読書/カフカ 『失踪者』 ノート20170104
カフカ 『失踪者』
フランツ・カフカ『失踪者』カフカ小説全集1 池内紀・訳 白水社2002
(*旧タイトル『アメリカ』)
【目次】
Ⅰ 火夫7
Ⅱ 伯父46
Ⅲ ニューヨーク近郊の別荘61
Ⅳ ラムゼスへの道105
Ⅴ ホテル・オイウシデンタル137
Ⅵ ロビンソン事件166
(車が停まった……)213
(「起きろ、起きろ!」……)284
断片
(1)ブルネイダの出発301
(2)(町角でカールはポスターを目にした……)308
(二日二晩の旅だった)335
解説
【内容】
女中に誘惑されて子供をつくってしまったドイツ人カール・ロスマン少年17歳は、両親によってアメリカへやられる。船のなかで、待遇に不満をもった船員と親しくなり、この男に加担するのだが改善などしない。
ニューヨークに到着すると、伯父が待っていて、実子のように可愛がってくれる。この伯父は渡米して財をなしたドイツ系の実力者だった。伯父の客人のなかに郊外に別荘を持つ人物がおり招待される。そこの令嬢は婚約者がいるのだが、ロスマンに興味を持っていて、自室でピアノを弾くように強いてきたので反感をもつ。
別荘であれこれ揉め事に巻き込まれているうちに、伯父宅帰宅刻限を過ぎてしまった。伯父はロスマンを追放する旨のメッセージを、滞在先の知人別荘に送った。
ロスマンは放浪して安宿に泊まると、ドラマッシュとロビンソンのコンビと出会った。最初、職探しなどで協力的だったのだが、たかり屋であることに気づき離れる。ホテル・オイウシデンタルのレストランで食事をとったとき、調理支配人グレーテに出会って雇われる。また職場で秘書のテーゼに好意を持たれる。ロスマンの仕事はエレベーター・ボーイだった。グレーテに可愛がられ仕事が順調になりかけたときロビンソンがたかりにやってきた。これがもとで、規則違反を管理主任から問われ、失職した。さらにロビンソンの放言がもとで、警察にまで追われてしまう、
ドラマッシュとロビンソンは、歌手ブルネイダのマンションで居候していた。ブルネイダはドラマッシュを愛人にすると、他の使用人たちに暇をだしてしまった。ロビンソンはドラマッシュの下僕になった。そのロビンソンはロスマンを部下にしようとして、監禁した。なんとか脱出しようとすると、三人が邪魔をする。
大ゲンカしたとき、部屋の階下で、昼はデパート店員、夜は学生をやっている青年と出会い親しくなり、階級社会の構造を知る。彼はロスマンの実情を知ると、歌手のもとをでるべきではないと主張した。
そのうちにブルネイダの肥満からくる病気で、部屋をでることになった。それを期にロスマンは解放され、職探しをする。それでみつけたのが、楽団で、面接にゆくと即採用された。若手女優に好意を持たれ、舞台に立つように勧められるがもともと進学先は技師希望だったので、技師見習いとして、裏方が担当になった。――団員新規採用者のなかには、ホテル時代に親しくしていたエレベーター・ボーイ仲間のジャコモがいて旧交を温める。ジャコモは劇団のエレベーター・ボーイとして採用されていたのだ。
団員一同は列車で公演先の町に二泊の旅にでた。
【所見】
カフカは登場人物の一人である学生よろしく、夜十時から深夜にかけて執筆していたため、過労から肺結核を患い、満40歳で亡くなった。この物語は19世紀末から20世紀初頭の階級社会様相を描いている。なお本作は、ドイツのストローブ=ユイレ監督が1983年に『階級関係』の題で映画化している。また村上春樹『海辺のカフカ』の元ネタになっている。
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