6話
――――……‥‥
「我は魔界八幻王、最後の将ジェ。この人間界を我の知恵と力により、新たなる魔界としようぞ!!」
うん、やってみるものだ。幻王二~七迄は倒した事になっている。
「さあ、最終決戦だ!」
「ゆ、勇者様! 奴は歴代の勇者達でも一時的に封印するのが限界だった魔王……。お気を付けください!!」
――小便臭いピンクのフリフリ娘曰く、私は正真正銘の勇者だという事だ。ナイスガイでありながら勇者とは、私も罪な男だ。
「俺も戦います! 厨二文学の力を吸収した彼是で、奴の動きを封じます!(俺だって、勇者になってやるんだ……っ!!)」
――制服の学生くんは乗り移っていた幻王を倒したのに、変わらず気色悪い。
「勇者サマー、拙者モー本気DE戦ウノ気持チでぃーす! カメ〇メ波ッ!!」
――誰だ、コイツ。
保険の営業、高校の存在、幻想世界……様々な伏線を全て忘れ去り、今はただ目の前の脅威に立ち向かうのみ。私達の力を用いて、世界を救うのだ。
「行け! 男子高生!」
「……それな(落ちていた石を拾う。ジェに投げる。当たる。痛い)」
「行け! メンヘラ小便魔術師!!」
「メラ★ゾーマ!!」
「行け! よく分からん奴!!」
「ヘイユー! 日本人ハ米ヲ食ぅーえィ!!」
ポケ〇ン的なノリの彼等から壮絶なる猛攻を喰らうも、其処には無傷の魔王が居た。因みに、見た目は小栗なんとか旬だ。イケメンなのが私の怒りを増幅させる。
「‥‥‥まあ待て。少し我の話を聞け」
魔王は反撃するでもなく、顎に手をあてがいながら語り掛けてきた。いちいち恰好がイケメンでムカつく。
「我は魔界の知識を授けに来たのだ。争う気は無い。我の知識により、この原始的な世界に革命を齎すのだ。それによる混乱を防ぐ為、この世界を新たなる魔界として我が統治してやろうというのだ。どうだ? 悪くない話であろう」
その言葉にメンヘラが噛み付く。因みに、よく見たら貧乳なので私は興味を失っている。D以上無ければ乳とは認めない。
「騙されないで! そんなの嘘よ!」
悲鳴に近い拒絶の声を、魔王は嘲笑いながら問い掛ける。
「……そこの少年」
「え……お、俺?(立ち上がる)」
「我の知識を一つ授けてやろう……まず、左足を一歩前に出せ」
男子高生は困惑しながらも、言われるがまま左足を恐る恐る前に出した。
「よし、次は右足だ」
「……こ、これは!?(驚き)」
にやにやと笑う魔王に反し、男子高生は震えながら叫ぶ。
「ま、前に進んだぞ!?(驚き×100)」
「そう、それが我の世界では皆出来る当たり前の事……“歩く”だ!」
「「「ナ、ナ、ナンダッテーーー!?」」」
……うん、何だこれ。
「更に、左足を曲げ……右足を曲げる!!」
「こ、これは! 浮いてるー!!」
そんな訳あるか。
……しかし、現にふわりふわりと浮遊する男子高生が其処に居た。