胸をさらけ出していました
今日、初めての授乳の時間のようだ。ミーちゃんがお腹を空かせたようなのでニャオンさんに合図を送る。僕は当然、御者台の方へ移動・・・させてくれない。
その敏捷性で持って馬車に飛び乗ってきたニャオンさんは僕ごと馬車の中に入り込んだ。
「お願いがあります。私のオッパイを吸ってください。」
「へっ。」
一瞬頭の中で何を言われたのか理解出来なかった。
もしかして、そんな視線を向けてしまっていたのだろうか。
「イヤイヤ・・・あの・・その・・それは・・・。」
沸騰する頭で言葉を紡ごうとするが上手くできない。
「あの違うんです。私の乳首がへこんでいて、いつもミーちゃんが余りミルクを飲んでくれないので、吸い出して欲しいんです。」
「ああ乳頭陥没症なのね。道理でミーちゃんが小さいと思ったわ。」
隣で聞いていたユズさんが納得したように言った。
「ユズさん。乳頭陥没症って何ですか?」
「彼女みたいに胸を押さえつけるような職業の人に多い病気なんだけど、その名前の通り乳首の先がへこんでしまうものなのよ。普段は支障ないんだけど、子供に乳を飲ませるときに支障が出るみたい。彼女が言ったみたいに旦那さんが吸い出してあげればいいだけよ。」
「母もそう言っていたんです。新しい旦那さんが出来たんだから、吸い出して貰えって言われました。」
あの女将さんか。僕は雇い主であって旦那さんじゃないんだけどなあ。
「あのう・・・僕がですか? 同性同士のほうが良くないですか?」
はっきり言って衆人環視のなかで乳首を吸っているところを見られたくは無い。
「ダメよ。乳首に匂いがつくのよ。私たちの匂いではミーちゃんが嫌がると思わない?」
触るだけでも嫌がるんだから、彼女たちの匂いがついた乳首じゃあ。ソッポを向きそうだ。
いいのかな僕が彼女の乳首を吸っても。やっぱり拙いよ。
「早くしなさい。ミーちゃんが泣いているわよ。」
ミーちゃんの悲痛な鳴き声に後押しされて、恐る恐るニャオンさんの乳首を咥えて吸ってみるがすぐにへこんでしまう。何度もやっているのだが上手くいかない。
「違うわよ。私の乳首を吸ってくれたときのように舌で転がすようにするのよ。あれだけ感じさせれば乳首は固くなって自然と前に飛び出すわ。」
この人には恥ずかしいという概念は無いのか、夜の閨での内容を克明に言葉にしてくる。
めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。
「早く。貴方には実力があるのだから、間違いなくできるわよ。」
そんな励ましはいらないです。
やっぱり、仕返しだなこれは。
15歳のガキに泣かされ、感じさせられたことに根を持っているんだ。
言われた通りにすると乳首が立ってきてくれた。
やっとお役ゴメンだ。
「おっと、反対側の乳首もしなさい。片方の母乳だけでは足らないかもしれないでしょ。」
その通りだ。ミーちゃんごめんね。
僕が隣に移った途端、ニャオンさんがミーちゃんを乳首に持って行くとすかさず咥えついて凄い勢いで母乳を飲んでいる。
もう一方の乳首も立たせ、さらに隣の乳首も咥え・・・。
危なかった。
隣にはニャオンさんと同じように胸をさらけ出しているリオーナさんの姿があった。道理で少し垂れて、色も黒ずんでいると思ったんだ。
「何をしているんですか! リオーナさん。」
僕は顔をあげて睨みつける。
「モーちゃんの実力を見せて貰おうと思ったんだけどダメかな?」
「ダメです。勘弁してくださいよ。公爵様に殺されます。」
「いいじゃない。死に戻ってくるんだから。」
「そういう問題じゃないでしょ。早くしまってください。」
「だって。クリスティーナ無理みたい。」
「えっ。」
さらに隣で顔を真っ赤にしながらも同じように胸を出している公爵令嬢が居た。
そんなに恥ずかしいのなら、出さなければいいのに。
マジで危なかった。こっちは先っぽはピンク色でニャオンさん並みのボリュームがあり、あれがすぐ隣に並んでいたら間違って咥えていたところだ。
なんてことをするんだ。この親子は。
どうせリオーナさんがやらせたんだろうけど。
そこで公爵令嬢と視線が交わる。
視線を外さなきゃ外さなきゃと思いながらもコントロールができない。
早く胸をしまってくださいお願いします。
笑わないでください口角をあげると何かを企んでいるようにしか見えませんから。
はいはい。悪かったです。
お仕置きでもなんでも受けますから、クビだけは勘弁してください。
理不尽さを感じながらも心の中で必死にお願いする。
「あのう・・・。」
助かった。後ろからニャオンさんが声を掛けてくれる。
まさに蛇に睨まれたカエル状態で動けなくなっていたのだ。
「は、はいなんでしょう。」
この危機を脱出するためだったら何でもします。
「余ったミルクを吸い出して頂けませんか?」
「はい?」
まさか、僕が物欲しげに見えた?
「あのですね。母が余ったミルクはすべて吸い出さないと病気になるから、旦那さんに吸い出して貰えと言われているんです。」
「なるほど、乳腺炎ね。赤ちゃんは飲みながら呼吸をするから、口内のばい菌が乳の中に戻ってしまうの。だから、赤ちゃんが飲み終わったら、吸い出してあげないと病気になったりするんよ。」
ええっ。もう一度、衆人環視のなかでニャオンさんのオッパイを吸う必要があるんですか?
「酷いときには高熱が出て、赤ちゃんにミルクもあげられなくなるから、早くしてあげて。」
僕がグズグズしているとユズさんから催促がかかる。
僕にも都合というものが・・・はいはいわかりました。
僕がバカだったです。
必死に羞恥心を捨て、両方のオッパイからミルクを吸い出す。
ミルクは濃厚で懐かしい味がした。
それなのに、また隣で胸をさらけ出していた親子がいたことは言うまでもない。




