2話
――――……‥‥
「ねぇねぇ、空斗ぉ~、お家まだぁ~?」
「そう、空斗。俺の名は鳳凰院空斗。どこにでもいる普通の高校三年生。父は探検家で海外に。母は二年前、突如姿を消した……否、ご近所さん曰く、黒尽くめの男達が家の周りをウロウロしていたらしい。きっと、何かある。そんな俺は、昼は普通の高校生をしつつ夜は闇探偵として生きている。まあ、そんな感じで家には大概俺一人。料理の腕前も自然と上がり、今ではプロ級だと皆から言われるけれど、俺はいたって普通の高校三年生だ」
「ねぇねぇ、さっきから何を一人でブツブツ喋ってるの~? 気色悪いよ。かなり。とてつもなく」
「あっ、悪い悪い! つい、俺エピソード語っちゃった★」
「――俺は天空より舞い降りた小便臭い自称≪天才美少女宮廷魔術師≫と出会った。
『幻想世界を脅かす魔物達が人間界へと攻めてくるので、人間界にいる勇者の力を目覚めさせる為にやってきた』と云う胡散臭い事を言ってきたのだが、林家なんとかパー子を彷彿とさせる格好もあり、ご近所の目を気にした俺は自宅へと連れて行く事にしたのだった」
「ねぇねぇ、だからさぁソレ気色悪い。何を語ってるの。誰に語ってるの。それと、小便臭いって何」
「嗚呼、また心の声を口にしてしまった。隠し事ができない性格だからなぁ(ォィォィ」
空)さて、早速自宅へ行くか
小)え、え、ちょっと待って
空)どうしたの?
小)いや。。。何この違和感!?
空)ああ、今流行りの小説スタイルさwww
小)あの。。。伝説の。。。
空)そう、台本書きってやつさ(座る)
小)あと、この【小)】って何?誰!?
空)小便臭い女(立つ)
小)て、てめぇ。。。
空)・・・。(座る)
小)天才美少女宮廷魔術師って設定に着目しろや!
空)・・・。(立つ)
~自宅到着~
ピンクの少女が震えながら全身全霊の力をその拳に込め、空斗を殴り付けた。
「何なの、この混沌な流れ!」
「こんとんじょのいこ」
「えなりぃぃぃ!!」
「まあ、取り敢えず黙って部屋に入りなよ」
「何気に会話形式のみで進行している!? 登場当初にスラッシュ乱発させていた私ですら戸惑う流れ!!」
「~空斗の部屋~」
「いや、移動してないから家の前だから! アンタが『~空斗の部屋~』とか喋ってるだけだから!」
「――月日は流れ、十年後」
「流れてないし! もう混沌過ぎる!」
「こんとんじょの……」
「えなりぃぃぃ!! かずきぃぃぃ!!」
「――時は幕末」
「ちょっとベタな設定の異世界転移なアレだけど、舞台は現代だし! あといい加減に止めて! 台本書きとか台詞形式とか、物書きさん達が御怒りになるッ! 会話形式は対話のみで情景描写とか放棄してるからぁぁぁ!!!」
――さて、保険の営業をすべく高校を目指していた私だが、ある重大な事実に気付いてしまった。
私は絶望的に方向音痴なのだ。樹海のコンパス並みだ。高校へ辿り着くと云う天竺を目指すかのような難題が立ちはだかる。
そんな衝撃的展開に悩みを馳せていると、何やら男女の言い争う声が聞こえてきた。これでも私の耳は良い方で、ご近所では聖徳太子の生まれ変わりではないかと噂になる気がする。