活はできませんし、そのまま何も知らずに無へ還ることになっていたようです。ですが、それでは報われないということで、転生できるようにしてくれたんですよ』
「おいおい、主神よりよっぽど神らしいというか、ちゃんと責任をわかっている人…いや、悪魔じゃん」
『あれはあれで、特殊な悪魔ですからね…それでもまぁ、どうにか転生のめどが立ちました』
何も知らずに、上の存在の手によって消されるのは最悪だっただろう。
だが、その悪魔が頑張って手を回してくれたおかげで、転生する権利を得られらようだ。
『それでですね、このたびあなた様には転生の権利が与えられ、ある世界へ生まれなおしていただくことになりました。こちらの都合で振り回してしまった分、新しい世界ではできればいい生を歩んでもらいたいのですが…』
「何かあるような感じだが?」
『ええ、流石に人間が次の生も別の世界の人間として生まれ変わるには、今はちょっと厳しくて、別の生物への転生となってしまいます。一応、だいぶ人に近いものになれるのですが、そこが非常に申し訳なく…』
しゅーんっと落ち込むようにより青くなる臨時主神。
この事態はもともとの主神がやらかしたことだが、その賠償に動くには色々と厄介なしがらみ多くあり、うまくできない部分もあるらしい。
現在は神でも働き方改革が行われているようで、もうしばらくすれば解決できたかもしれないが、それにはまだまだ時間もかかるようだ。
「そのため、人じゃない次の生になるのか…うーん、まぁ、別にいいか。消されたのもあるんだろうけれども、人としての生には執着していないしなぁ」
むしろ、人外になるのならばそれはそれでいいのかもしれない。異世界転生もののお決まりの人外種族としては、モンスターとかエルフとかドワーフとか…人に近いものにはなるようだが、それはそれで違う生として楽しめそうではあるのだ。
『ありがとうございます!!もともとこちらのほうでやらかした不祥事なのに、受け入れてくださって。それでは、これよりその新しい生へ向けて、転生作業を行います!!』
そう言いながら、臨時主神はその手足をにょきっと増やし、何本かの手で包み込んだ。
『転生作業開始、肉体構築、魂戸籍の取得作業問題無し!!能力付与開始、言語伝達解析、即翻訳対応用意。…新しい生を、こちらの勝手で与えることになってしまい、申し訳ございませんでした!!これからの新しい生に、どうか幸あらんことを!!』
意識が失われ行くのを感じながら、自分の身は新しい世界へと転生されていくのであった…
『ふぅ…どうにか転生できたようだけど、次の生では同じような事故に遭わないように、見守らないと。ああ、そうだ。新しい生ですぐに不慮の事故で無くならないように、用意していたものもあったんだった…これもあとで、送らないとね』