表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

最初の質問「手紙」

お待たせしました。第一話みたいなやつです。かなり特殊な書き方をするので、読んでいただける皆様を少し混乱させてしまうかもしれませんが、どうにか頑張っていただけたら幸いです。

前作と同じようにプロットなしから思い付きで始めたシリーズですので、どうか生暖かい目でご覧ください。

「やあ。私の声が聞こえるかい?うん、なら結構。」

「大丈夫。落ち着いて。突然のことで混乱しているだろうが、何も問題はないよ。」

「さて、君にはいくつか質問したいことがあるんだ。ん?私かい?はは。私が誰かなんて、君にはどうでもいいことだ。君にとって今重要なのは、これから私が聞く質問に君がどう答えるかだよ。」

「こちらとしてもすまないと思っている。でも君のためなんだ。わかってほしい。」

・・・・・・・・・

「うん、ありがとう。じゃあさっそくだけど、一つ君に質問をしよう。」

「君は、自分の気持ちに正直になれるかい?」

「ああ大丈夫。ゆっくり考えてもらって構わないよ。口に出さなくてもいい。答えは頭の中で思い浮かべるだけでいい。」

・・・・・・・・・

「うん。なるほど。あぁ、今の質問は特に意味はないから安心してくれ。」

「今のはほんの練習だよ。これからが本番だ。さて、準備はいいかな?」

「よし。では最初の質問だ。」

・・・・・・・・・




虫のせせらぎは、僕にとってはただのうるさい雑音だった。

人との会話だって、僕にとっては無駄な行為だった。

他人との関係だなんて、僕にとっては無縁なものだと思っていた。

僕は一人、毎日静かに過ごして、いつか人知れず死ぬ。

それが僕の人生だった。

はずだ。

長い長い人生の中で、記憶に強く残る出来事は何だろう。

死ぬ間際に垣間見る走馬灯は、いったいどんな記憶を見せてくれるのだろう。

誰かに見向きされることもなく、人知れず死のうとしている僕には、いったいどんな記憶が残っているのだろう。

空を見上げると、真っ黒な世界の中に、ぽつりぽつりと光る星が見えた。

死んだ人は星になる。いつ聞いたかもわからない迷信を思い出す。

誰もいない校舎の屋上で、僕は小さく息をつく。

肌にまとわりつく生ぬるい風が、気持ち悪い。

雲一つ見えない夜空は、これから死ぬ僕を受け入れてくれるだろうか。

意味も理由もなく死ぬ僕を、許してくれるだろうか。

「ねえ。」

聞こえるはずのない、声が聞こえた。

屋上の柵に手をかけ、乗り越えようとしている僕の背中に、誰かが話しかけた。

僕は、振り返ってしまった。

僕の後ろにいたその人は、不思議そうな顔で僕を見つめていた。

少しの間沈黙が続いた。

僕の手は柵から離れていた。

「やめちゃうの?」

僕をじっと見つめていた少女は、また不思議そうな顔で僕を見つめている。

「君は・・・誰・・・?」

我慢ができなくなった僕は、聞いた。

そして少女は、答えた。

「知りたいの?」

何でもない退屈な一日。

僕以外の人にとっては、過ぎ去る日々の中の一ページ。

だけど僕にとっては、強く記憶に残る一ページだった。


彼女のおかげ、というより彼女のせいで、僕は自殺をやめた。

次の日、僕は昨日のことは夢だったかもしれないと思いながら、家を出た。

「いってきます。」

誰かが聞いてくれるわけでもない言葉を残して、扉を閉める。

住宅街にそびえたつ高層マンション。

「はぁ・・・」

その最上階の部屋に一人暮らしをする僕は、今日も景色を一瞥してため息をつく。

特に意味なんてないため息。

いや、今回のに関しては意味があったかもしれない。

昨日の少女は誰だったのだろう。

僕のことを知っていたのだろうか。

様々な疑問が脳裏をよぎる。

でも深くは考えない。

きっとあれは夢だ。

そう信じて僕は、僕自身の通う高校へと向かった。


昨日のことは夢じゃなかった。それはわかっていたことだ。

だけど、さらにそのことを強く印象付けることが起きていた。

学校の玄関、僕の下駄箱の中に手紙が入っていた。

差出人は不明。ただ真っ白な便せんが、僕の上履きの上にのせられていた。

続々と生徒たちが登校してくる中、僕は誰にも見られないようにその手紙を鞄へ滑り込ませた。

誰かが僕を見ているわけでもないのに、僕はずっと何かにおびえていた。

自分じゃない誰かに、見られているような気がして。


退屈な授業を、窓の外を見ながら流し聞く。

この時間が終われば昼休み。僕以外の生徒たちは、友人と昼食をとったりするだろう。

でも、僕は違う。

視線を机に落とすと、雑に開かれた教科書とノートの上に手紙が乗っていた。

中身を読むべきか、僕はずっと迷っていた。

これを読んでしまうと、僕はいつも通りの退屈な日常を失ってしまう気がした。

授業が終わるまであと十数分。

僕の席は窓側の一番後ろで、目の前には体の大きい男子生徒がいる。

手紙を読んでも、誰かに見られることはない。

だから、読むなら今だ。

・・・本当に、読んでいいのだろうか?

僕は、この手紙を・・・


・・・・・・・・・

「さて、君の答えを聞こうじゃないか。ああいや、言わなくていいよ。さっきと同じように思い浮かべるだけでいい。」

「ああ、そうだ。これだけ伝えておこう。」

「この質問の答えがどうであれ、君には特に関係ないことだよ。」

「そう。『君には』関係ない。」

「だから・・・」


君の好きに選んでもらって構わない。


「この後に続く質問もそうだ。君が好きに答えを選んでくれ。」

「何度も言うが、その答えは君には関係ない。」

「その結果がどうあれ、君は悔やむ必要はないし、気に食わないのであれば答えを変えてもらっても構わない。」


さて、君はどうするのかな?



最初の質問

「僕はこの手紙を・・・」

【読んだ】【読まなかった】




どもども。鈴ほっぽです。

さて、前作とは違ってがっつり作風が変わり、驚いた方もいるのではないでしょうか。

今作は一話一話を短めに書いていく予定です。

その分更新も早いかもしれないね。早いといいね。がんばれ。

お察しがついている方もいるかもしれませんが、今回は選択肢を用意してみました。

どうぞ皆さまのお好きなように進めてください。

次回から分岐していくので、選んだほうをお読みいただければと思います。

では、最後まで読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ