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ゆりばら  作者: 上村熱
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姫男子と腐女子は敵対関係にある?

現代日本ではオタク文化はそれなりに理解されるようになってきた。中学1年生の頃は教室でラノベを読んでいるとクラスメイトたちのドン引きされている視線を感じたが中学3年生になるとそういった視線はパリピ女子たちのみに限られ、布教の努力もありオタク仲間もできた。そんな過去のもはや栄光とも言えることを思い出しながら俺は電車に揺られている。新しいオタク仲間、できる気しねぇなぁ…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



不安に押し潰されそうになりながら高校から1番近い駅で下車すると俺のもとにショートカットの目鼻立ちは整った女が走ってきた。

「相変わらず朝からキモオタみたいな顔してるわね」

中学の卒業式振りに会うというのにこんな辛辣な挨拶をする女は千代田神楽。この春から通う私立東和高校で唯一のオナ中であり今は敵対関係にある。失礼極まりない挨拶を華麗にスルーし俺はオタクトークを始めた。

「昨日の『歴史部!』はもちろん視聴したよな?」

『歴史部!』というのは今期から2期が始まった超人気アニメだ。男女4人がタイムスリップし歴史の謎を解き明かしていくという内容だ。

俺らは目を合わせると

「なぎあずは至高!」「ゆうよしは至高!」

なぎあずとは『歴史部!』に登場する超絶美少女の渚と姉さん肌の部の参謀、梓。この2人の話してる姿が尊すぎて俺はもちろんのこと全国の姫男子に衝撃を与えた。

ゆうよしはダメダメ主人公の勇気と部のまとめ役、義村のカップリングが腐女子からしたらやばいらしい。

「は?百合とか今の時代廃れてんのよ!私の前でなぎあずのことは語らないでもらえるかしら」

「百合をバカにするな!腐女子だって社会からはだいぶ引かれてるぞ?」

「腐女子が経済を支えてるの知らないの?姫男子ってあんまりお金使わないわよねー。だからあんまり公式で百合カプは推されないのよ!」

中学時代、『歴史部!』を通じて知り合って以来、俺らはこうやって議論する仲とはなったのだが神楽にはオタク仲間がいるのに俺にはいないんだよなぁ…。

教室に着いた俺は席に座り、オタク仲間の新富さんと話す神楽を見て純粋に羨ましく思った。

どこかに百合好きのオタクいませんか!!!!


ーーーーーーーーーー


授業が終わり、昨日の『歴史部!』を見直すため俺はすぐ帰ることにした。クラスメイトたちは皆、部の体験入部にでも行くのだろう。俺は部活に興味が全くないしアニメを見る時間を削るわけにも行かないので絶対に入らないと決めている。

「あんた、部活入らないの?」

退室しようとする俺を神楽は俺が今、何を考えているのかをわかっているかのように聞いてきた。

「そういうお前はどうすんだよ。マネージャーとかやんのか?」

偏見ですが運動部のマネージャーになる女は全員腐女子だと思ってます。はい。

「女子空手部に入るつもりだよ」

俺は中学時代、神楽に足が遅すぎて足も心を腐ってるんだなと本人に言ってしまったことがある。それくらいこいつは運動音痴だ。

「お前、運動音痴だろ」

俺は一応、無謀な神楽の挑戦を止めようとした。しかし、神楽は『歴史部!』のアニメ化が決まった時と同じかそれ以上の笑顔で

「楽しい3年間になりそうなの!」

そう答えた姿から、千代田神楽という人物は何か高校でやりたいことでも見つけたのだろうと俺は電車を待ちながらそんなことを考えていた。っていうか足遅くても空手はできるな。心無いことを言った謝罪の代わりに俺は神楽にメールで一言、空手がんばれよとだけ送信した。


俺は家に着いてからも神楽のことを考えていた。別に好きとかじゃないんだからね!! ただ俺と同じように帰ってアニメが見たいという思考になるはずの神楽がBL妄想の目的で運動部のマネージャーをやるなら理解できるが女子空手部に入部すると言うのだ。俺は最初は素直にやりたいことを見つけたのだろうと思っていたが今は何かあるに違いないという確信がある。明日、学校で新入生歓迎会が開かれ、そこで部活動紹介が催される。そこで部活なんぞ全く興味が無い俺だが、女子空手部だけはしっかりと話を聞こうと決め寝ることにした。


ーーーーーーー


今朝は駅で神楽を見かけなかった。俺は昨日から某動画投稿サイトで公式から投稿されている『歴史部!』のOPを聞きながら教室へと向かった。

「昨日、『明日、真相を暴いてやる!』ってツイートしてたけど一体何?中二病なの?」

神楽は入室したばかりの俺のとこへ来て唐突に聞いてきた。

「まぁ、いろいろあんだよ」

この真相というのはもちろん、神楽が女子空手部に入部すると言い出した件についてだ。正直に答えたら変な勘違いをされそうなので俺は適当に答えたわけだがそんな俺を見て神楽は何か気づいたかのように目の色を変えると

「ちょっと付いてきて」


ーーーーーーー


「屋上ってアニメだけの世界だと思ってたわ」

神楽に言われるがままに付いてきた俺は屋上に来ていた。

「昨日知ったの。すごいテンション上がったんだから!」

「ところで何のようなんだ?」

俺は屋上にいるという今の状況に興奮しつつも、神楽の行動が全く読めないため話を切り出した。

「私がどうして女子空手部に入部するのか、気になってるんでしょ」

こいつ、エスパーだ!! 俺の考えてることどうしてそんなわかっちゃうの?

「ま、まぁな。お前が空手とか似合わねぇし」

俺のセリフを聞いた神楽は童貞の俺ならもちろんのこと、ドキッとくるような笑顔で

「誰にも言わないでね」


ーーーーーーー


部活動紹介はスムーズに進んだ。俺の通う私立東和高校はそこまでスポーツに力を入れている学校ではないが、どの部活動紹介もすごく凝ったもので新入部生が欲しいという熱意はとても伝わった。どこにも入るつもりないけど。

そんな中、女子空手部だけは違った。神楽が入部するという女子空手部の部長、永山愛宕は新入生部生は募集しないと言ったのだ。周りで話してるクラスメイトの話によれば(もちろん直接話したわけではない)部員は永山愛宕のただ1人。永山愛宕は市内で有名な空手道場の娘らしい。さらにクラスメイトの話によると永山愛宕の同級生や昨年の入部希望者は皆、部長となった永山愛宕の考える厳しい練習に耐えていける気がせず辞めていったらしいのだ。そこで屋上でのやり取りを思い出す。誰にも言わないでねと言われたこと、それは空手部だけど空手をしてないということだった。

「末広君だよね? 神楽ちゃんとオナ中の」

部活動紹介が催された体育館から教室への帰り道で突然話しかけてきたのは茶髪で制服をまだ入学して3日だというのに着崩しているギャルなのだが神楽とオタク仲間だという新富さんだった。

「ぶつぶつ何言ってたの?」

「こ、声に出てました?」

初めて話すとはいえ同級生なのに敬語になってしまった。ってか今の声に出てたってまじかよ俺…。

「あたしもね、女子空手部入るんだよね」

「ど、どうして入るんですか?」

おそらく、神楽から誘われたのだろうけど女子空手部についての詳細が聞けるかもしれないと質問してみた。

「えへへ、それ聞いちゃう?」

突然、気が抜けたような幸せそうな顔になった新富は俺が返事をする間もなく

「あたし、永山先輩に一目惚れしちゃったの〜!」

俺の中で百合魂に火がついた。新富東明と永山愛宕のカップリングで『とうあた』だな。語呂悪っ!


教室に帰ると俺は神楽から全部話を聞かせてもらった。新富は永山愛宕に一目惚れしたことを勇気を出して神楽に相談したそうだ。そこで神楽は空手部に入ることを提案した。というわけなのだが。

「で、なんでお前まで入るんだ? あと練習が厳しくて皆辞めてくって」

そもそも永山愛宕は新入部生を募集しないと言っていたが

「私と東明ちゃんはもう入部許可貰ってるわよ」

やっぱり、こいつはマジでエスパーなんじゃないの?と俺は本気で思っていると

「あたしたち、空手なんかしないよ〜!」

話を聞いていたのか近くで他のクラスメイトと話していた新富が俺らのところへやって来た。

「じゃなんだ、永山愛宕のお世話係か?」

俺はもう段々めんどくさくなってきて何も考えずに適当に返事をした。

「永山先輩も空手やんないのよね」

女子空手部が謎すぎて俺はもうこの件は忘れようと決心した。

「そしたらあんた今日、女子空手部の部室に来なさいよ」

神楽からのわけのわからない提案に俺は忘れようと決心したはずが部室におじゃますることになってしまった。

こんにちは。上村熱と申します。今回初投稿になります!今後、気ままにこの小説を続けていこうと思います!感想等お待ちしています。

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