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もう一度妻をおとすレシピ/奄美家的 ノート20150606
ある日の妻との会話。
帰宅してドアを開けた。玄関先に彼女が立っていた。
「今日はお部屋をお掃除したのよ」
「素晴らしい。主婦の鏡。懐メロに加山雄三の『君といつまでも』って曲があるけれど、君と一緒にいると幸せだあ。もう離さないぞ、とか」
「お洗濯もしたのよ」
「陽射しの香り。あれって最高。そんなことまで毎日してくれる貴女様は女神のようだ」
なにやらいい匂いがする。
「きょうは、お料理本をみて、新しいメニューに挑戦してみました」
私は靴を脱ぎ、手を洗い、キッチンの席に座った。
テーブルに皿が並べられてゆく。
根菜に鶏肉をつかった炒め物。
「美味しい?」
「絶品です。相手の心をつかむときは胃袋をつかめっていうけれども、貴女は、デタラメな創作料理に走らず、基本に忠実な料理をつくる。――名筆も楷書から。基礎が肝心。それを知っているなんてすばらし過ぎる!」
「いつもおだて上手ね」
そうそう。
専業主婦のモチベーションをあげてやると、食事は日々レベルアップしてゆくのだ。
奄美家は本日も安泰である。
END