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もう一度妻をおとすレシピ 第6冊  作者: 奄美剣星
読書
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読書/芥川龍之介『藪の中』 ノート20161008

芥川龍之介 『藪の中』 感想文

    ノート20161008


芥川龍之介 『藪の中』 1922年

所収

新潮CD、朗読・辻萬長,、新潮社2001年

青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)


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【概要】

芥川龍之介はいっとき古典に取材した王朝ものを描いていた。『藪の中』もその一つで、『今昔物語』「巻二十九第二十三話 具妻行丹波国男 於大江山被縛語(妻を具して丹波国に行く男、大江山において縛らるること)」に取材したものだ。原点では、酒呑童子のような鬼として表現される、山賊の巣窟・大江山を通過した、夫妻が山賊に身ぐるみ剥がされたうえに、妻が強姦されるという筋立てだが、そのまま夫妻は旅を続ける。しかし本作では殺人事件で、夫が死体となって発見され、発見者、容疑者たちの証言は、食い違ってくる。これは一種のミステリである。――黒澤明が『羅生門』として本作を映画化した。なお、水木しげるは、漫画『今昔物語』で原典を忠実に再現している。

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【粗筋】

 大江山の山深く、木こりが分け入ってゆくと、侍の死体をみつけた。検非違使(警察長官兼裁判官)が、第一発見者である、木こりの証言をきき、配下の放免を遣わして関係者を集めてきて証言させる。つぎに旅法師が、夫妻をみかけたという。次いで、侍の妻の老母(媼)が登場。殺された侍の身元が判明。死体の男の名は若狭国国府の侍、金沢武弘である。女はその妻の真砂で、自分の娘であると証言。やがて、放免(現代の刑事に相当)が実行犯の山賊・多襄丸を捕縛。男を殺したのは自分だ。最初は殺すつもりがなかったのだけれども、女に請われたので男の縄を解き決闘して殺害したと証言。やがて、行方不明だった侍の妻が、清水寺に懺悔に行ったところを保護された。検非違使のもとにくると、縛りあげられた夫の目前で、強姦された気まずさから、手中の小刀を使って夫を殺した。自分も後を追うつもりだったが死にきれずに寺に駆け込んだと証言する。――どうも証言が食い違う。最後に、検非違使は巫女を呼んで、殺された侍・金沢武弘の霊を召喚、これに証言させる。妻は盗人に自分を殺すようにけしかけたまま、隙をみて逃げた。藪の中に一人残された自分は妻が落とした小刀を使い自刃した。――けっきょくのところ、誰が本当のことをいっているのか判らない。タイトルのように、真相は、「藪の中」だ。

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【所見】

当事者たち「心の闇」描写の面白さ。法廷もの「逆転裁判」の先駆をゆくミステリだ! 9000字、400字詰め原稿用紙換算25枚相当。短編。

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