最初の答え『僕は手紙を読まなかった』
もう一個のほうです。
僕は興味を抑え、手紙を一思いにくしゃくしゃに丸めた。
この手紙が昨日の女の子からのものだとしても、僕はそういった事とは無縁なはずだ。
自殺をしようとしたことをエサになにか要求されるとしても、僕は自殺を恥ずかしいことなんて思ってない。
なにより、あんな状況で笑える人なんてまともじゃない。
関わらないのが吉だろう。
結局僕は、死に損ねた。
なんで死にたかったのかなんて、理由らしい理由なんてものはなく、ただ人生がつまらなかったからという曖昧なものだ。
昨日の夜のことを思い出し、顔をしかめる。
あの子はなんだったんだろう。
どうして僕の邪魔をしたんだろう。
「・・・・・・あ」
そこまで考えて、気付く。
この学校の屋上は普段は閉鎖されている。
僕は昨日職員室から鍵を盗み、屋上に行っていたのだ。
その屋上に入るための扉の鍵を閉め忘れていたことに気付いた。
どうする・・・?閉めに行く・・・?
いや、放課後直ぐに行くのは誰かに見られるかもしれない。
今夜また忍び込んで、その時に閉めよう。
いや、いっその事、今日死のう。
いつ死んだっていいんだ。
僕はただ、退屈な人生をやめられれば。それでいい。
・・・・・・・・・・・・・・・
「さて、この質問で何がわかるのか。という話をしよう」
「なあに、そんな深刻なことがわかったりはしないよ。君がどういう人なのか、とかそんなアバウトなものさ。強いて言うなら自分を見つめ直す為の質問かな」
「大丈夫。なんてことの無い質問さ。君には関係ない。あるとしても、ちょっとだけさ」
・・・・・・・・・・・・・・・
放課後。
ガヤガヤと騒がしい廊下を歩く。
人と人の間をすり抜けながら玄関へ。
下駄箱に上履きを放り込み、自分の靴を履く。
早足で玄関から出ようとした時だった。
「センパイ。手紙読んでくれなかったんですか?」
誰かから話しかけられた。
いや、この声は聞き覚えがある。昨日の女の子だ。
振り向くと、昨日と同じように、ニンマリとした笑みを浮かべた女の子がいた。
「ひどいですよ。せっかく早起きしてセンパイの下駄箱に入れたのに。」
そんなの、知ったことか。
君は僕を邪魔したじゃないか。
僕は彼女を無視し、玄関から出る。
「せっかく面白いもの見せてあげようと思ったのに。」
「・・・はぁ?」
なんなんだこの子は。
面白いもの?それは君にとって面白いものであって、僕にとっては面白いとは限らないだろ?
思わず振り返ってしまった。彼女はすぐさま僕の側まで走りよってきた。
「興味あります?」
「・・・ないよ。というか、なんなんだ君は。昨日から僕の邪魔ばかりして」
「・・・そんなつもりはありませんよ?ただ不思議に思っただけです」
不思議?僕から見たら君の方が不思議だ。
「まあいいです。どっちみち面白いものは見れますしね」
ぺろっと舌を出して笑う彼女に、僕は嫌悪感を抱いた。
本当になんなんだこの子は。
初対面の僕に何をさせたいんだ。
我慢の限界になった僕は、踵を返し校門へ歩き出そうとした。
その瞬間だった。
「え・・・・・・?」
目の前に、人が落ちてきた。
世界がゆっくりと動く。
制服だ。この人は学校の生徒だ。
髪が長い。女子生徒か。
両手を広げている。頭から真っ逆さまに地面へ向かっている。
そして、僕と目が合っている。
この子は、高速で落下する中で、僕の目を見ている。
それはたったの一瞬だった。
でも、僕は見た。
彼女は、僕を見て、笑っていた。
どちゃり 、ぱきっ
生々しい音と共に、僕の目の前に彼女は落ちてきた。
首が折れ、手足はあらぬ方向へ曲がり、皮膚から突き出た骨が太陽の光を反射し淡く光る。
遅れて彼女の周りを囲むように血が流れ出る。
どくどくと、ドロドロと。
その血は僕の足元にまで流れてきて、僕の靴を赤く汚した。
「・・・・・・あ・・・え・・・?」
僕は口から出る声にならない声を漏らすしか出来なかった。
なにが、起きた・・・???
人が降ってきた。
僕の目の前に。
なぜ・・・?
僕が叫ぶよりも早く、周りの生徒たちが悲鳴をあげ始める。
その悲鳴で、我に返る。
はっと気付き振り返ると、
「ね?面白いもの、見れたでしょう?」
と、僕に向かってにんまりと、悪戯な笑みを浮かべている。女の子がいた。
・・・・・・・・・・・・・・・
「なんだい。その顔は。君が選んだんだろう?それなら文句はないだろう。」
「この質問が、どういうものかわかったかい?」
「何度も言うようで悪いけど、君には関係ない。ただ、君が何を見るのかは、君次第だ。」
・・・・・・・・・・・・・・・
最初の答え『僕は手紙を読まなかった』
選択肢でお話進めるとかやったことないのでがばがばになりそうですが温かい目で見てやってください。