13(リサ視点)
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「リサ」
「あ、申し訳ありません」
咎める様に叔父様に名前を呼ばれ、私は慌てて謝罪しました。
ラクと二人きりなら兎も角、叔父様達がいらっしゃる場で本心を出して良いこと等ひとつもありません。
今回の原因がロバート兄様の愚考から来るものだったと分かったとしても、私は大人しく叔父様達をたて控えめにしていなければならないのですが、ジュリエンナ何故叔父様の前に出て行くの?
「お父様、お兄様のせいよ。私にこんなドレスを贈って、私が悪いんじゃないわ全部お兄様のせいだわ」
ジュリエンナの一言で私は貧血をおこしそうになり、ラクの腕に縋ってしまいました。未婚の女性として褒められた行ないとは言えませんが、何かに縋っていないと意識を失いそうだったのです。
「お兄様が悪いのよ」
今の話のどの辺りにジュリエンナに非が無いと言い切る要素があったというのでしょうか。私は貧血でふらふらし始めた体でラクの腕に縋り「どうしたらいいの」と呟いてしまいました。
「お前さあどこまでお目出度い頭なの」
ラクに支えられどうにか立っていた私は、ラクの一言で追い打ちを掛けられてしまいました。
私の不用意な一言がラクの導火線に火を点けてしまったのでしょうか。
狼の獣人は伴侶となる相手を一途に想い大切にするのだとラクに聞いた事があります、その言葉通りラクはいつだって私を大切に守ってくれていました。だからこれも私の心痛を思っての発言だと思います。
「ラク駄目よ」
私を思うラクの気持ちはとても嬉しいです、嬉しいのですが時と場合に寄ります。どうしてこの場でこの発言をするのでしょう。これでは叔父様への宣戦布告と同じです。
獣人嫌いの叔父に向かってこんな発言をしたら結婚に反対されるどころか、私と他の貴族との婚姻を勝手に用意しかねません。
「ラクシュミリアン・フォルキンスッ!! 貴様」
「失礼を承知で言わせて貰うけれど、この女の愚行はあんた達のせいだよ。それ分かって俺を責めるなら責めればいいさ。自分がやった事を理解もせず、他の奴が悪いと言い切る思考って貴族としても人としても最悪だと思うけど」
「最悪ってどういう事かしら、私の何が悪いのよ」
ジュリエンナの発言は衝撃の一言でした。
先程クラウビィン侯爵に謝罪したのは何だったのかと今すぐジュリエンナに問いただしたくなっている私の気持ちに彼女は気がついてもいいのではないでしょうか。
先程ジュリエンナは確かに考えなしだったとクラウビィン侯爵に謝罪していたのに、あれは口先だけの謝罪だったのでしょうか。
「なあ、俺一刻でも早くお前をあいつから引き離して国に連れて帰りたくなったんだけど」
ラクが私の耳元で囁いた不穏な言葉に一瞬同意しかけて、でも思いとどまりました。
両親が認めてくれているのですからラクと一緒にこの国を出て結婚することはできますが、私はジュリエンナに私の結婚を祝って欲しいのです。
我が儘で自分勝手な人ですが、それでも私の大事な従姉妹で友達なのですから。
「ごめんなさい。ラク、今は無理だわ」
「ま、そう言うだろうな」
知ってたよ。とラクは小声で言った後「良いか悪いかの判断も、どうしてそれをやったら悪いのかすら分からねえ子供がデビューしてもいいのか? こんなのでも大人の仲間入りができるなんて獣人の俺には理解出来ないな」と大声でジュリエンナに喧嘩を売り始めました。
「なんですって」
ラクの挑発にジュリエンナは金切り声を上げ始めました。
元々仲が良くない二人です。このまま放っておいたら大喧嘩に発展しかねません。
「ラク駄目よ、ジュリエンナを刺激しないで」
いつものラクならこんな挑発めいた事はしません。私がいくらラクを怒らせ様としてもにこにこ笑って流してしまいます。そんなラクが怒っているのは私の為ではあるのですが、実はちょっとだけ嬉しいと思っていますが、でも叔父様やジュリエンナとの間に波風を立てるのは得策ではありません。
「ジュリエンナ落ち着いて、あなただってさっき自分が悪かったと認めて謝罪したでしょ。ロバート兄様の行為は短慮だったかもしれないけれど、それだってあなたを思っての事だわ」
発端はロバート兄様から贈られたドレスでも、ジュリエンナが短気をおこさなければ済んだ事なのだと理解してもらうにはどうしたらいいのでしょう。
「まああんたの短気のお陰で得した人も一人か二人いるみたいだけどな」
「ラク?」
「どういうことかしら」
「一人は未定だけどねもう一人、ブラン様はあんたの短気のお陰で意中の相手に二番目のダンスを申し込めたみたいだよ」
にやりとラクは意地悪そうに笑ってジュリエンナを見つめました。
ブラン様が二番目のダンスを? 一体誰に?
「二番目のダンスをブラン様が、誰に申し込んだというのっ」
真っ青な顔でジュリエンナはラクに詰め寄りました。
扇を持つ右手がブルブルと震えています。ジュリエンナの想いがブラン様に届くのは難しいだろうと誰もが思っていても、ジュリエンナ本人は状況を微塵にも理解しておらず。
自分こそが二番目のダンスを申し込まれるのだと信じていたのですから、無理もありません。
「誰だと思う? 彼女は嬉しそうにブラン様の申し出を受け入れていたし、勿論フィオリーナ嬢も心の底から喜んでいたよ。殿下が用意してくださるお揃いのドレスを着て二人はパーティーに出るんだってさ」
悲しむジュリエンナの姿が余程嬉しいのか、ラクは喜々として余計な情報まで教えてくれています。
でも、ブラン様のお相手はどなたなのでしょう。フィオリーナ様が喜んでいて、そして今日のパーティーに二人お揃いのドレスを着て出席する。
それは、つまり。
「ブラン様のお相手はラビニアさんなの?」
ブラン様とラビニアさんがそんなに親しいなんて、今まで聞いた事はありませんでしたが。
そうなのでしょうか。
「正解」
私の問いに答えるラクは、打ちひしがれるジュリエンナの姿に満足したのか清々しい程の笑顔でした。




