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もう一度妻をおとすレシピ 第6冊  作者: 奄美剣星
読書
32/100

読書/夏目漱石『こころ』 ノート20170317

   夏目漱石『こころ』感想文1/2

.

 戦前に存在した富豪の師弟で高学歴無職者高等遊民の物語。高等遊民は現代のニートに近い存在だ。語り手は学生で、鎌倉の海水浴場において、高等遊民である先生をみかけ親近感を覚えた。先生には親友のKがおり、同じ女性恋をして、Kを出し抜く形でその母親に許可を求め妻にしてしまう。結果、Kはショックで自殺してしまった。自責に駆られた。先生は明治帝崩御の際、殉死をした。――近世と現代との狭間にある近代・明治。恋をするという自然と、友情という理想との狭間に揺れる、アンニュイなカタルシス。

 さて、高橋留美子の漫画『めぞん一刻』は、ヒロインの音無響子が亡き夫の墓参りをし、そこを主人公の五代がのぞきみたり、五代が教育実習にいって授業をしたときの教材が『こころ』で、五代に好意をもつ女子高生・八神が、自死した故人を批判。暗に故人と音無に気遣って前に進めない五代を批判している。つまり『めぞん一刻』は『こころ』の差異化パロディーだという声をたまに耳にする。なるほどそうだ。ただ『めぞん』の場合、故人と主人公に直接の交流がないところが暗さを持たず軽くなって良い。――前半の述者が五代青年で、先生が惣一郎さん、先生の自死後に未亡人となる妻が音無響子という図式、『こころ』の後日談とも受け取れる。



目次


上 先生と私 007頁

1 鎌倉の海水浴場。先生登場。述者は旧制高校生。

2 掛茶屋。先生は誰かのデジャヴューだ。

3 連日海水浴をする。帰京前の晩、ついに先生の宿へ。

4 新学期の東京。先生夫妻が(親友の)墓参りに。

5 先生を追って墓地に。

6 先生との交友が始まる。

7 先生宅。先生は私は寂しい人間ですという。

8 先生の美しい奥さんについて。子供がいない悩み。

9 先生と奥さんは仲がいい。

10 横浜から渡航する人は八時半に新橋駅を出る。先生は友人を見送りにでた。

11 述者が大学に進学。先生宅で奥さんと会話する。先生は無職。書生時代に出会った。

12 上野でカップルをみかける。恋したこのない述者が冷評。先生が恋は罪悪だといった。

13 恋が罪悪である理由。先生が欠かさず墓参りにゆく理由。――伏線。

14 述者は、先生が昔した恋で生じた罪(親友を死に至らしめたこと)を漠然と知る。

15 先生宅周辺でのコソ泥。何かを盗られる(過去、先生が妻を親友から横取りした暗示)。

16 述者と奥さんとの会話。奥さんはたてまえを嫌い深層心理を重視した(男女の立場)。

17 奥さんは、漠然と、自身が原因で先生の親友を死に至らしめたことを理解していた。

18 奥さんは、自身と先生とが結婚する直前、親友が変死したと声を潜めていった。

19 奥さんは述者に先生と故人との間にどんな諍いがあったか確かめて欲しいといった

20 先生の帰宅。帰り際にみる夫妻はとても幸せそうにみえた。

21 述者の父親が死期に近く帰京する際、風邪ぎみの先生を見舞う。旅費を借りる。

22 年末、述者が帰京すると存外元気だった。椎茸を土産に持っていけという。

23 述者は、ジェネレーションギャップのある父親と将棋をさしてむきあい暇潰し。帰京。

24 述者は年明けに上京。椎茸を手土産に、借金返済のため、先生宅に新年の挨拶をする。

25 先生は以前ほど読書しなくなった。無知の知の境地で読書の必要性を感じないという。

26 述者は、五月に卒論を仕上げ、久々に先生宅を訪問。連れ立って散歩する。

27 先生の経済背景。高等遊民らしい(しかし相続争いで大損をしている様子だ)。

28 父親の容態を訊く。遺産問題は親が生きているうちにきっちりしておくようにいう。

29 先生は金が絡むと人は悪に変わるといった。

30 散歩の帰途、先生は父親の遺産相続で親類に欺かれた過去があると告白した。

31 述者が先生の過去を訊く。――いずれ全てを話すと答えた。

32 六月。述者卒業。先生夫妻が祝して馳走に預かる。――学歴を腹の底で貶す。

33 夫妻に問われた述者は進路について考える。

34 どちらが先にゆくか、卒業したばかりの述者を前に、夫妻の哀しくも仲むつまじさ。

35 帰りがけに同窓に出くわし安酒場へ。

36 先生夫妻に暇乞いして三日目に帰宅。先生・父の死についての予兆。


中 両親と私 114頁

1 父は自身の存命中に述者が卒業してくれたことを喜んだ。

2 小康状態の父はそれなりに覚悟をしている。暢気なのは母ばかりだ。

3 両親が述者卒業祝いを地元人としたいという。卒業式に行幸した明治帝の病気を知る。

4 父は明治帝と自身の死期を重ね覚悟していた。母に話すと困惑した。

5 父の病状悪化。述者は先生に手紙を書く。

6 兄は卒業後良い職に就いた。両親は述者もそうなると信じた。時代は変わってるのに。

7 卒業後兄は遠国で就労。両親は述者の地元就職を希望。述者は遺産相続の件をださず。

8 父親に頼み込んで再び上京・就活を図る。九月上旬の予定だ。

9 どうせ死ぬのだから美味いものでも。上京寸前に倒れまた起きた父が餅を食らう。

10 九州勤務の兄と嫁ぎ先で妊婦になっている妹に手紙をだす。

11 父がいよいよ死期が迫る。母は述者が東京に戻るのではないか気が気でない。

12 兄妹の帰郷。病床で新聞を読む父。乃木大将自死の報についてのエピソド。

13 父の容態が急速に悪化。上京の旨を先生に手紙でやると、先生は来なくていいと返事。

14 兄と財産の件を話す。妹の夫も客として滞在。母は先生の手紙が来ないのを責める。

15 兄はこれからも世で活躍を望み述者に家を継がせることを所望していた。

16 父が昏睡状態になったとき先生からの書留が届く。配達員から兄を介し、もらった。

17 先生からの包みを開けると紙の束がでてきた。生涯を綴った遺書だ。

18 父が意識を取り戻したので、述者は東京行きの三等列車に飛び乗った。


     *


   夏目漱石『こころ』感想文2/2


下 先生と遺書 168頁

1 先生がこれまで返事を書かなかったわけ。

2 口上。

3 二十歳のとき両親と死別。資産家の一人っ子だった。 

4 両親死後、叔父が後見人となり遺産を管理。学資・生活費は叔父を介して貰っていた。

5 叔父が先生に旧家である実家を継ぐようにいったが結局、出て、上京した。

6 夏休みに帰郷すると叔父は娘を嫁にするように進めたが妹感覚であるため断った。

7 次の夏休みに帰郷。叔父家族の態度が急変した。

8 先生は叔父の裏切りに気づく。述者が帰郷するときに示した親族の裏切りの前振り。

9 叔父が自分の相続分を着服し、娘を押し付けて誤魔化そうとした。

10 旧制中学時代の親友の仲介で両親の資産を得。利子で東京暮らしをし大学にも通えた。

11 士官未亡人と娘の住む家に書生として住み込む。

12 父親の形見を送ってもらって引越す。お嬢さんに好意をもつ。

13 奥さんとお嬢さんとに気に入られる。

14 奥さんは先生とお嬢さんを近づけつつ、結婚前に関係を持たないようにさせた。

15 奥さんは資産家御曹司の先生と縁を持ちたい打算があった? だが確かに情があった。

16 お嬢さんと話す男の客に嫉妬。結婚を決意する。

17 お嬢さんとの初デート。

18 暗雲の予兆。

19 先生と似た境遇のKが、下宿先に転がり込んできた。

20 叔父のいる実家に帰郷している夏休み、Kは養父母と絶縁。

21 Kの実家は寺。Kは侍気質。資産家養子から復籍。先生は自分の下宿にKを迎える。

22 奥さんはKを迎えるに当たって不賛成だった。

23 先生の部屋に敷設した四畳半部屋に寄宿。食事も相応。Kは病弱だ。

24 Kは寡黙だが勉強熱心だった。

25 先生は奥さんとお嬢さんとに、Kに話しかけてやって欲しいと頼む。Kは打ち解ける。

26 食事は下女が部屋に運んでくれた。それが皆で食べるようになり、先生はKも招く。

27 奥さんと自分が不在の折、Kはお嬢さんに接近。先生は焦った。

28 Kの神経衰弱進行。

29 先生は心許せる仲で海水浴にも一緒にいった。

30 房州の日蓮の生まれた寺に行った二人。宗教家のKは感慨に浸る。

31 帰京。二人は少しワイルドになった。お嬢さんが笑って出迎える。

32 お嬢さんの好意がKに傾き先生は焦る。

33 帰宅するとKとお嬢さんが不在。外にでるとKがお嬢さんが連れ立って帰ってきた。

34 先生はKを問い詰める。Kは否定。

35 Kには自分以外に友人はいない。奥さんとお嬢さんに好意をもつ。

36 母娘が外出。先生とKが同時にお嬢さんに恋をした。気まずい二人だけの昼食。

37 先生とKとの確執。

38 母娘が帰宅。二人はそれぞれ葛藤。

39 学校が始まる。Kに恋の決着をどうするか尋ねる。

40 Kと学校図書室で遭い、動物園に連れ立ってゆく。Kは気が滅入っていた。

41 Kが奥さんにお嬢さんを嫁に貰い受けたいと先生に言付ける。

42 Kは引きこもる。

43 夜、引きこもったKの影が障子越しにみえ「覚悟」の二字を思い出す。

44 先生は仮病。布団の中でKより先にお嬢さんを下さいと奥さんに告げる策を思いつく。

45 先生は作戦実行。奥さんが二つ返事で承諾。

46 先生は事態をKに説明するのが気が引けて切り出せない。無邪気に喜ぶ奥さん。

47 めでたい話はKの知るところとなった。Kは奥さんに祝いの言葉をいった。

48 Kの自死。遺書には、先生に事後処置を依頼した内容が記されていた。

49 朝、奥さんにKの死を告げる。

50 先生と奥さんとでKの始末。遺族に引き取らせる。

51 Kの葬式、先生の卒業、結婚。二人で墓参り。

52 先生の自責と妻になったお嬢さんへの複雑な思い。

53 先生は自責して書に溺れ酒に溺れ、妻が泣いたので謝る。

54 姑が不治の病に冒される。先生は姑の介護をして妻との仲はまた円満となる。

55 もう一度頑張ろうと足掻く先生。しかし晴れぬ心。そんな折、明治帝が崩御した。

56 妻の叔母の病の看病の折、先生は家を出て密かに自決。――前半の述者への告白。

                                   了 327頁


     ノート20170317

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