読書/鈴木輝一郎『幻術師夢応のまぼろし』 ノート20150923
デビューというものを意識しないようになって、すっかりハングリー精神が遠のき、だらだら自作小説を書いている私――いや単なるタイピング依存症。しかし「基礎」というものには常に飢えているので、書庫は入門書ばかりが増殖し、いつのまにやら入門書マニアになっていると自己批判する今日この頃です。
入門書といえば……。
作家さんのなかに、小説にノウハウはないという方もいらっしゃいますが、そう主張する――とまではいわないけれど、そんなニュアンスを感じる――作家様が書いているノウハウ本がこちら。
鈴木輝一郎著、『何がなんでも新人賞獲らせます』(河出書房新社2014年)、『何がなんでも作家になりたい!』(河出書房新社2002年)、『時代小説が書きたい!』(河出書房新社2004年)
そのなかで時代考証の留意点を扱った『時代小説が書きたい!』が、個人的には好みで、特に、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ、戦国大合戦!』を紹介した147‐148頁は、巨匠黒澤明監督の映画より時代考証がしっかりしているとの指摘があり、笑ったのであります。
戦国時代の城郭構造・兵器アイテムというのは、昨今のグラビア解説書でけっこう解説されていますが、孫子系なためか中国ものにやたら似ていて、やや眉唾もあります。モンゴル軍がつかっていた「てっはう」に類似した焙烙(手榴弾)もゲームのオープニング・アニメでみたけれど今ひとつピンとこないのは、私が、博物館・資料館に脚を運ぶ回数がまだまだ少ないためだろうかとも考えるところでもあります。
この作家様の小説。
『めんどうみてあげるね』と『幻術師、夢応のまぼろし』を読みました。
『めんどうみてあげるね』は初期作品で、現代の老人介護施設で起きた、密室殺人に、入ったばかりのヒロインのおばあちゃまが、痴呆化した仲間の安楽死を動機としていることに気づくといった推理短編。
『幻術師、夢応のまぼろし』は、戦国時代が舞台で、描いた絵を介して死んだ者たちを蘇らせる幻術をもつ異能の画家が主人公である伝奇オムニバス。
『幻術師、夢応のまぼろし』は、能のモチーフとなる在原業平と遊女・幽霊を彷彿とさせる伝奇的な登場物構成なのだけれども、話題の対象になる人物が死に至る『動機』にスポットをあてているあたりはミステリのスタイルをとっています。そのあたりは、ミステリの創始者にして、近代的なホラーの元祖であるポオの作風に通ずるものがあり、正統派なのだなあと感じ萌えました。
個人的には、『幻術師、夢応のまぼろし』が好きで、今後この方の作品を全部読破したとしても、一番好きでありつづけることでしょう。
ノート20150923




