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魔王と魔法使いはかくて勇者を殺し、世界を破滅へと導いた  作者: 変愚の人
第3章(ロックモール編)
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第26-5話



エストラーダ候の背中から伸びる、歪んだ幹。その先にアヴァロン大司教の上半身がくっついている。

その異形の怪物を見た時、私は激しい絶望と後悔に襲われた。



人を殺すのは、初めてだった。エリックと一緒に行動するようになってからも、私自身が直接誰かを傷付けたことは、ない。

だから、目の前にいた男が、どんな鬼畜であろうと……それを撃つことに対して躊躇がなかったかと言われたら、それはきっと、違う。


でも、それでも即座に撃たなきゃいけなかった。それが、こんな事態に繋がってしまったんだ。


「……プルミエールさんは、悪くないにゃ」


シェイド君が、呟いた。


「あの速度では、誰も反応、できないにゃ。それより、エリックを……」


「シェイド君!?」


彼が崩れ落ちる。その瞬間、激しい衝撃を私は感じた。


「きゃああっっっ!!?」


3メドほど、シェイド君ごと飛ばされただろうか。右腕の上が、激しく痛む。シェイド君は無事みたいだけど、それでもかなり身体を強く打っているようだった。


『……まだ加減が上手く行かないですね。当てたつもりだったのですが』


私は、アヴァロンの右腕……というよりは巨大な「幹」の風圧が、私を薙ぎ倒したのをようやく理解した。

……風圧だけであの威力?直撃なんてしたら……


いや、怖がってる場合じゃない。悔やんでる場合でもない。

シェイド君は限界だ。デボラさんは立ち上がったけど、右肩を押さえている。あんな短時間で、治るわけがない。


右手を曲げる。痛いけど、骨は折れてない。エリックを助けられるのは、私だけだ。


「シェイド君、デボラさんを連れて家に逃げて」


「家に?……ああ、そうだにゃ。了解にゃ」


シェイド君が、よろめきながら走り始めた。もちろん、ヴェルナーさんたちの支援という意味もある。でも、それだけじゃない。

カルロス君とメディアさんが隠れている地下室。そこには、崖の方に抜ける隠し通路がある。


多分、彼らはそれを使って逃げているはずだ。そして、直接戦えなくなったら、彼らに追い付き、守ってあげる。

ある程度状況が煮詰まった時にはそうすると、事前に決めていた。


『逃げるつもりですか?』


巨大な幹が、シェイド君に向けて振り下ろされる。



「させないっ!!!」



「魔導銃」が火を吹き、幹に直撃する。

それを破壊するまでは至らなかったけど、それでも大きく向きを変えることぐらいはできた。



ズォォォォンンッッッッ!!!



巨大な地響きが耳を突いた。



「助かったよ!!」



シェイド君と合流したデボラさんが叫ぶ。2人は、家の中へと消えていった。


『……そういうことですか。まあ、予定に変更はありませんが』


エリックはというと、激しくエストラーダ候の触手とやりあっていた。触手の攻撃は激しさを増している。……見るからに厳しそうだ。


「エリック!!!」


「来るなっ!!!お前も逃げろッッ!!!」


見たところ、アヴァロンとエストラーダ候は繋がっているけど、動きは独立したもののようだった。

細かい、無数の「枝の触手」はエストラーダ候。そして、幹による攻撃はアヴァロン。つまり、私がここを去れば……1対2でエリックは戦うことになる。そんなのは無茶だ。


「でもっ!!?」


「でももこうもないっ!!巻き添えを食らいたいのか阿呆がっ!!!」


そうか!エリックの「加速」は、10倍速以上だと周囲に被害をもたらしかねない。

彼が本当の全力を出すには、私は邪魔でしかないのだ。



でも、この怪物に果たしてそれが通用するの??



そもそも、アヴァロンの力量を私は……いや、私たちは見誤っていた。隠密魔法で気配を消し、シェイド君を囮に「幻影の霧」を当てる。その狙いは、見事に当たった。

でも、彼はあっさりと幻術から抜け出した。それだけ、彼のマナは膨大なのだ。


さっきから、アヴァロンは力任せの攻撃しかしていない。でも、これで魔法が使えたら……



私は、ふと「グロンド」が転がっていた地面を見た。……ないっ!!?



『早速ですが、まずはさっき逃げたスナイダ夫妻の娘と、亜人の盗人から消えて貰いましょうか。ついでに、メディアも。

『女神の雫』は大変惜しいですが、後で取りに行けば十分でしょう』



幹の先には……「グロンド」があった。……そんな。




「やめてええええええっっっっ!!!!!」




次の瞬間。別荘は、光に包まれて……消えた。





キャラクター紹介


「アヴァロン」


「エストラーダ」と一体化した姿。背中の辺りから生えた高さ4mほどの幹の先端に、上半身裸のアヴァロンがくっついた異形と化している。

そこからは腕のような巨大な幹が左右に生えている。「腕」の先端には枝があり、これで物を取ったりすることが可能。

自我を保っていられるのは、本人が持つ巨大な魔力による。なお、エストラーダから生えている枝は操作不能であり、あくまで動かせるのは幹部分だけである。

言ってみれば、2つの意思が1つの身体を共有し、それを分割して動かしているというべきかもしれない。


通常の攻撃手段は幹を使い殴るのみ。ただ、その攻撃力は計り知れない。

また、「グロンド」を手にしたことで強力な魔法攻撃も可能となっている。


なお、燃費は極めて悪い。

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