episode2:ロマンチスト・エゴイスト 6
代打、俺。
俺たちは喫煙所に戻ると、一服しながら今後を話し合うことにした。
「とにかく警察に行こうよ」
彼女はすこし興奮気味に言った。
おいおい、確かにそうなんだが、いや、しかしだね。彼女は知らない事だが、俺はすごく後ろめたい。俺は自分がつい最近までしていた事を思い出した。
「とりあえず、大学内で起きた事だし守衛さん言っててみようよ」
俺は自分のことを棚に上げて言った。
どの口が言うんじゃ、と心の俺は言っていたが、それはそれ、これはこれ。いつの間にか許せないという気持ちがある。変態にも品格というものがある。やっぱり実害があるものはダメだ。
「うん。行こう」
彼女も快諾してくれたので、正門の脇にある事務室に行った。
藤棚を抜けて、大講堂の横を通り抜けると、正門の脇には事務室がある。ここには24時間、守衛が待機している。
俺たちは窓口の呼び鈴を押し、暇そうにしていたオッさんに声をかける。守衛は「こんな時間に……」と一瞬不思議そうだった。
しかし、訳を話すと警察に電話することになった。
やっぱりそうなるよね……。
俺はなるべく事を大きくしたくなかったが、もう止められない。
第一発見者として話を聞くために、俺たちは待つことになってしまったのだ。
ああ、すまん、黒服の男。でも実害が出る君の方が悪いんだぜ…。
俺はなんとも居心地の悪い気分で警察を待った。
10分としないうちに警官がやってきた。正門から来たのは、1人が太った中年で、もう1人はひょろっとしたメガネの青年だった。
「えーとまず状況を聞こうか」
中年の警官は優しそうな声で言った。
彼女が我先にと答えた。
「そこの喫煙所でタバコ吸ってたんです。そしたら全身黒ずくめの男、たぶん身長は170ぐらい。体格は……暗くてよくわからなかったんですが、そいつが女子トイレに入っていったんです。彼と2人でそれを見守ってたらすぐに出てきて、ほんとすぐです。うーん」
「3分ぐらい」
俺は口早に言った。
「そう、そのくらいで出てきて、走り去りました。正門から出てったみたいなんですが、そのあとは分かりません」
「うん、それで?」
中年の警官が話の続きを促す。
「それで、いかにも怪しいってことで私が確認したんです。そしたらこれが」
彼女は、青年の警官が手に持った芳香剤を指さした。
「なるほど」
中年の警官は言った。青年の警官に何か耳打ちすると、手帳とペンを取り出した。
その後は、事務的な会話だった。その変質者について服装や、正確な時間、あと例のトイレまで案内して、どの個室だったか、など。彼女は興奮気味にさっきの状況を克明に語った。
「ありがとう。後は我々で責任を持って捜査するよ」
その後、俺たちは正門前の事務室に戻り、今回の騒動は一応の決着がついた。
が、今夜はこれだけで終わらなかったのだ。
寒すぎて頭が回りません。元気下さい。




