読書/北杜夫 『薄明るい場所』 ノート20161007
北杜夫 『薄明るい場所』 感想文
北杜夫 『薄明るい場所』 1955年ごろ
朗読 辻 萬長、 新潮CD、新潮社2003年
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【概要】
トランキライザーが開発されず、患者を牢獄のような病棟に閉じ込めておくだけの時代。若い精神科医の患者・老人が精神病棟病室で縊死する(医師・作家、なだいなだ解説)。
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【粗筋】
発見から警察の検分、報告書作成をしていると、かまてっちゃんな、マダムが診察室に邪魔しにくる。医師の過去は、地方実業家の一人息子。早逝した母親、事業に失敗し自死した父親。途中、学費が払えずに、休学し、バンドマンでドサまわりをした経験がある。その際、キャバレーにいた、貧相な娘を、物好きで妻にした。その後、復学。身重の妻は身体が弱く、主治医に妊娠を断念するようにいわれているのに、けなげにも産みたいという。そういう妻がだんだん愛おしくなり、発狂しそうになる日々が癒されている昨今だ。入院中でまともな食事のとれない、彼女にジュースを買って届けに行くところで終わる。
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【所見】
『救命病棟24時』を先取りしたような緊迫感とヒューマンドラマがある、感動的な物語。短編。




