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もう一度妻をおとすレシピ 第6冊  作者: 奄美剣星
読書
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読書/夏目漱石 『三四郎』 ノート20170312

 迷羊ストレイ・シープというキーワードが何度もでてくる。恋愛(青春)とはそういうものだということだろうか。明治末期、モダンな才媛と可憐な美少女とに萌える青年、主人公・小川三四郎の三人称一視点だ。本作『三四郎』、続く『それから』『門』の三作をもって漱石初期三部作という。


①(プロローグ・主人公と広田先生の登場) 小川三四郎(二十三歳、一六五センチ)は、九州から山陽線で大学進学のために上京。同じ列車に高校の英語教師・広田萇ちょう先生がいた。名古屋駅で降りて旅館で一泊。宿の手違いで見知らぬ女と同室の一つ布団で一夜を過ごすことになるのだが手をつけなかったところ、女に純情を馬鹿にされる。


②(概要説明・野々宮先輩の登場) 三四郎が東京で下宿暮らしを始める。路面電車、洋食、どれもこれも郷里にはないものばかりで近代文明というものに圧倒される。ほどなく、同郷の先輩で理科系にいる野々宮宗八と懇意になる。

.③(道化的な悪友・与次郎登場) 初授業は、九月も半ば過ぎだった。講師がこないので始まりが遅れ苛つく。授業が始まると、同期である、佐々木与次郎と出会い友人になった。学校からの帰り際、あの女(美禰子)がちらりと姿を現し幻惑される。  


④(第一ヒロイン・美禰子の登場) 東京帝国大学一年生・三四郎には、郷里・学問・恋愛という三つの世界ができた。つまらぬ学級生活のなか、佐々木与次郎の下宿先を訪ねる。すると、山陽線で一緒だった高校英語講師・広田先生宅の家で、与次郎が下宿していることが判った。先生は独身だ。そこに、第一ヒロイン里見美禰子が登場。その人が、翻訳を仕事にしている関係で出入りしており、名詞をくれた。


⑤ (第二ヒロイン・よし子の登場) 翌日、三四郎は野々宮の家を訪ねると、本人は不在で、妹・よし子が応対していた。第二ヒロインである、よし子には画才があり、腕前に感嘆するとともに、その人となりに好感をもった。翌日、与次郎の下宿先・広田先生宅を訪ねる。野々宮先輩と妹のよし子、友人・与次郎、そして里見美禰子がいた。皆で菊細工の催しを観に行くことになる。与次郎の趣味ではなく、残りで行き、解散。三四郎は美禰子を送る。ぬかるんだ小道で、美禰子が転びかけた。三四郎は抱きとめる。その際、美禰子は、迷羊ストレイ・シープという言葉を口にする。ヒロインの吐息を間近に感じ、ドキッとする三四郎だった。


⑥(恋心募る) 学校での受講にまったく身の入らない三四郎。すっかり美禰子にのぼせ上がってしまった。友人・与次郎は状況を察する。数日後、風呂の帰りにフラリと学校の運動場をのぞきこんだ。野々宮先輩が審判をやっていた。そして、美禰子とよし子の二人連れを見かけ声をかけられ、ちょっと立ち話をしたあと、赤門前で別れた。

.

⑦(恋愛とは何か) 先生の家を訪ねて、愛されることは嬉しいか? 世間体的な慣習による結婚、同情からくる恋愛はどうか、そんな愛なんぞ嬉しくもない……先生は持論を述べる。


⑧(転機) 三四郎は友人・与次郎に金を無心される。与次郎はその金六十円を競馬ですってしまい三四郎を呆れさせる。三四郎はちょっと金に困った。与次郎は美禰子の兄の知人で、三四郎をダシにして金を借りにきたらしい。三四郎はヴァイオリンの練習をしていた美禰子との会話で事情を知る。それから二人で外出デートした。 


⑨(学問) 与次郎と洋食屋の精養軒にゆく。すると、先生、野々宮先輩ほか、作家・学者といった文化人たちが談義に花を咲かせていた。 帰りに、悪友・与次郎は三四郎の胸の内の核心を衝く。「――君、あの女(美禰子)の夫ハスバンドになれるか」三四郎はいまだかつてこの問題を考えたことがなかった。美禰子に愛せられるという事実そのものが、彼女かのおんなの夫ハスバンドたる唯一ゆいいつの資格のような気がしていた。言われてみると、なるほど疑問である。三四郎は首を傾けた。「野々宮(よし子)さんならなれる」と与次郎が言った。「野々宮さんと、あの人とは何か今までに関係があるのか」……。


⑩(恋敵登場) 広田先生が病気だというので見舞いに行くと柔術の心得がある学士に整体による治療を受けているところだった。以前、美禰子の肖像画を描いた原口画伯やモデルになった彼女がやってきた。美禰子は三四郎に、自分の絵はどうかと尋ねる。それから、故郷の母からの仕送りがあり、美禰子の家を訪ねる。いかにも青年実業家然とした、成金趣味である、美禰子の兄の友人が人力車に乗ってやってきた。どうも婚約者らしいので退散。三郎は借金を返しそびれた。


⑪(怪文書)文芸協会に所属している与次郎には敵がいるらしい。与次郎がだした論文が好評だったのだが、実は本当の執筆者は三四郎だという新聞の告発文があって、大いに迷惑だった。それから広田先生宅にゆき病気見舞いをする。先生が真相はやはり与次郎が三四郎の名を語って、文芸協会を、盛り上げるための自作自演だと語った。そこから、先生は起き上がって、自己の結婚観を述べだす。


⑫(失恋) 冬、与次郎の演芸会が開かれる。切符をもらった三四郎は広田先生を誘って、園芸会場にむかった。推古朝の蘇我入鹿が登場する芝居だった。会場には原口画伯、美禰子とよし子の二人連れもいた。三四郎は帰り際、美禰子に、「結婚なさるのですね」と尋ねると肯首した。


⑬(エピローグ) 原口画伯が描いた美禰子の肖像画は自派の会館玄関に飾られた。 春休みで三四郎が帰郷している間に、美禰子は結婚。披露宴招待状をもらったのだがすでに終わった後。広田先生とよし子は式に参列した。三四郎が下宿に帰ると、早速、悪友・与次郎が遊びに来て、会館に掲げられた美禰子の肖像画に題をつけるとしたらどんな名前にするかと問われ、心の中で、迷羊ストレイ・シープという言葉を繰り返し呟く。――ほろ苦い青春の一頁。――たぶん三四郎は、よし子と結ばれ幸せにすることだろう。

               ノート20170312

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