読書/中山七里 『さよならドビュッシー』 ノート20170316
中山七里 『さよならドビュッシー』 感想文
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『このミステリーがすごい大賞』受賞作品。あとがき解説で評論家・大森望がいうところの、「音楽+スポ根+ミステリのハイブリット」と絶賛している。まさにその通りの作品だ。
物語は、地方財閥をなすとある家庭にスポットが当てられている。
富豪には二人の息子と娘、三人の子がいた。長男は真面目だが面白みのない人物で妻と娘とで同じ敷地に住んでいる。次男は高等遊民とでもいうべき存在で風来坊だ。娘もまた風変わり者で伴侶とともにインドネシアに帰化。それぞれ同じ年の娘がいる。そして第一の悲劇が生じた。インドネシア・スマトラ沖地震・大津波で娘夫婦が死亡したのだ。富豪の息子は、九死に一生を得た姪を引き取り養女にすべく引き取ったのだが、国籍を日本に戻す手続き中に、第二の悲劇が生じた。離れに住む富豪の家屋で火事が生じたのだ。たまたま遊びに来ていた従妹同士二人が火災に巻き込まれる。そして、富豪と孫娘の一人が焼死。もう一人が酷い火傷の後遺症を持ちながらも生き残る。ヒロインが生き残った語り手・進行役の少女だ。
探偵役はヒロインにピアノを教えるピアニスト。ピアニストは警視総監の息子で、国家試験に合格し父親と同じく警察キャリアとして嘱望されていたのだが、持病がありピアニストとして生きていた。
ヒロインは、ピアニストに励まされ、身体の障害を克服し、音楽系の高校へ復帰。難度の高い、ドビュッシーの曲を弾きこなし、コンクールに優勝する。
その間、彼女の才能を妬む、クラスの苛めグループがチョッカイをだし意地悪するが、杖を使って半殺しにしてしまう。そのあたりから、祖父が記した不可思議な遺言による相続に関し、どうも殺人だったのではないのかという疑念が生じ、警察が捜査を開始。その最中、富豪の息子の妻が神社の階段で転落死する。……そして急転直下の結末に至り、ピアニストが鮮やかに全容を解明するに至る。
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目次
Ⅰ 嵐のように凶暴に 7
Ⅱ 静かに声をひそめ 55
Ⅲ 悲嘆に暮れて苦しげに 143
Ⅳ 生き生きと高らかに響かせて 225
Ⅴ 熱情をこめて生きるように 325
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中山七里 『さよならドビュッシー』 宝島社2011年




