映像/アニメ『GATE』第20話「こいびと」はなぜウケたのか ノート20160303
アマチュアが習作をアップさせるサイト『小説家になろう』に投稿しているとよく目にするのが柳内たくみのラノベ『GATE』だ。いろんな物語の要素をうまく盗んでブレンドしている。日本の自衛隊が戦国時代にタイムスリップする半村良の『戦国自衛隊』よろしく自衛隊が異世界に通じる門を抜けてむこう側にゆき、そこを支配している帝国と交戦したり、かけひきしたり、交流したりする物語だ。
――それが文庫化され漫画化されアニメ化された。かくいう私は何年か前にラノベ入門書を読んでいたら50選にノミネートされていたため、原作小説2巻分を購入した。漫画は未読。昨年から始まったアニメは毎週みている。
さて本題だ。
その第20話というのは2016年2月27日に放送されたものだ。――主人公は自衛官でヒロインが3人いるのだが、サイド・エピソードである今回のラブストリーによって、これまでの4人の冒険譚が一気にかすんでしまった。
――大筋でいうと、自衛隊に大敗北を喫した帝国。皇帝は聡明な第三皇女の提案を受け入れ、日本との講和を画策し、帝都に日本大使館をあつらえていた。しかし敗北を認めない暗愚な皇太子が父親に毒を盛って権力を掌握すると、和平派元老院議員や貴族たちをつぎつぎと逮捕していった。和平派議員の重鎮を匿ったことで、逮捕されそうになった門閥貴族夫婦がおり、重鎮と娘を逃がすために、みずからは屋敷に火を放つ。道案内役である貴族の娘は十二歳。聡明で、大使館が治外法権であるということを知っていて、亡命を申し出る。実は先に和平派の皇女が主催した園遊会があり、そこで日本の若い外交官に出会い恋をしていたというのも、少女を大使館に走らせた理由だ。……日本政府は帝国との問題がこじれないように、亡命者を一切拒否する姿勢をとっていたのだが、秘密警察が、少女をいよいよ捕縛しようとしていたとき、この外交官は、自分の婚約者だ、と宣言して敷地に入ることを許可する。Wikiなどで調べると、外交官は日本の上流階層の娘と結婚して、政治的な地保を固める野望があったというのだが、少女の命がけの恋を受け入れた格好となる。
この話は反響があった。コメントを読むと、ロリコンだ、気持ち悪い、というコメントもままあったものの、そんな次元はもはや通り過ぎて感動そのものだ、という声のほうが大きい。
ここで。
本来のロリータ・コンプレックスとはどういうものか説明しておく。ロシア系米国人作家ナボコフの小説『ロリータ』が由来だ。――主人公は少女性愛者で、初潮期十二歳前後の連れ子と関係を結ぶ。主人公には少年時代にした恋のトラウマがあってほどなく亡くなる元恋人の面影を求めて十二歳くらいの少女しか愛せない。『源氏物語』にも少し似ているのだが……はっきりいって、読んでいてつまらない。初版がだされた1950年代当時は衝撃を狙った問題作だったのが、いまとなってはありふれた話で感動がない。
『GATE』20話「こいびと」が視聴者に感銘を与えたのはなぜだろう。
サイコパスに関した書籍を読むと、少女性愛者は、成人女性の代用として少女を愛する。――対して、本作が影響を与えたであろうベッソン監督『レオン』や宮崎駿監督の『カリオストロの城』で年長の主人公と幼いヒロインとの関係はどうだろう。
共通点をみてみよう。
ヒロインが主人公に対して強い恋心を持っているのに対して、主人公は幼いヒロインに対して女性に対するというより、人道的に接し、なおかつ命がけで守っている。貴婦人と処女を無条件で守護する騎士道、中世騎士物語(ロマンス文学)の系譜上にある。――そこが安っぽいポルノに堕ちない理由だと思う。
ノート20160303
【参照(You-tube)】
●『GATE』(第20話「こいびと」)
https://www.youtube.com/watch?v=o20fm9rFhXc
●ベッソン監督『レオン』
https://www.youtube.com/watch?v=BUwmHpDfPSk
●宮崎駿監督『カリオストロの城』
https://www.youtube.com/watch?v=hshuj1dgigE