ハードルが余計に上がりました
更新が遅くなり申し訳ありません。
少々魔界の設定の矛盾を修正しておりました。
「これが『ヘイムガガプ』と呼ばれている。次元の裂け目です。これを通り抜ければ魔界に入れます。」
案内役のクロが説明してくれる。
目の前には筋雲が浮いており、その真ん中に猫獣人の目のような形の裂け目があり、向こう側の景色が見えている。
ここを通り抜けるとシロさんのニヴルヘイム国に着き、そこから西に向かうと今回の目的地であるヘルヘイム国に到着する。
「コレって常時、このままなのかい?」
実は魔界との戦争が始まるまで、魔族どころか魔界の存在もほとんど知られていなかったという。
「そうですね。あの橋が存在する限りはこの状態のままでしょうね。本当は1年に数度開くだけのものだったのですが先代のヘルヘイム国のクロロゲン王が何度もこじ開けるうちに癖がついたようで1度開くと数日間は開きっぱなしになるようになり、勇者が魔界に攻め入る際にかけたあの橋の所為で閉まらなくなっているんです。」
「そうよ。あの橋にはミスリルが網の目に組まれていて次元の干渉を防いでいるの。」
ユズさんが詳しげに補足を入れてくるところをみるとこの橋を作ったのはアレクサンドラ様のようだ。
「初めは次元の裂け目に逃げ込んだ魔族を追いかけて、ギリギリのところでレイピアを振るったのよ。一撃が入り次元の裂け目に挟まった魔族の息の根は止まったんだけど、レイピアも刃の部分を残して削ぎ落とされてしまって。そこで閃いたのよね。ミスリルが次元の干渉を受けない金属なのだと。どうも魔力の塊みたいね。」
「そうなんでしょうね。クロロゲン王が次元の裂け目をこじ開ける際にも両手に純度の高い魔力を流し続ける必要があったと記録に残っていますから。今は馬車が通り抜けれるほど開いていますが、初めは人1人が通れるくらいだったとか。うっかり、次元の裂け目に触れてしまった獣人が即死したと聞いています。」
まるでシロさんだ。
もしかして、隷属の首輪を外した後は触れられなくなったりしないだろうか。
イヤイヤイヤ。それよりも普通にエッチできるのだろうか?
痛いと思わせたら即死。
下手くそと思われたら即死。
酔っ払ってキスしたら即死。
なんか延々と高いハードルが待ち受けている気がする。
そんなことを考えていると眠れなくなりそうだ。
次元の裂け目を潜るとそこは緑に覆われた平原だった。
「本当におかしいですね。この辺りはいつも雪に覆われているはずなんですけど。」
案内役のクロは不思議そうな顔をしている。
「そうよね。『トンネルを潜るとそこは雪に覆われたニヴルヘイム国だった』なのに。」
何だろう。そのフレーズは。トンネルというほど長さは無かったけどなあ。
「それにここから奥に行くほど酷くなる威圧感が全くみられません。馬車のなかに入っていても感じたのに。」
本当に王の心理状態によって国々の気候風土に影響が出るのだろうか。
シロさん1人でも大変そうなのに後の5人も常に幸せにしていなければならないなんて無理じゃないだろうか。
いくら魔族は一夫多妻制が普通でも嫉妬くらいする。
商売人だから人の気持ちを読むのは得意なほうだし、ユズさん以外は感情を表に出すタイプだから問題ないに違いない。だが100年後、王が裏後宮から国に戻ったらどうなるのだろう。
「ねえユズさん。100年間裏後宮で各王と関係を維持していくのは良いとして、それ以降はどうするの?」
「えっ。そんなこともわかって無かったの? あれだけ緻密な推理を展開してくれたモーちゃんらしくない。」
「近未来は今ある材料でもある程度の推測は成り立つと思うけどさすがに100年後となると無理です。」
「てっきり、モーちゃんは私の頭の中が読めると思っていたんだけどなあ。」
全然、説明してくれなくなったと思ったら、そんなことを考えていたなんて。
「ユズシェル様。モーちゃんが貴女の頭の中を覗けるならば、大半がボーイズラブの妄想ばかりで卒倒してますよ。」
「それもそうよね。リオーナ。上手いことを言うじゃない。私の頭の中は9割方妄想でできているからね。」
認めるだけならまだしも、9割方なんて言い切ったよ。この女。
「まあいいわ。教えてあげる。貴方が裏後宮に引き留めて王たちに魔界へ通って貰うのよ。今の里帰りが頻繁になる感じかな。」
「ということは、僕は今回の旅でヘルヘイム国の方々にそのことを含めて理解して頂かなくてはいけないということですよね。うわぁ、ハードルが余分に上がった!」




