5話
「何だかよく分からないけれど、助かったわゴー★ジャス」
「すまない、それは私の名ではなく伝説の超絶面白宇宙海賊の名だ。忘れてくれ」
小便美少女は不思議そうに首を傾げながらも、制服少年を介抱すべく駆け寄っていた。少女が何かブツブツと呟くと少年の体から光が溢れ、みるみる傷が癒える。
「嗚呼……小便少女ありがとう……。自宅へ向かおうとした所で意識が朦朧として……。ホイミ的な行為で復活したよ!」
ホイミか。それなら納得だ。癒しを与える究極の回復魔法だ。
……しかし、この文明社会に『魔術師』とは。アレか、手相見て壺とか売る類いか?
「あっ、そうだ……悪いけど、さっきの能力を返して貰うね? 早く勇者様を探して、その能力を渡さなければいけないの」
アレか。何だか分からない有難い幸せとか授けた代わりに返して貰うとは、金か?
「すまないが、私には妻と子が居る! あと夜はキャサリンちゃんが待っている! 故に、君には返せない!」
「え……ちょ、ちょっと待って! 勇者様に人間界を助けて貰わないと!」
もしや、勧誘か? 宗教的な勧誘か? 私は神頼みなんてする他力本願な軟弱者は好かん。
「良いか? 人はそんなに弱くない。助けるなんておこがましい。こんな能力に頼らなくとも助かるに決まっている! 人間を舐めるな! まだ助かる! まだ、がすかる! マダガスカル! そーれっ、こーこ! マダガスカル!!」
手の速さは一級品な私だ。瞬時に光り輝く地球儀を取り出し、少女にその力を解き放つ。
「ウォンチュー! 君のハートに、レボ★リューション!」
全ての景色を掻き消す金色の光を発すると、私はそそくさと逃げ出した。地理感覚を身に付けた私は無敵だ。無敵要塞ザイガスだ。
進行速度が予定より大幅に遅れているので、とっとと高校へ行こう。
「くっ……この凄まじい威力……まさか、あの人……が……」
――私はまたしても大変な事実に気付いてしまった。
絶大なる能力を手に入れたりナンヤカンヤで短編小説と呼ぶには微妙な文字数となってきた。更に、先程倒した幻王は“八”幻王の一人なのだ。そう……色々なパターンの相手で遊ぼうと、勢いとノリで八にしてしまったのだ。
困った私は打開策を考えた。一休さんか私かという程に閃きに掛けては自信がある。兎にも角にも、時間も無いので打開策を発動させよう。
「ウォンチュー!」
そう私が叫ぶと、空間が歪み地球儀が出現した。それを“ランチャー”と呼ばれる器具で高速回転させるのだ。
「3、2、1、ゴーーシュートッ!! いけ! オレのヴァルキリー!!」
あっ、ヴァルキリーとは何か尖った青いベイだ。知らない人は『ベイブレード』で検索すると「ふーん」ってできるだろう。
別にコレは地球儀だが、気分が大事だからそう言ったまでで意味は無い。
まあ、そんなこんなで地球儀をものっそい回した。スーパーマン理論で“時間”を進めるのだ。