読書/北杜夫『星のない街路』 ノート20161007
北杜夫 『星のない街路』 感想文
北杜夫 『星のない街路』 1958年ごろ
朗読 辻 萬長、 新潮CD、新潮社2003年
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【概要】
ドイツ留学から戻ってきたばかりの心理学者・相場均の話を元にした。当時、渡航許可は著しく制限されており、外交・留学・学術調査以外かなわなかった。ゆえに執筆当時、著者は一度もベルリンを訪れておらず、細やかな街路の再現は、相場との会話から引き出したものだという(医師・作家、なだいなだ談)
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【粗筋】
終戦直後、ドイツは四か国統治という状態にあった。資本主義陣営三カ国占領地域は西ドイツで首都をボンに、共産主義陣営ソヴィエト(ロシア)占領地域は東ドイツだ。首都ベルリンは東ドイツの中にあって、さらに町は、国土と同じように四分割され、東ドイツをソヴィエトが占領していた。
主人公・間宮は、ベルリン在住の高名な心理学者に会うため、そこを訪れた。町は線引きされ、各国駐留軍が実効支配している。爆撃で荒れた町を散策していると、東ベルリンから逃亡してきた17歳の少女と出会う。文無しだったので居酒屋に誘って食事をおごった。ちょうど娼婦でも買おうとしていたところで、進駐軍下士官を相手にしていた、初老の娼婦を介してホテルで一夜を共にする運びとなった。その際、少女は、身分証を落としてしまった。少女は娼婦ではないので金を要求しない。初老の娼婦にいわせれば、傷つかない程度の贈り物をしてやればいいよ、という話。雑貨でストッキング2枚とバス代だけをだしてやった。
間宮は身分証明書を拾ったのに忘れていて数日遅れで少女の居処に届けに行く。少女は収容所に住んでいて、そこから、町にでて来る日も来る日も職探しをしていた。そして身分証明書をなくしたので、警察に逮捕され、再発行までの間、警察で拘留されることになった。収容所管理人にいわせれば、そのままにしておいても、少女は戻って来られるだろうという。だが、義侠心から、間宮は恋人で婚約者だといって、釈放を少し早めた。
胸の内としては、日本に連れて帰りたいところだが、国際事情や留学生である自分の立場から連れて帰ることはできない。少女もそのあたりは理解している。間宮ができることはバス停まで送ってやることだけだった。
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【所見】
時代感と異国情緒漂う悲恋もの。森鴎外の『舞姫』に似た話だが、これよりは分別があって救われる気がする。短編。




