読書/原田宗典 『海の短編集』 ノート20161129
原田宗典 『海の短編集』 感想文
原田宗典『海の短編集』 朗読CD(2枚組)
朗読・堀英二 横浜録音図書株式会社
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【概要】CDカバー裏書
著者は……もともとぼくは、小説家としてデビューする以前から、いつか海を舞台にした短編ばかりを集めて「海の短編集」を編んでみたいという古都を夢想していた……。美しい南国の海に秘められた幻想的で不可思議な12の掌編小説。
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DISC Ⅰ
A憑りつく島
~リゾート地だが妖精が支配する島だ。妖精は人の虚栄心を嫌う。ホテルに滞在していた「僕」は白人男性が小石を飲んだ上、プールで溺死しかけたのを目撃。その様子をホテルのボーイに話すと妖精の話をした。そして妖精を友とする魔術師の存在を知る。チップをやろうとするとボーイは腹を立てた。ボーイの正体は魔術師だった。
B何を入れる箱
~島のタクシーを拾って案内されたのは、街外れの小屋だ。店の主人は自ら箱をつくっている。みえないようなミクロの小箱から海の底に沈めた十数メートルの大箱まである。何をいれるのか用途は不明。夢だったか、そんなものをいれるような箱だ。
C願いをひとつ
~自宅で執筆をしていて意識がなくなる瞬間がある。そんなとき「僕」はどこにいたのか。ある夜、知人がダイビングの格好で部屋に現れた。話をきいてみると、泳いでいたら鮫がきてもの影に隠れているとき小瓶をみつけた。そのなかには紙片があり、古代文字が書いてあって、「ひとつだけ願いをかなえる」と書いてあった。友人は日本に帰りたいといった。小瓶のなかの文字をみた「僕」は戯れに、友人に君をどこかにいけば消えるのかといった。すると友人はどこかに消えた。夢か幻か。しかし部屋の床には水溜りがある。
D黒魔術
~町の土産物屋にゆくと、珍しい商品があり、30万円と吹っかけられた。みえから買って虚栄心を満たした「僕」の前にいた店主はさっき注意をしてくれたボーイで、正体は魔術師だった。
E成長する石
~珍しい石があった。土産物屋に入ると、一歩踏み出すごとに大きくなる石だという。迷信だと思って店の裏側の浜辺を歩いていると巨大化してゆきついに歩けなくなった。店主が戻ってきて一緒に転がして小さくしてやった。
Fデジャブの村
~友人ときたコテージには、島民の若夫婦が不法占拠していた。追い出したあと、島の集落を散歩していると迷子になる。前にもこんな経験をしたことがある。そう思っているところに少年がやってきた。帰り道を教えてくれた少年は、あんた前にも同じことを僕にきいたよといった。
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DISC Ⅱ
A 岬にいた少女
ダイビングスポットは引き潮のときでないと潮流が厳しくて潜れない。現地へゆくと少女がおり、身の上話をきかされた。漁師一家の末娘。兄の一人は激しい潮流に激突して片手を失った。母親は少女を孕んでいるときに鮫に飲みこまれた。父親が鮫を仕留め、食われた妻を救出したが絶命していた。少女は母の遺体を裂かれて生まれた。ゆえに、鮫がさらいにくるで、海に入らないのだという。――話にききいっているうちに滿汐になってしまった。
B 夕陽に間に合えば
~地図でみつけた夕陽の絶景スポットをタクシー運転手にみせると、道がないため、60キロを一回転して問題の土地にゆくことになった。しかし暗くなったので、引き返そうと切り出すと、運転手は時間を売る店があるのだという。馬鹿にして笑うと、その店の近くで、運転手は「僕」を降ろしてしまった。冗談半分で店の主に4時間売ってくれと頼むと、午後3時に戻っていた。写真をとるには十分だ。
C 人の魚
~ホテルが用意した釣り船。インストラクターの指示で、ダイビングスポットにゆくと、なんと言葉を話す魚を釣ってしまった。インストラクターは無言でさばき、切り身を食ってやれ、魚はもともと人だったのだが、悪行の為、転生して魚になったのだという。釣った人が喰ってやれば別なものに生まれ変われるという。――しかし「僕」が気味悪がってためらっているとインストラクターは仕方なく海に魚の遺骸を捨てた、気の毒に、来世もまた魚だ、と呟きながら。
D 中には何が
~ホテルプライベートビーチで寝そべっていると、境界線のむこうにあるパブリックビーチから老婆にマッサージにこいと小屋に誘われる。そこで妖精が入った小箱を買った。どうせ仕掛けがあるのだろうと、ホテルに帰って調べてみたが、木端片のようなもの。トリックはない。日本に帰っても箱から妖精たちの声がする。しかし調べようのない構造。気になる。
E 贋のビーチ
~ホテル・プールサイドで美しい恋人とリゾートを楽しんでいた。腕には香港の偽ブランド時計。かけているサングラスも偽物らしい。するとそれを盗んだ島の男から、安っぽいサングラスを売りつけられた。それは贋ものを見破る逸品だった。贋、時計をみれば赤くなり、プールサイドの老紳士をみればカツラだと判った。プールに潜っていた彼女があがってきたところで、顔をみると……。
F 美しすぎる風景
~無愛想な店員のいるレンタカーショップで、オフロードカーを借りる。店員は島の危険個所に×印をつけた地図を渡した。だが×印のない最も危険な個所を口頭で教えた。「僕」は危険といわれたのについ行ってしまう。自死の名所であることを告知する、立て看板もあった。あまりにも美しい風景。旅人はついその先にある絶壁から飛び降りてしまうのだというのだが……。
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【所見】
主人公は一貫して「僕」であり、外国・南洋のリゾート島だ。こすっからかったり、うさんくさかったり、無愛想だったりする原住民たち。ときたま登場する生真面目なタイプの青年たちは迷信深い。そう思っていると、魔術師で、主人公を異界の入り口に誘い込んでしまう。――夏目漱石『夢十夜』と中島敦『南洋譚』『環礁』をあわせたような感覚だ。
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