読書/スーザン・トラヴァース『外人部隊の女』 ノート20161008
スーザン・トラヴァース『外人部隊の女』実話感想文
スーザン・トラヴァース著『外人部隊の女』高橋佳奈子/訳 新潮社2003年
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【粗筋】
実話である。
英国上流階級出自の著者は、裕福だがギスギスした家庭で育ち、すさんだ少女時代を過ごした。少し経つと気候穏やかなフランスのリゾート地に一家は移住。ほどなく寄宿学校にやられる。修学旅行はイタリアでいきずりのプレイボーイに処女を捧げたが、それっきり。その後もろくな男が現れない。卒業後は、社交界、テニスのおつきあいでうんざり。やがて大戦が始まると、フランスはナチス・ドイツに降伏。家族は行方知れず。ナチス協力内閣ビシー政権が発足すると、ドゴール将軍が英国に亡命政権を立ち上げ、自由フランス軍を立ち上げた。スーザンは自由フランス軍についたアフリカ・植民地に渡って、まずは看護師になった。自動車免許を持っているので、従軍医師の送迎運転手を経て、前線司令官ピエール大佐に出会う。大佐には家庭があったのだが、魅力的で、恋に落ちる。
アフリカ戦線では、あの「エル=アラメイン」で、ロンメル元帥率いる、かのドイツ戦車軍団と交戦。天性の直観で、地雷原突破、敵爆撃機の爆風をかわし、恋人であるピエール大佐の命を何度も救う。大佐は軍功を重ねて将軍、ドゴール政権での国防大臣にまでなる。
どこにいても、居場所がなかったスーザンを、はじめて優しく迎えてくれたのが、外人部隊だった。将軍となったピエールや、仲間たちのために運転手をした。そして大戦が終わるころには、准尉に昇進。宿敵ロンメルを尊敬する、心優しい男たちが、ひとりまた一人と戦場にちっていく。
戦争終結近く、ピエールとの仲が気まずくなって、破局。しかし世界最強と呼ばれたフランス外人部隊に唯一の女性兵士として留まることを許可される。戦後、落ち目になったフランスは、つぎつぎと、海外領土を失っていくのだが、その戦闘にはドイツ人が主体を占めて行ったので通訳や庶務職員として勤務する。
大戦が終わるころ、夫になる人物と出会う。子供が生まれたのと夫が戦争に嫌気がさしためやむなく外人部隊を除隊。やがて家庭をもつころ、数々の軍功から、スーザンはパリに招待され、レジオンドヌール勲章(日本でいえば紫綬勲章に相当)を得た。そのとき、胸に勲章をつけてくれたのが、永遠の恋人・ピエール将軍だった。
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【所見】
エンターテイメント映画のような、驚愕の生涯! 序説と本文16節で構成される。9-279頁、500字×二段組み×270÷400字≒400字詰原稿用紙700枚相当。




