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episode2:ロマンチスト・エゴイスト 2

 「で、何があったの?教えてくれよ」

 「1本くれたら話す」

 俺は笑いながらタバコを差し出しだ。

 彼女はそれに火をつけてフーッと煙を吐くと、重々しい口調で喋り出した。

 「前に言ったでしょ。例の友達、あの子が彼氏と揉めちゃってマジでめんどくさいのよ」

 「ああ、相談風ノロケ自虐自慢がウザいってやつ?」

 「そうそう。席近い……じゃなくてゼミが同じで毎日構うのが限界なんだ……」

 「無視すればいいじゃん」

 「……わかってないなぁ。それが出来れば苦労しないっての」

 俺は女同士のこういう関係が好きになれない。そして女性に「わかってない」と言われるのはもっと好きじゃない。


 「なあ、それって相談なの?愚痴なの?」

 俺は恐る恐る聞いてみる。

 「んーどちらかといえば愚痴かな。だってどうしようもないし。私ってずうっとこのままこんな風に周りに流されるままなのかなーって」

 それは相談じゃないのか……心の中でツッコミをいれた。

 ますます悩ましいが、一応さっき聞いた将来についてのことと話が繋がった。

 要はこの子は自分の性格ゆえに面倒ごとがあって、それを変えたくても変えられないってことか。

 確かに相談のようで愚痴だと思う。俺は嫌なことがあると耐えるよりもそれから逃げてきた人間だからわからない。しかし、この子はそうじゃない。真面目だなぁという呑気な感想しか出てこない。


 「明日は明日の風が吹くってさ、嫌な気分の時っていつまでも嫌な状況が続くんじゃないかって思うけどさ、案外時間が解決してくれるときもあるんだよ」

 俺はあまり上から目線にならずに気分がよくなるようなことを言った。

 「…………」

 彼女は納得したような、していないような複雑な顔をした。

 「…………」

 俺も何を言ったらいいかわからない。


 会話のない時間が進んだ。静寂、というよりも沈黙がこの喫煙所を包み、俺は苦しくなった。どうやっても相手が何を考えているのかわからない。あっさり帰るのも手だが、逃げたくもない。

 ああ、こういう時モテる男というのはどんな対応をするのだろうか、そもそもモテるやつならこんな流れにはならないか。


 逃げ道を探すようにキャンパス内の風景を見ると、俺は暗闇にもぞもぞと動くものを見つけた。

 野良猫だろうか、いや、明らかに大きさが違う。

 あれはもっと大きい、人のようだ。

 しかも例のトイレの前だ。俺が久しく侵入していない女子トイレ。

 その上、明らかに女性ではない大きさの影だ。黒いパーカーに黒いズボン。闇夜に紛れて今まで気づかなかったが、たまたまそのあたりを注視していたからこそ気がついた。

 ちなみに俺は人に説明するのが下手くそだ。なのでこれから起こったことは彼女に説明してもらうことにしようと思う。バトンタッチ!

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